ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

高齢者の身体機能評価:SPPBに関して再確認

高齢者の身体機能評価:SPPBに関して再確認

 

Timed up and goに続いて今度はSPPBに関して再確認してみました

 

■Short Physical Performance Battery/簡易身体能力バッテリー (SPPB)

・身体機能の指標の1つで主に下肢機能の評価する
・試行に10分かかる(BMC Geriatr. 2016 Oct 5;16(1):170.)
・SPPBはバランステスト,歩行テスト,椅子立ち上がりテストの3つで各テストを合計する
・0-12点で評価:0-6点は低パフォーマンス、7-9 点は標準パフォーマンス、10-12 点は高パフォーマンス

□バランステスト
・閉脚立位→セミタンデム立位→タンデム立位の順で各10秒間保持する
・実施困難 0 点,閉脚10s可能1点,セミタンデムが10s可能2点,タンデムが3-9sできるで3点,10sできるで4点
□歩行テスト
・4m歩行時間(通常歩行速度)を2回測定し良い方の結果を使用する。
・実施困難0点,8.71s以上 1点,6.21-8.70x 2 点,4.82-6.21s 3 点,4.82s未満 4点
□椅子立ち上がりテスト
・腕を組んだままでできる限り早く椅子からの起立+着座を5回繰り返す。
 ・実施困難0点,16.70s以上 1点,13.70-16.69s 2点,11.20-13.69s 3点,1.20s未満 4 点

■SPPBのエビデンスは如何に!?
・SPPBは信頼性があり死亡率,施設入所,入院,ADL障害の新規発症と関連。臨床的な変化に対する感受性にも関連している(J Gerontol A Biol Sci Med Sci.2008;63:160–164)
・3年後の400m歩行能力の喪失やADL障害と関連(J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2009 Feb;64(2):223-9)
・8点以下は身体機能不良に関連(J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2000;55(4):M221)
・10点未満は全死亡と関連。0-3点:OR 3.25,4-6点:OR 2.14,7-9点:OR 1.50(特に若年,DM,男性でリスク高め)(BMC Med. 2016 Dec 22;14(1):215.)
・入院患者の退院時のSPPBはフォローアップ時のADL低下と逆相関,再入院or死亡(OR 5.38)と関連していた(J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2011 Jan;66(1):89-96.)

サルコペニアの評価項目として記載あり(J Am Med Dir Assoc. 2014 Feb;15(2):95-101.)
・フレイルの評価項目として記載あり(J Am Med Dir Assoc. 2017 Jul 1;18(7):564-575)


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●まとめ

・SPPBはバランステスト,歩行テスト,椅子立ち上がりテストの総合評価で10分かかる検査
・SPPBはADL,施設入所,再入院,全死亡など様々なアウトカムと関連している
サルコペニアやフレイルの文献などでも推奨されており高齢者医療と相性が良さそう