ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

Timed up and go testに関して復習

転倒した人の評価や高齢者機能評価などでよく使うTimed up and go test、本によって記載のニュアンスが微妙に異なっていたり実際のところはどうなんだろう?ということでちょっと確認してみました(Get up and go testでもいいのですがここではTimed up and goに統一します)

□Timed up and go testの方法
1.椅子から立ち上がる
2.3メートル歩く
3.方向転換する
4.椅子に戻る
5.(振り向いて)椅子に座る

・注意してみるポイントは座位バランス,座位から立位への移行,歩行のペースと安定性,ずらすことなく向きを変える能力など。筋力,平衡,前庭機能,歩行全般の障害などみれるのが強み。
・当初は1-5段階評価だったが,全体動作にかかる時間で評価されるようにもなった

□Timed up and go testの基準値(J Geriatr Phys Ther. 2006;29(2):64-8.)
60-69歳:8.1s(7.1-9.0)
70-79歳:9.2s(8.2-10.2)
80-99歳:11.3s(10.0-12.7)

●文献的には...

・Timed up and go testのメタアナリシス&システマティックレビューの結果では,研究においてカットオフにばらつきがあり診断精度はせいぜい中程度。明確なカットオフはない。健康な人においては有用ではなさそうだが,機能が低下している人では有用かも(J Am Geriatr Soc. 2013 Feb;61(2):202-8.)
・Timed up and go testのメタアナリシス&システマティックレビュー,13.5s以上かかる人は転倒に関して感度31%特異度74%,ロジスティック解析すると転倒に関してTimed up and go testの結果は有意差なし。単独での評価は推奨できない。(BMC Geriatr. 2014 Feb 1;14:14. doi: 10.1186/1471-2318-14-14.)
・Timed up and go testは15s未満だと前向き6ヵ月の転落に関して感度96%特異度32%で除外には有用。転倒のRule inにはちょっと使いにくい。(Age and Ageing 2008; 37: 442–448)


□Timed up and go testの秒数と半年以内の転落に関してのData(Age and Ageing 2008; 37: 442–448)
12s 感度98% 特異度13% LR+1.1 LR-0.2
15s 感度96% 特異度32% LR+1.4 LR-0.1
20s 感度79% 特異度32% LR+1.5 LR-0.5
25s 感度62% 特異度62% LR+1.6 LR-0.6
30s 感度49% 特異度72% LR+1.8 LR-0.7
35s 感度36% 特異度86% LR+2.6 LR-0.7
40s 感度26% 特異度89% LR+2.2 LR-0.8

●まとめ
・Timed up and go test自体は筋力,平衡,歩行障害...などを多角的に評価できる優れもの
・ただし明確なカットオフはなく,年齢によっても正常値はかわる
・健常者でのエビデンスは微妙そうだし単独での使用も微妙そうだが,機能低下(フレイルやサルコペニア)の人の評価には使ってもいいのかも?

という感じでした。