ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

ケース流し読み:57才女性 急性発症の頭痛+めまい

□ケース流し読み:57才女性 急性発症の頭痛+めまい

57-Year-Old Man With Vertigo(Mayo Clin Proc. 2019 Jun;94(6):e73-e79)

※注意:ネタバレ含みますので注意してください,また管理人の判断で情報をかなり抜粋していることを御容赦ください

57才男性,突然の激しいめまい,両側側頭部の頭痛,嘔気,嘔吐
3w前に氷の上ですべって背部をうちつけむちうち症になった。
その後,数日で出ては消える再発性の両側側頭部の痛みと左頚部痛を自覚していた。発熱,霧視,光過敏はなかった。
2wの間にNSAIDsを内服していた。
ほかに頭蓋内腫瘍に伴うてんかんがありLEVでコントロール良好だった。
HT,DLP,DMの既往はなく喫煙もしていなかった。
診察時はバイタルは安定
右側の水平性眼振があった
そのほかに眼球運動障害ふくむ脳神経所見に異常はなく麻痺や失調はなかった
採血では特に異常なし

Q1.次になにをするか
A.Dix-Hallpike
B.Kernig徴候
C.Head impluse test
D.Lhermitte sign
E.Caloric test

Dix-Hallpikeは後方半規管のBPPVに対する検査であり安静時には症状がない人が対象。急性のめまいの人に対する頭位変換はめまい症状の増悪をおこすのでDix-Hallpikeが陽性と誤解されかねない。また解離疑いの人には...ということで×。
Kernigは髄膜炎疑いの人に行う診察。
Head impulse testは前庭-眼球反射を評価するために最も重要なBedsideの診察で(急性前庭症候群っぽい)この患者では行うべきである。急性前庭症候群の患者で陽性であれば中枢病変を示唆する。
Lhermitte徴候はMSや脊髄病変などで陽性になる。
カロリックテストは診療所で行うのは困難。鼓膜に問題がないのを確認した後に行う。片側性で反応がなければ末梢性病変を示唆する。

この患者はHead impulse testを行い「正常」だった

この患者は急性発症の持続する重度のめまいで水平性眼振がある
急性前庭症候群でありHINTS(Head impulse test+Nystagmus+Test of Skew)の組み合わせの診察が有用でMRIより精度が高い。眼振は垂直性だったり注視方向性だと中枢性を示唆する。Test of Skewをチェックするときは患者が注視した状態で片方を覆い隠したりして評価する。
(Q2は省略)

Q3.頭部CTが行われ,以前と特に変化はなかった。その後頭痛はきえたがめまいは続いている。次の検査は?
a.時間をおいて頭部CT再検
b.頚部血管に対するUS
c.MRA
d.DSA
e.MRV

頭部CTの再検で初期のCTでわからなかった梗塞がひっかかることもあるが基本的にめまいの患者ではメリット低い。小脳や脳幹病変を考慮する場合でありMRIのほうが感度が高くCTのリピートは推奨できない。
頚部USは頚部動脈の評価はできるが頭蓋内の評価はできない。
MRAが最もよいと考えられる。MRAもCTAも後方の血管異常に対して高い感度と特異度を有する。
DSAは侵襲度が高くCTAやMRAに置き換わっている。
MRVは静脈血栓症疑いの人には有用。頭痛がきえたこともふくめ可能性は低い。

入院3日目にMRAが行われ右椎骨動脈解離と右小脳梗塞の診断となった。
Q4.治療は?
a.t-PA
b.血栓除去術
c.抗血栓療法
d.ステント留置
e.対症療法とスタチン開始

この患者にとっては抗凝固療法と抗血小板の2つが合理的な選択肢となる。頚部の動脈解離による脳卒中に対する抗凝固療法と抗血小板療法の比較試験では再発率に有意差はなかった。(抗凝固療法群でSAH1件と血尿と喀血があった)。
この患者は外傷後の動脈解離なのでスタチンのメリットは不明。

アスピリン 81mg/dが開始された

Q5.椎骨動脈解離にもっとと頻度が高く関連しているものは?
a.線維筋形成異常(FMD)
b.アミロイドアンギオパチー
c.結節性多発動脈炎
d.ホモシスチン尿症
e.感染性心内膜炎

ほとんどは素因がない。文献で関連が指摘されているのはエラーズダンロス症候群Ⅳ型,マルファン症候群,FMD,嚢胞性内側壊死,segmental mediolytic arteriopathy(SAM)。この中で頻度が一番多いのはFMD。
米国の921人のFMDのうち25.7%で動脈解離がおき,41.7%で動脈瘤や動脈解離があった。解離は頸動脈,椎骨動脈,腎動脈,冠動脈でおきやすい。
この患者の腹部骨盤のCTAではFMDの所見はなく解離の原因は外傷が考えられた。