ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

JC:Did This Patient Have Cardiac Syncope?: The Rational Clinical Examination Systematic Review.

JC:Did This Patient Have Cardiac Syncope?: The Rational Clinical Examination Systematic Review.

JAMAのRational Clinical Examinationで失神のreviewが出ました

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31237649
JAMA. 2019;321(24):2448-2457

ボリューム多かったのですが、しっかりした内容で読み応えバッチリでした
(失神 vs てんかんに関してはHistorical criteriaのみ抜粋にしています) 

Canadian Syncope Risk Scoreに関しては記載がなくEGSYSとvasovagal score(初めて知りました)を推している感じでした

11の研究(n=4317)のsystematic review
9-58%が心原性失神,3-37%が精査の結果診断未確定

●Table1より抜粋

□心原性失神っぽい病歴
心房細動や心房粗動がある:LR+7.3 感度13%特異度98%
重度の構造的な心疾患がある: LR+ 3.3-4.8 感度35-51%特異度84-93%
心不全の既往がある:LR+2.7-3.4 感度16-41%特異度88-94%
初回の失神が35才以上:LR+3.3 感度91%特異度72%

労作時の失神:LR+1.4-15 感度12-14%特異度92-99%
仰臥位での失神:LR+1.1-4.9 感度6-14% 特異度94-97%

□心原性失神っぽくない病歴
長時間の座位や立位:LR+0.54 感度38%特異度31%
トイレに行く途中:LR+ 0.28 感度5% 特異度84%
ストレス後の失神:LR+0.25 感度8%特異度68%
暖かい場所での失神:LR+ 0.17 感度9%特異度45%
疼痛や医療行為後の失神:LR+0.12 感度6%特異度52%
トイレ後の失神:LR+0.05 感度0% 特異度89%

□心原性っぽい前駆症状
呼吸苦:LR+ 3.5 感度18%特異度95%
胸痛/狭心症様症状:LR+ 3.4-3.8 感度6-19%特異度95-98%
動悸:LR+ 1.9 感度13%特異度93%
前駆症状なし:LR+1.6 感度43%特異度73%

□心原性っぽくない前駆症状
冷や汗: LR+ 0.49 感度15%特異度69%
嘔気: LR+ 0.44 感度11%特異度69%
熱い感じ: LR+ 0.38 感度24%特異度38%
音の歪み:LR+ 0.38 感度14%特異度64%
ふらつき:LR+ 0.33 感度8% 特異度80%
しびれ:LR+ 0.33 感度9% 特異度72%
腹部不快感:LR+0.21-0.39 感度3% 特異度 84-93%
冷たい感じ:LR+ 0.16 感度2% 特異度89%
気分変化や詳細な前駆症状:LR+ 0.09 感度2% 特異度 76%

□失神の最中や失神後の症状に関して
□心原性っぽい
失神中のチアノーゼ:LR+ 6.2 感度8% 特異度99%
失神による外傷はLR+ 1.13-1.28程度
□心原性っぽくない
しびれ:LR+ 0.31 感度6%特異度82%
嘔気:LR+ 0.29-0.38 感度6-10% 特異度65-84%
気分の変化:LR+ 0.21 感度3% 特異度83%

□スコア
EGSYS score 3点以上 LR+ 2.3 感度88% 特異度61%
VV score -2点未満 LR+ 1.7-8.6 感度32-91% 特異度81-89%

□採血
高感度トロポニンT
5未満 LR+ 0.15
5-42 LR+ 1.0
42より上 LR+ 5.1

高感度トロポニンI
2.2未満 LR+0.18
2.2-31.3 LR+ 0.96
31.3より上 LR+ 5.4

NT-proBNP
69未満 LR+ 0.16
69-1966 LR+ 1.1
1966より上 LR+ 5.8

BNP
15未満 LR+ 0.20
15-302 LR;0.91
302より上 LR+ 6.3

□EGSYS score(Emerg Med Int.2015; (2015):1-5.Heart. 2008;94(12):1620-1626.)

動悸:+4
心電図異常か心疾患(詳細下記):+3
労作時の失神:+3
仰臥位での失神:+2
失神前にきっかけがある(詳細下記):-1
自律神経系の前駆症状(詳細下記):-1

□心電図異常:HR<40,繰り返す洞房ブロック,3s以上の洞停止,ST1mm以上の上昇や低下,QT>0.44s,心室頻拍,徐脈性不整脈,PM誤作動による洞停止,一過性の上室性か心室性の頻脈
□心疾患の定義:鬱血性心不全,虚血性心疾患,弁膜症,心筋症,先天性心疾患
□自律神経症状:嘔気,嘔吐,腹部不快感,寒気,汗,前兆,頸部や肩の痛み,目のかすみ,めまい
□素因や誘発因子:体位(仰臥位,座位,立位),動作(安静,姿勢変化,運動中や運動後,排便/排尿/咳嗽/嚥下の最中や直後),素因(例:混雑した場所や暖かい場所,長時間の同じ姿勢,食後),増悪因子(例:恐怖,強い痛み,頸部の動き)

●Table 5. Clinical Prediction Rule for Distinguishing Seizure vs Syncope(J Am CollCardiol.2002;40(1):142-148)

舌の咬傷:+2
異常行動:+1
(健忘,無反応,異常な姿勢,四肢の痙攣などの目撃)
感情的なストレス後の意識障害:+1
発作後の混迷:+1
意識消失中にどちらかへの頭位変換:+1
全ての失神:-2
長期立位や座位の間の失神:-2
発作前の冷や汗:-2
1点以上:痙攣っぽい
-1点以下:失神っぽい

●VVS score/vasovagal score (Calgary score) (Eur Heart J. 2006;27(3):344-350.)

1.二枝ブロック,心停止,上質性頻脈,糖尿病の既往のどれかありますか?(-5)
2.失神している時に目撃者からは顔面蒼白といわれたか?
(-4)
3.初めての失神は35才以上か(-3)
4.意識がないときのことを何か覚えているか(-2)
5.長時間の立位や座位で軽い発作や失神がおきたか(+1)
6.失神の前に汗をかいたり暖かく感じたか(+2)
7.医療現場で軽い発作や失神がおきたか(+3)

-2以上であれば迷走神経による失神っぽい

●Figure1:反射性失神に関して
1.発生しやすい状況
長時間の立位や座位による静脈血の鬱滞
刺激(疼痛,血液の目撃,感情的なストレス)
内臓の刺激(胃や膀胱の膨満)
頸静脈洞圧受容体への刺激(頸部の圧迫)
心臓内圧受容体への刺激

2.遠心性反応
副交感神経緊張の増大→心拍数の低下
交感神経緊張の低下→血管拡張
両方の機序による血圧と脳還流の低下

3.自律神経っぽい症状
頭痛,発汗,嘔気や嘔吐,腹痛,蒼白,寒い感じや暖かい感じ

Figure 2. Approach to Determining Whether a Patient Has Cardiac Syncope 

①心原性失神っぽいか
EGSYSが3点以上
VVSが-2より低い
発症が35才以上
心疾患,心房細動,心房粗動,心不全,高血圧の既往
胸部不快感や呼吸区
目撃者によるチアノーゼ
心電図異常
Yes:起立性低血圧の評価と心原性失神の可能性があるマネージメントを
No:②へ


②反射性失神っぽいかどうか
EGSYSが3点未満
VVSが-2点異常
Yes:起立性低血圧の評価と反射性失神の可能性があるマネージメントと頸動脈洞過敏症候群を考慮

③痙攣っぽいかどうか
Multivariable seizure scoreが1点以上
発作中の頭位変換
Unusual posturing prior to event
尿失禁
舌咬傷
イベント前のことが思い出せない
Yes:起立性低血圧と痙攣の可能性があるマネージメントを
No:起立性低血圧の評価,失神の稀な原因を考慮,失神っぽいmimickを考慮,失神の専門医へのコンサルト