執筆報告:総合診療の「High yieldな症候学」
楽しみにしていた総合診療の「High yieldな症候学」ようやく読破しました!!
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知らないものももちろん、名前は知っているけど詳しくはしらない(+そしてそこが知りたかった)、という項目があり学びになりました
自分は「Hitselberger徴候」を担当させていただきました
執筆の機会をいただき志水先生誠にありがとうございました!!
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こういうのが好きな人は是非こちらも!!
ホワイトライオンも追え! ゼブラへのリスペクト,そして見逃せない鑑別疾患
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【JC】難聴に関して/備忘録(J Am Geriatr Soc. 2021 May;69(5):1190-1198)
個人的にはPreventable Dementia (Lancet 2020; 396: 413–46)は主に
・心血管リスク系(高血圧,喫煙,肥満,運動不足,糖尿病)
・政策系(大気汚染,教育)
・その他(社会的孤立,難聴,外傷性脳損傷,アルコール多飲)
に分かれていると思っています。
難聴→認知症、に関してはは結構やれることがあるのでは?と可能性を感じてます(自分が普段のプラクティスで中々できていないだけかもしれませんが)。Lancetのレビューだと(加齢性難聴だけでなく全て込みですが)認知症の8%が難聴由来で予防可能ではという話でした。
と思っているのでで難聴に関して勉強を。。。
A Geriatrician's Guide to Hearing Loss
J Am Geriatr Soc. 2021 May;69(5):1190-1198
の抜粋になります(論文のメイン部分の1つでもある米国のシステムや器具に,COVID-19,Telehealth関連の内容はかなりぬいているのはご容赦ください)
□論文のポイント
・難聴は高齢者の健康,機能,福祉に多大に影響を与えるため高齢者医療で取り組むべき問題
・アメリカでは政策の変更や器具の発達で高齢者の難聴に対して受けられる治療の選択肢が増えてきた
・老年学医は定期的な聴力検査やスクリーニング,最適なケアの提案や紹介を通して複雑な聴覚ケア市場の中で患者さんをサポートできる
●抜粋
・70歳以上の高齢者の2/3は難聴,なので高齢者医療において難聴への配慮は重要
・2016年の調査で障害を持って生活する年数の主要な原因として加齢性難聴は4位(Lancet. 2017;390(10100):1211-1259.)
・軽度および中等度の難聴は静かで集中できる状況ではうまく機能するが気が散るような雑音があると会話を理解するのが難しくなる。聴覚障害にくわえて認知障害や皮質機能障害があり,認知と中枢聴覚処理や音のデコーディング機能が低下していると軽度の難聴でもコミュニケーションが困難になることがある。(声は聞こえるけど理解できない、という現象になる)
・加齢性難聴は認知症の最大のリスク
・難聴の存在は転倒,うつ,社会的孤立,医療資源使用と関連
・難聴の存在は患者と医療従事者のコミュニケーションに悪影響を及ぼし満足度が低下する
・補聴器や人工内耳での介入は聴覚関連のQoLに良い影響を与える(認知症リスクが下がるかはのエビデンスは不明,2023年に結果が出る)
・電話は0.4〜3.4kHzの音声情報しか伝達しないが,Skype®、FaceTime®、Zoom®などのVoIP(ボイスオーバーインターネットプロトコル)のような電話会議メディアは通常より広い音声帯域も拾う。
□補聴器がらみの悩み
・補聴器の値段は高い。アメリカでは平均4700ドル。家や車に次いで人生で3番目の買い物
・補聴器はFDAの認可をうけた専門家からのみ購入可能,市販でうっているものはパーソナルサウンドアンプリフィケーションプロダクト(PSAP)。PSAPは効果があるものもあれば逆効果のものもある。
・成人難聴のうち補聴器が購入しているのは25%,費用の75%以上が自己負担
・購入してもその後のサポートは購入した場所でしか受けられない。コストや受けられるサービスには大きなばらつきがある。購入とサービスがセットになっていて異なるメーカーの補聴器を比較できない(させない?)マーケティングも問題。
□難聴の重症度(Figure1より抜粋)
Mild:26-40 dB:遠くから聞こえてくる、あるいは周囲の騒音の中でのソフトな会話が聞き取りにくい
Moderate:41-60 dB:静かな場所で近距離の平均的な会話が聞き取りにくい
Severe:61-80 dB:大きな声での会話やその他の警告音(アラーム)が聞こえにくい
Profound:>80 dB:振動でしか音を感じられない
□スクリーニング
・主観的な質問でもスクリーニングは可能。自己申告でもよく,時間の限られた臨床現場では実用的。
・主観的な尺度や家族や介護者の情報とも合わせて判断すること(認めたくない人や認知障害の場合もある)
・Excellent/Good:これ以上の評価は不要,毎年フォローアップ
・some trouble/A lot troublre
→ケアの現場でのボイスアンプの使用を検討
→患者と家族への効果的なコミュニケーション戦略を強調する
→聴覚障害に対処することの重要性を強調する
□難聴への対処が必要な時
【JC】救急外来における甲状腺機能疾患とエラー(Am J Emerg Med. 2010 Oct;28(8):866-70)
救急外来で甲状腺機能低下症が診断されるのは21%という報告
入院症例が対象の研究なので、全体で考えると...もっと違うのかもしれません。呼吸苦や胸部締め付け感で救急外来受診となると,どうしてもKiller diseaseの除外の優先度が高くなりますし...そもそも甲状腺機能低下でこのへんの症状がおきるのはしりませんでした。
甲状腺機能低下症の人が冬に救急外来を受診することが多い、というのは知りませんでした。
Diagnosis of unrecognized primary overt hypothyroidism in the ED
Am J Emerg Med. 2010 Oct;28(8):866-70
・あからさまな甲状腺機能低下症の有病率は 一般内科入院患者では約1%だが,救急外来で入院した人の中では0.1%と頻度がさらに下がる
・甲状腺機能障害の半数近くの人が適切に診断されていない
・救急外来で甲状腺疾患のスクリーニングを行うことは推奨されない
などなどの背景があるならで救急外来において甲状腺機能低下症がどれくらい診断されているかを調べた台湾の研究
・54576のEDからの入院で甲状腺異能低下症が新規に診断されたのは0.1%
・年齢の中央値は75.8±12.8(27-98才),男性59%
・30%は冬に受診していた
・症状は倦怠感(50%),呼吸苦(45%),胸部しめつけ感(20%)が多い。心血管系や神経精神系の訴えで救急外来にきやすい。
・所見は浮腫(32%),徐脈(32%),胸水や心囊液(29%)が多い
・TSHの中央値は71.2(四分位 32.7-108.4)
・34%の患者でCK上昇があった
・甲状腺機能低下症の原因は原因不明が36%,その他は薬剤性(アミオダロン,リチウム,IFNα),橋本病,手術や放射線照射歴が多い
・EDで診断できたのは21%,79%は入院後に診断された
・粘液水腫昏睡は半数がEDで見逃された
・診断までの時間は中央値で3d(0-7d)
・初期診断で多いのは心不全,不明,電解質異常,感染症など
【JC】HFNCのレビュー(Ann Intern Med. 2021 Apr 27. doi: 10.7326/M20-4675.)
HFNCはNIVと比較して初期の急性呼吸不全の管理において全死亡,挿管,院内肺炎を減少させ患者の快適性を向上させる可能性があり,抜管も従来の酸素投与と比較して再挿管を減らし,患者の快適性を向上させる可能性がある、というACPからのレビュー。
HFNCは文献が多すぎて整理しきれていなかったので、さくっと結論のみ流し読み。
Effectiveness and Harms of High-Flow Nasal Oxygen for Acute Respiratory Failure: An Evidence Report for a Clinical Guideline From the American College of Physicians.
Ann Intern Med. 2021 Apr 27. doi: 10.7326/M20-4675.
Systematic review
背景:成人の急性呼吸不全の治療にHFNO(high-flow nasal oxygen)の使用が増加している
目的:入院中の成人のARFに対して、HFNOを非侵襲的人工呼吸(NIV)や従来の酸素療法(COT)と比較して評価する。
データーソース:2000年1月から2020年7月までMEDLINE,Embase,CINAHL,Cochrane Libraryを英語で検索
研究の選択:29のRCT(HFNO vs NIV(K=11), vs COT(K=21))を評価した
データーの統合:結果はHFNOとNIVの比較,HFNOとCOTの比較,初期または抜管後の管理別に報告されている。
HFNOは初期の急性呼吸不全の管理において全死亡,挿管,院内肺炎を減少させ患者の快適性を向上させる可能性がある(Low evidence),ただし抜管後の管理では差がない。抜管後の急性呼吸不全の管理において従来の酸素投与と比較して,HFNOは再挿管を減らし,患者の快適性を改善する可能性がある(Low evidence)
限界:
登録された集団や急性呼吸不全,治療プロトコルが違う。試験デザイン,サンプルサイズ,治療とフォローアップの期間,結果の報告の多くは適切に評価するには不十分なことが多かった。プロトコル,臨床医と医療システムのトレーニング,コスト,および資源の使用については不十分であった。
結論:急性呼吸不全の初期管理としてのHFNOはNIVと比較していくつかの臨床転機を改善する可能性がある。抜管後の管理としてHFNOは従来の酸素投与と比較して再挿管を減らし,患者の快適性を向上させる可能性がある。HFNOはNIVやCOTよりも害が少なかった。医師やシステムや資源の使用をふくめた幅広い適応性に関してはよくわかっていない。
【JC】脳卒中後の発熱に関して
脳卒中後(脳梗塞や脳出血後)の発熱/微熱って中枢性なのか感染症なのか、ふくめ結構悩みどころだと思っています。過去に調べてうまくいかなかったのですが、リベンジしてみました。
いくつかの探索的検索でひっかかった文献の抜粋になります
The time course and determinants of temperature within the first 48 h after ischaemic stroke
Cerebrovasc Dis. 2007;24(1):104-10.
脳梗塞155例の報告
NHISS6点以上は入院後36hで0.35度あがる
NIHSS5点以下は入院後0.17度あがって48hで戻る
Predictors of post-stroke body temperature elevation
BMC Neurol. 2017 Dec 13;17(1):218
400人の研究
脳卒中発症後48時間以内に37.6℃以上になった人は178人(44.5%),38.6℃以上は39人(9.75%)
脳出血のほうが脳梗塞より体温があがりやすいか?→この研究では差はなし
Temporal profile of body temperature in acute ischemic stroke: relation to stroke severity and outcome
BMC Neurol. 2012 Oct 18;12:123.
44人の研究
全ての患者が直接ないし間接的に脳幹が圧迫されていた