ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

47才男性 フェルティ症候群のある人の発熱と汎血球減少

□ケース流し読み:フェルティ症候群のある人の発熱と汎血球減少

47才男性 フェルティ症候群のある人の発熱と汎血球減少
Mayo Clin Proc. 2019 Jun;94(6):1073-1078


※注意:ネタバレ含みますので注意してください,また管理人の判断で情報をかなり抜粋していることを御容赦ください

 


43才男性ミシガン州北部出身
抗CCP陽性のRAがあり,手,膝,足首,腰などの多発関節痛をきたしている
MTXとHCQでうまくコントロールされていた

無症候性の黄疸で受診し、脾腫もあった
リンパ節腫脹はなかった
L/DでBil上昇,溶血性貧血,WBC減少があった
骨髄生検で異常がなくフェルティ症候群の診断となった

4年後に再発性の高熱がでるようになった
血液培養ふくめWorkUPでなにもでてこず,IVCY,MTX+,PSL,リツキシマブ,エタネルセプトなどが投与されたがWBCは低いままだった
そして輸血せざるをえない貧血と血小板減少が出現した

Q1.この時点でどれっぽいか
a.MTXの副作用
b.血液悪性腫瘍
c.AOSD
d.ヒストプラズマ症
e.PNH

MTXによる骨髄抑制は稀で用量依存的であり通常は腎不全でみられる。また溶血性貧血はうけないし脾腫はおきない。
血液悪性腫瘍は臨床像一致する。フェルティ症候群に関連する腫瘍はリンパ腫でほかに肺がん,白血病,メラノーマがある。
発熱に関連する皮疹はない
ヒストプラズマは発熱,脾腫,骨髄浸潤をおこしうるが肺や皮膚の症状がない
PNHは溶血性貧血の原因にはなるが腹痛や静脈血栓症などの症状がない

汎血球減少にくわえて2ヶ月で9kgの体重減少があったので精査紹介となった
その後全ての免疫抑制剤は中止された
L/DでHb 6.8g MCV 91.5 RDW 19.8% WBC 300 Plt 3.3万
スメアでは非特異的な赤血球の変化だった
T-bil 2.5 D-bil 0.6 ASTやALPは正常

Q2.次に行うのは?
a.Reti
b.G6PD酵素活性
c.浸透圧脆弱テスト
d.抗グロブリン抗体
e.Hb電気泳動

貧血の評価でRetiは重要
生産障害なのか破壊されているのかの鑑別に有用
Retiは正常下限だった
HIV,HBV,HCV,ダニ疾患,真菌疾患は検査で否定的だった
CRPは4.52mg/dl ESRは18mm 抗CCPは69.0U
関節症状は特に目立たなかった

この時点での鑑別は広い
フェルティの進行,感染症,血球貪食/マクロファージ活性化症候群,リンパ増殖性疾患など

Q3.マクロファージ活性化症候群の評価には何が良いか
a.変異遺伝子解析(PRF1,UNC13D,STX11,STXBP2)
b.フェリチン
c.骨髄生検で血球貪食を評価する
d.可溶性IL-2r
e.LDH

血球貪食性リンパ組織症.(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)は稀だがすぐに認識して治療しないと致死的なことがある。原発性ないし二次性(自己免疫性疾患,感染症,悪性腫瘍,免疫不全)でおこる

成人のHLHは診断困難なことが多い
2004年の診断基準は小児の研究に基づいており成人では検証されていない
発熱,脾腫,2系統以上の血球減少,高TG or 低フィブリノーゲン,血球貪食,高フェリチン,NK細胞活性低下,sIL2rの上昇のうち5つ以上で診断となる
膠原病でHLHがおきるとMASとよばれる
複数の研究で成人では高フェリチンが信頼性があることがわかっている
TGやフィブリノーゲンは非特異的で感度も高くない
sIL2rは結果が出るのに時間がかかる
sIL2r/フェリチン比はリンパ腫関連HLHでより頻繁に見られる

この患者のフェリチンは6169mg/Lだった
TG上昇もあった
これまでの情報もあわせHLHの診断となった
CTで24cmの脾腫があった
そのためリンパ増殖性疾患のさらなる精査の判断となった

Q4.リンパ増殖性疾患を評価するために次に行うのは?
a.フローサイトメトリー
b.リンパ節生検
c.骨髄生検
d.PET-CT
e.脾生検

フローサイトメトリーは有用だが偽陰性もあるので最前ではない
リンパ節生検は疑わしい病変があれば適応だがこの患者はなかった
骨髄生検によってリンパ腫ないし白血病の評価を行うべきであろう
PET-CTをやるのであれば骨髄生検の後
脾臓生検は出血リスクのため行わない

骨髄生検で稀な肝脾T細胞リンパ腫の診断となった
血球貪食の所見もあった
治療開始前に行われたPET-CTではびまん性に骨髄と脾臓に集積があった
mPSLのパルスとCHOEP療法をうけた

Q5.化学療法前に行うべき検査は?
a.肝臓の超音波
b.G6PD検査
c.チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ
d.肺機能検査
e.心臓超音波

G6PDは腫瘍崩壊のリスクがある患者で行うべきである
チオプリンS-メチルトランスフェラーゼはチプリン剤を使用する前に重要である
心エコーはアントラサイクリン系など心毒性のある薬の使用前に行うべきでありCHOEP前に行うべき

□Discussion

フェルティ症候群は関節RAに脾腫と白血球減少を伴いm診断が難しい発熱を伴うことがある。フェルティ症候群では溶血性貧血は一般的ではなくReti減少も有用な所見だった。
この患者はHLHや悪性腫瘍の評価が重要であった。
HLHは稀な疾患であり自己免疫疾患,感染症,悪性腫瘍に続発することがあり,早期診断と早期治療は重要
2004年の基準は小児で検討されたものだが成人でも診断の補助に使う

成人で発熱,汎血球減少,脾腫があったりHLHの疑いがある人にはフェリチンを測定するのが良い。
骨髄生検の貪食像は感度も特異度も高くないことを認識するのは重要

この患者はベースにフェルティ症候群があり悪性腫瘍のリスクが高くHLHの基準も満たしていた
画像で疑わしいリンパ節はないため骨髄生検が悪性腫瘍のスクリーニングに最適であった
結果的に稀な肝脾T細胞リンパ腫の診断となった