線維束性筋収縮(Fasciculation)の鑑別は?
線維束性筋収縮(Fasciculation)は1938年に言葉がつけられ単一運動単位の発火であること,その起源は神経軸索ないしは前角細胞にあると考えられること,5 秒から2 分に一回と非常に低頻度で発火する...などとされました。(臨床神経 2014;54:1080-1082)
現段階では線維束性筋収縮(Fasciculation)が前角細胞由来かどうかは諸説色々あったり,近年は超音波を取り入れた研究などあるようようです
線維束性筋収縮(Fasciculation)をみたらALSなのか?鑑別は?
という点でちょっと調べてみました
鑑別診断のリストアップをすると
□線維束性筋収縮(Fasciculation)の鑑別診断(Neurol Int. 2014 Aug 5; 6(3): 5208,Acta Neurol Belg. 2015 Jun;115(2):91-5.Brain. 2010 Nov;133(11):3458-69.等をもとに作成)
健常人で出るパターン:コーヒー,身体活動や疲労,begin fasciculation syndrome, cramp-fasciculation syndrome
中枢神経:SCA type3,SCA type 36,パーキンソニズム(MSA,ALS+症候群)
脊髄/脊椎:頸椎症,神経根障害
運動ニューロン疾患:ALS,脊髄性筋萎縮症(SMA),良性筋萎縮症(benign monomelic amyotrophy),ポリオ後症候群,球脊髄性筋萎縮症(Kennedy−Alter−Sung 病)
末梢神経興奮疾患:末梢神経興奮疾患(Isaac's症候群,VKGCチャネロパチー,Morvan症候群)
末梢神経障害:多巣性運動ニューロパチー,POEMS
全身性疾患:甲状腺機能亢進症,チロトロピンの過剰摂取,低P血症,Ca異常(副甲状腺機能亢進症),抗VGKC複合体抗体関連,VitB12欠乏症
薬剤/中毒:重金属中毒,ネオスチグミン,ステロイド,サクシニルコリン,イソニアジド,フルナリジン,リチウム+ノルトリプチン,有機リン中毒
その他:封入体筋炎
とかなり広いようです。上記疾患以外にも複数の遺伝性神経疾患でも報告があるようです(Acta Neurol Belg. 2015 Jun;115(2):91-5.)
健常者でも運動,不安,カフェイン,アルコールでも線維束性筋収縮は出うるし,健康者の1%以上で発生します。
なので実際に筋萎縮や筋力低下があるかどうか臨床症状との対比が重要ということでした。
とはいえ,線維束性筋収縮のみを示す症例をフォローアップしたらALSだったということもあるようで線維束性筋収縮のみを示す症例に関してはALSのガイドライン(CQ2-4)では将来ALSに発展する可能性を除外できず,長期間の経過観察を要する(GradeC1)となっています。長期フォローして正常な診察と正常な筋電図であれば良性の状態とされています。