ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

□ケース流し読み:64才男性 1ヶ月で進行する頭痛と意識障害

□ケース流し読み:64才男性 1ヶ月で進行する頭痛と意識障害

64-Year-Old Man With Subacute Altered Mental Status and Headache.
Mayo Clin Proc. 2019 Apr;94(4):709-713
 

※注意:ネタバレ含みますので注意してください,また管理人の判断で情報をかなり抜粋していることを御容赦ください

サルコイドーシスの既往があり過去に5ヶ月 PSL 20mg/dの内服歴がある64才男性が1ヶ月の経過で進行する拍動性の頭痛と軽度の意識障害(ドアの鍵をあけたり通常の会話などの普段の業務ができなくなっていた)でER受診した
ほかに間欠的なぼやけた視力や複数の転倒や倦怠感もある
発熱や項部硬直はなく、診察上はHR 104の頻脈以外にバイタルは正常で髄膜刺激兆候や脳神経学的な異常はない

一般的な採血項目や頭部CTで異常はない

Q1.次の検査は?

1.MRI
2.脳波
3.腰椎穿刺
4.ACEの測定
5.筋電図

腰椎穿刺をしたら初圧は25,TP 107 Glu 35(同時血糖102) cell 34(リンパ球69%)の結果だった

Q2.追加で検査するとしたら次のうちのどれがいいか
1.髄膜炎PCR
2.肺炎球菌PCR
3.エンテロウィルスPCR
4.コクシジオイデス抗原検査
5.クリプトコッカス抗原検査

クリプトコッカス抗原検査をしたら2560倍だった
HIVは陰性,TBの検査陰性,25日目に髄液培養からCryptococcus neoformansが陽性

ということでクリプトコッカス髄膜炎の症例でした

●解説より抜粋

クリプトコッカス髄膜炎HIVでよくみられるが他の原因で細胞性免疫が失われている患者でもおこりうる

HIV陰性のクリプトコッカス感染症患者のうち半数がCNS感染だった。そのうち25%がステロイド,24%が慢性疾患,16%が悪性腫瘍,15%が移植後,30%が基礎疾患なしだった(Clin Infect Dis. 2001;33(5):690-699. )

髄液検査でのTP上昇,Glu減少,リンパ球優位はTBや真菌っぽい
髄液のクリプトコッカス抗原は感度93-100%特異度93-98%と優秀な検査
血清の抗原はなんらかの理由でLPできない場合に使う
真菌培養も重要

クリプトコッカス髄膜炎において頭蓋内圧上昇は危険な合併症の1つ
クリプトコッカス髄膜炎における頭蓋内圧の管理は死亡率や合併症の低下のために重要であり,積極的に腰椎穿刺を連続で行う

ということでした
「クリプトコッカス」というと日和見感染症のイメージをもってしまうんですが免疫正常でも発症しうることはしっておいて損はないのかなと。
治療に関しても結構しっかり書かれています。

詳しく読みたい方は

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=30770097

を参照ください