ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】 抗コリン/鎮静剤の新規使用は転倒に関連した骨折のリスク増加と一時的(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3212-3224.)に関連

BigDataのrandomサンプル+前後比較の研究で抗コリン/鎮静剤の新規使用は転倒に関連した骨折のリスク増加と一時的に関連しているという結論

 

Effects of anticholinergic and sedative medication use on fractures: A self-controlled design study
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3212-3224.

抗コリン作用や鎮静作用のある薬剤の新規使用は一時的な骨折のリスクと関連するかを調べた研究

米国のメディケア受給者を対象とした全国規模の20%の無作為サンプル。
66歳以上で抗コリン作用や鎮静作用のある薬剤が新規に処方された人の非椎体の転倒関連骨折のリスクを調べた

薬剤処方開始前14日をコントロールとして比較
1097989人が対象
1年間での転倒関連骨折の累計は5.0%
case-crossover designだと抗コリン/鎮静薬の骨折に関するORは1.03(95%CI 0.99-1.08)
case-time-control designで時間的傾向を考慮するとORは1.60(1.52-1.69)

抗コリン/鎮静剤の新規使用は転倒に関連した骨折のリスク増加と一時的に関連しているという結論

【JC】BP製剤の使用と難聴リスクは関連なし(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3103-3113)

そもそも背景で骨粗鬆症と難聴の関連などなど知らなかったので勉強になりました

 

Osteoporosis, bisphosphonate use, and risk of moderate or worse hearing loss in women
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3103-3113

 

難聴は米国で3番目に多い慢性疾患
ADLの障害,QoLの低下うつ,認知機能低下に関連
ほとんどが加齢による難聴で不可逆的なもの

 

動物実験では骨のホメオスタシスに関わる経路が、蝸牛の感音性の完全性と聴覚にも重要であることが示唆されている(Neurobiol Dis. 2013;56:25-33.)

ヒトを対象としたいくつかの横断的研究では、難聴者の骨密度が低く、骨粗鬆症の有病率が高いことがわかっていますが、知見には一貫性がなく、縦断的なデータも不足してる(Otol Neurotol. 2018;39:e752-e756. Am J Otolaryngol. 2018;39:271-276.)

ビスフォスフォネートは骨粗鬆症の治療薬であり聴覚に及ぼす潜在的なメリットが示唆されている(Ther Adv Chronic Dis. 2010;1:115-128)
ヒトの耳硬化症患者において、第3世代のビスフォスフォネートを投与すると感音性難聴が安定または改善した(Otolaryngol Head Neck Surg. 1993;109:461-467)

 

骨粗鬆症と難聴の関連性やビスフォスフォネートの使用が難聴のリスクに影響するかどうかはわかっていない...ということでの本研究

 

デザイン:縦断的コホート研究(30-60台の女性をフォロー),多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて関連性を調査
測定:骨密度,BP製剤の使用,椎体骨折,股関節骨折,聴力に関する情報(質問表,サブコホートでは聴力測定)
結果:骨粗鬆症ないし低骨密度の人は中等度以上の難聴のリスクだった(多変量調整相対リスク 1.14-1.30)。BP製剤の使用でリスクに変化はなかった。椎体骨折は難聴リスク上昇と関連(多変量調整相対リスク 1.31-1.39)があったが股関節骨折は関連はなかった。聴力検査を行った群ではBP製剤を使用した人のほうが聴覚は悪かった(2-4db程度/Hzによりけり)
結論:骨粗鬆症や低骨密度は加齢に伴う難聴の原因の可能性がある。骨粗鬆症に対するBPの使用は難聴のリスクと関連がない。

【JC】薬剤師主導の介入で高齢者におけるアドヒアランス改善(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3301-3311.)

Pharmacist-led interventions to improve medication adherence in older adults: A meta-analysis
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3301-3311.

成人のアドヒアランス改善(Med Care. 2010;48(10):923-933.)
喘息の患者のアドヒアランス改善(Eur Respir J. 2018;52(2): 1800485.)
うつの患者のアドヒアランス改善(Res Social Adm Pharm. 2018;14(4):321-331.)

ということで高齢者の服薬アドヒアランスを改善するための薬剤師主導の介入に関する無作為化臨床試験のメタアナリシス

40のRCT,8822人の患者が対象
薬剤師主導の介入を受けた高齢者において、服薬アドヒアランスの有意な改善がどの期間においても認められた(Secondary outcomeでQoLや血圧も改善あり)

【JC】アルコール使用障害患者,退院時のビタミン処方に関して(J Hosp Med. 2021 Dec;16(12):751-753)

いよいよ今日から『岸辺露伴は動かない』3夜連続で放送開始ィィイ! 

初日は“ザ・ラン”っ!!

 

JCは今月のJHMのTWNDRより

・退院処方に何も考えずにビタミン剤入れないでね
・そもそもアルコール使用障害の評価と治療を検討しようね
・食事に関する不安があれば適切なリソースを

・ビタミン剤処方はリスクと患者の希望に応じて判断を

あまりデメリットなさそうと思って思考停止で処方していました。。。
このへんもしっかり学びなおし大事ですね😊


Things We Do for No Reason™: Prescribing Thiamine, Folate and Multivitamins on Discharge for Patients With Alcohol Use Disorder
J Hosp Med. 2021 Dec;16(12):751-753

※TWNDRは明確な結論や臨床実践の基準を示すものではありません。興味ある人は是非論文や関連文献を読んでみてください😊

WHY YOU MIGHT THINK IT IS HELPFUL TO PRESCRIBE VITAMIN SUPPLEMENTATION TO PATIENTS WITH AUD AT HOSPITAL DISCHARGE

アルコール使用障害(alcohol use disorder : AUD)はビタミン欠乏症のリスクがあるため入院患者はチアミン,葉酸,マルチビタミンなどの補充をうけている。そして退院時にもこれらの投薬継続をすることが多い。

欠乏症を見逃した場合の影響を考慮して、アルコール離脱の管理には一般的にビタミン補充のオーダーが組み込まれている(J Subst Abuse Treat. 2019;99:117-123)

水溶性ビタミンは腎臓から排出されるため患者へのリスクはほとんどなく、コストも低い


WHY ROUTINELY PRESCRIBING VITAMIN SUPPLEMENTATION AT HOSPITAL DISCHARGE IN PATIENTS WITH AUD IS A TWDFNR

Hospitalistは退院時にビタミン補充を継続することが多い。しかし、アルコール使用障害患者にビタミン剤を処方することは臨床的に有意な改善につながるというエビデンスはなく、患者は害を被る可能性がある。

ガイドラインではAUD患者へのビタミン補給についての合意は得られていない。
(Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2020;23(2):138-144.Hepatology. 2010;51(1):307-328.)

チアミン欠乏や葉酸欠乏を確認するための信頼性の高い検査はなく臨床判断となる。
葉酸濃度の検査は不正確である(J Hosp Med. 2015;10(11):753-755)
BMIのほうがビタミン血中濃度よりアルコール関連の認知症を正確に予測する(Alcohol Alcohol. 2018;53(1):64-70.)

経口ビタミンB1はバイオアベイラビリティが低い
Wernicke脳症を予防するためにはチアミンがBBBを通過する必要があるがそのための投与量,投与回数,投与期間は不明である(Cochrane Database Syst Rev. 2013;2013(7):CD004033)
高用量のチアミン静注でWernicke脳症の治療や予防はできるが低用量の経口チアミンはアルコール使用障害患者に有益ではないかもしれない(Crit Care Med. 2016;44(8):1545-1552.)

葉酸補充や最適料のエビデンスも乏しい
米国では1998年に穀物製品に葉酸を添加することが義務化されていらい血清葉酸が低い人はほとんどいなくなった
アルコール使用障害の患者は葉酸濃度は低めだが臨床的に重要な差ではないといわれている(Mol Nutr Food Res. 2013;57(4):596-606.)


アルコール使用障害患者におけるマルチビタミンの臨床的なアウトカムに関するエビデンスは不足している(Int J Equity Health. 2018;17(1):8.)

重要なことはエビデンスが不明確な診療で退院時に複数のビタミン剤を処方することは,ポリファーマシーによる弊害や不必要なコストをもたらす可能性があることである

アルコールの使用は服薬アドヒアランスの低下と関連している(Ann Intern Med. 2008;149(11):795-803.)

くわえて退院時の薬の数が多いと再入院のリスクが高いという結果もある。これは薬のリスクよりも薬の数やレジメンの服札座に寄る可能性がある(BMC Health Serv Res. 2015;15:282.)

WHEN TO CONSIDER VITAMIN SUPPLEMENTATION AT DISCHARGE FOR PATIENTS WITH AUD


進行中のビタミン欠乏リスクがある場合,患者のリスクベネフィットプロセスをへてビタミン補充に関して患者さんと議論するべきである

ビタミン剤を処方する場合は飲酒量を減らし,健康的な食事の摂取量を増やし,患者の栄養状態を改善する努力も同時に行う。
食事にアクセスするための情報提供による飲酒による害をへらすこともできる。

アルコールの大量摂取によってビタミンが欠乏するリスクがあることを患者さんに話す

ビタミン欠乏のリスクが低いアルコール使用障害の患者さん(軽度のアルコール使用障害で健康的な食生活を送っている)に対しては、患者さんが補充を希望する場合はチアミンをふくむビタミン剤を単独で摂取するのが最も効果的である

アルコール摂取量が多く,栄養不良のリスクがある患者の場合はマルチビタミン葉酸チアミンを追加した多量のビタミン剤により恩恵を受けるかもしれない。しかし最適な投与量やレジメンは不明である。

アルコール使用障害患者におけるビタミン欠乏のリスク
・「お茶とトースト」など限られた食事しかしていない
・食生活の乱れ
・体重減少,筋肉量の減少,悪液質などがある栄養失調
・確認されたビタミンの欠乏
・胃炎,慢性膵炎,胃バイパス術後などの消化器系疾患


WHAT WE SHOULD DO INSTEAD

残念ながら、アルコール使用障害患者のうち薬物療法を受けているのは3%以下(JAMA Psychiatry. 2021;78(8):922–4.)
アルコール使用障害の患者を評価し、動機付け面接を行い、関心期の患者さんにはアルコール使用障害の治療を提供する。

リスクがある患者には入院中に経験的にチアミンの静脈注射を行う

退院時は反射的にビタミン剤を処方するのではなく、リスクとベネフィットの評価を行う。退院時のビタミン処方には患者の希望を聞く。リスクがなく補充を希望するアルコール使用障害の患者さんにはチアミンを含むビタミン剤を一種類処方する。

アルコール関連の害を彫らすために飲酒時に食事を一緒にするようにアドバイスする(Lancet Psychiatry. 2021;8(4):287-300.)
食事の供給に不安がある患者には栄養相談やSWへのコンサルトを通して食事の改善を行う

RECOMMENDATIONS
エビデンスに基づくのアルコール使用障害の治療を提供する。
・食事に関する不安がある患者に適切なリソースを提供する。
・入院時にマルチビタミン,葉酸,チアミンの大量静注を開始しても退院時には中止する
・リスクと患者の希望に応じてビタミン補充を検討する。特に複数の薬剤をもともと内服している場合はポリファーマシーのリスクのバランスをとる。

【JC】骨粗鬆症の治療は予後12.4ヶ月あれば考慮(JAMA Intern Med. 2021 Nov 22;e216745.)

骨粗鬆症に対するBP製剤の効果はすぐにはでないので...どれくらいの予後があれば骨粗鬆症の治療を開始するか...という問題があります

Individualizing Prevention for Older Adults(J Am Geriatr Soc. 2018 Feb;66(2):229-234.)
の文献では

70歳以上の女性 8ヶ月
70歳未満の女性 19ヶ月

というようにいわれていました。
RCTのメタアナリシスでさらにそれを詳しく検証した研究が発表されました。


Time to Benefit of Bisphosphonate Therapy for the Prevention of Fractures Among Postmenopausal Women With Osteoporosis: A Meta-analysis of Randomized Clinical Trials
JAMA Intern Med. 2021 Nov 22;e216745.

骨粗鬆症の治療は予後12mあれば考慮というRCTのメタアナリシス
骨粗鬆症がある閉経後女性23384人を対象とした10の無作為化臨床試験のメタ分析ではビスフォスフォネート(BP)製剤による治療を受けた女性100人あたり1件の非椎体骨折を避けるために12.4ヶ月が必要であった。BP製剤の治療は予後12.4ヶ月以上の閉経後女性骨粗鬆症の患者に有効であるという結果。

BP製剤の短期的な有害事象や負担(GERDや筋骨格系の疼痛)と骨折の可能性を下げる長期的なメリットのバランスをとる必要がある。
骨粗鬆症の閉経後女性において非椎体骨折やその他の骨折予防におけるBP製剤のメリット,絶対的リスク減少(ARR:absolute risk reduction),骨折予防効果がでるまでの時間(TTB:time to benefit)を評価を目的としたメタアナリシス。

椎体骨折または骨密度Tスコア-2.5以下で骨粗鬆症と診断された閉経後女性を対象としたRCTが選択されました。第一選択薬で推奨されているアレンドロネート,リセドロネート,ゾレドロン酸を使用された研究を中心に選択。骨折までの時間に関するデータが不足しているものは除外した。
主要アウトカムは最初の非椎体骨折が3種類のARR閾値(0.002,0.005,0.010)までの時間であった。

10のRCT,23384人が解析対象。年齢は63(7)-74(3),フォローアップ期間は12-48ヶ月。
BP製剤による治療をうけた閉経後女性100人(ARR 0.01)あたり1件の非椎体骨折を回避するために12.4ヶ月必要であることが示された。200人のうち股関節骨折1つ防ぐ(ARR 0.005)には20.3ヶ月必要。200人のうち臨床的な椎体骨折を1つ防ぐ(ARR 0.005)には12.1ヶ月必要。
 
異質性は低く有意差はなし。
研究のLimitationは
1.研究によって投与Regimenが違う
2.元のRCTに含まれない集団には一般化できない(男性,初回股関節骨折の閉経後女性,多併存疾患)
3.骨折の軽減と予防のためのビスフォスフォネート療法の潜在的な利益を評価するもので,短期的または長期的な害を直接推定するものではない。(非定型大腿骨骨折のリスクなど)
4.バイアスのリスクが低い研究のみの感度分析では非椎体骨折のTTBにおけるAPR0.010 は17.7ヶ月だった。

ということでした

【JC】高齢者の孤独感は健康寿命や活動的寿命と関連(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3092-3102)

最近JAGSでLonelinessに関する文献が多い気がします
孤独は約3年ほど健康寿命を短くするという、孤独が健康寿命にに与える影響を評価した研究がでていました😊

 

Loneliness and health expectancy among older adults: A longitudinal population-based study
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3092-3102

Key Points
・孤独が健康寿命に与える影響を定量的に示した初めての研究
健康寿命は自己評価による健康状態と日常生活動作の状態を用いて定義した。
・孤独な高齢者は孤独でない高齢者に比べて寿命が短く、健康寿命または活動寿命が短かった。

Why Does this Paper Matter?

孤独がもたらす健康への影響と、高齢者の孤独を認識し管理することの重要性を明らかにした


□内容

孤独は「身体的・精神的健康の低下」の原因となる
孤独は、高齢者の不健康な自己評価の主な原因となっている
孤独な高齢者はADLやIADLの制限など、機能低下の頻度が高い
孤独は、社会的関与や生活の質の低下、抑うつ症状、冠動脈性心疾患や脳卒中、死亡のリスク要因となる
高齢者においては80歳以上から顕著

ということがわかっているが...孤独が健康寿命に与える影響ということはこれまで評価されていなかった

という背景からの


自己評価健康を用いて健康寿命と不健康寿命(Stat J IAOS. 2014;30(3):209-223)
ADL/iADLの制限の有無で活動的余命と非活動的余命(Stat J IAOS. 2014;30(3):209-223)

を測定するシンガポールでの研究


高齢化が急速に進み,高齢者の割合は2017年20%→2050年40%と予想されている
中国人が大半を占め,集団主義的な文化がある(そして集団主義的な文化のほうが孤独感のレベルが高いといわれている)

60歳以上の高齢者に対して孤独感が総余命,健康余命に与える影響を定量化した

デザイン:全国代表的な縦断調査の多州間生命表分析。
設定:シンガポール
参加者:2009年,2011-12年,2015年にインタビューをうけた3449人
測定:は自己評価健康を用いて健康寿命,ADL/IADLを用いて活動的余命を判断した

結果:60歳,70歳,80歳の時点でほとんど孤独ないし時々孤独になる人はそうではない人と比べて総余命,健康寿命,活動的余命が短かかった(不健康寿命,非活動的余命は同程度だった)
※80歳だと健康寿命と活動的余命の差は両方とも3.1年
結論:孤独の認識と管理は高齢者の健康な自己評価健康とADL/IADLの制限のない生活年数を増加させる可能性がある。

【JC】高齢者の終末期の社会的孤立と孤立感の疫学とリスク(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3081-3091)

終末期に社会的孤立と孤独はそれぞれ1/4にみられるが,両者両方を経験する患者は少ないという内容。

孤独感と社会的孤立は相関しない、などなどこの辺の領域の学びになる内容でした

The epidemiology of social isolation and loneliness among older adults during the last years of life
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3081-3091

Key points

終末期に社会的孤立と孤独はそれぞれ1/4にみられるが,両者両方を経験する患者は少ない

Introduction

・社会的孤立や孤独を経験した高齢者は,親しい友人と時間を共有すること,家族の存在,一人で死なないこと,他の人を助けられることなど、終末期における社会的目標を実現する可能性が低く,症状やケアの質が悪化する危険性がある。
・IOMの報告では社会的孤立や孤独がもたらす健康への影響を認識し積極的に対処する必要性が強調されている
・緩和ケア領域でも質の高い医療を提供するための中核領域としてケアの社会的側面が盛り込まれている(J Palliat Med. 2018;21:1684-1689.)


・高齢者は機能低下や認知の低下でより孤立しやすくなる。孤立した生活を送っている高齢者は終末期に精神的・経済的・介護的な支援を受けることができなくなる可能性がある。
・同様に終末期には孤独感を感じ,感情的,身体的,実存的に大きな苦痛をもたらす可能性がある。

・社会的孤立と孤立感の相関は低いとされているが,終末期にどのように関連しているかはわかっていない(Psychol Sci Social Sci. 2009;64:i38-i46.)
・2つの相関が高ければ介入が両方に影響を与え建てるかもしれないし,相関が低い場合はそれぞれの社会的なニーズに対応するため個別の介入が必要

ということで行われた横断的な調査

背景:社会的孤立や孤独感は、高齢者の健康にとって非常に重要である。終末期における社会的孤立と孤独については十分に記述されていない。
目的:人生の最後の年の高齢者における社会的孤立と孤独の有病率と相関関係を明らかにする。
デザイン:全国を対象とした横断的な調査。
参加者:人生最後の4年の間にインタビューをうけた50歳以上の成人 3613人
測定:社会的孤立の定義には15項目の尺度を用いた。頻繁な孤独感はUCLA孤独感尺度を用いて定義した
結果:人生の最後の4年間で社会的孤立を経験した人は約19%、孤独感を経験した人は約18%、両方を経験した人は約5%だった。社会的な孤立は死期が近い人ほど頻度が高い(予後4年 18%, 予後0-3ヶ月 27%)で孤独感は大きな差はなかった(予後4年 19%, 予後0-3ヶ月 23%)。両者のリスクになるのは資産の少なさ,聴覚障害,食事の準備困難があげられらた。孤立感のみに関連する因子は女性,疼痛,失禁,認知機能障害があった。
結論:社会的孤立と孤独感は終末期によく見られ,高齢者の4人に1人に認められるが,両方を経験する人は少ない。両者のリスクに貧困,機能障害,感覚障害があった。