ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

□ケース流し読み:57才女性,1年間続く掻痒を伴う顔面発疹と2週間前からの進行性の咳嗽と呼吸苦

2019年12月CPS Facing Uncertainty
N Engl J Med 2019;381:2253-9.

□ケース流し読み:57才女性,1年間続く掻痒を伴う顔面発疹と2週間前からの進行性の咳嗽と呼吸苦

2019年12月のCPSです

※注意:ネタバレ含みますので注意してください,また管理人の判断で情報をかなり抜粋していることを御容赦ください

アルコール使用障害,不安障害,抑うつ,甲状腺機能低下,脂肪肝などがありBZOやSSRIなど内服している57才女性,1年間続く掻痒を伴う顔面発疹で皮膚科に紹介となった。初期診断は接触生皮膚炎,その後顔面発疹の所見や接合部皮膚炎の生検結果などからSLEの診断となりPSL 40-60mg/dとヒドロキシクロロキンで3m治療をうけたが改善はなく,皮疹はむしろ頭皮や頸部に広がり,くわえて進行性の咳嗽や呼吸苦が出現してきた。胸痛,関節痛,筋力低下,足の腫れなどの症状はなし。追加の病歴としては42 pack-yearの喫煙歴と大酒家でかつ,SLEとRAの家族歴があった。

診察時はBT 37.5 HR 124 RR 18 SpO2 94% BP 150/86。神経学的所見では筋力ふくめ正常。呼吸音は正常。皮膚所見では眼窩周囲や頭皮の紅斑と浮腫,鼻唇溝を含む顔面中央部の紅斑,上部胸部や背部の紅斑,外側大腿部の多形皮膚萎縮症,手や指の背側の紅班,指骨間関節の丘疹,肘の乾癬状鱗屑を伴う紅班,爪周囲紅班,爪郭の毛細血管ループなどの所見があった。

 

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採血ではWBCは15240(Neu 89%) Ht 42.3% 血小板 39.2万,肝機能や腎機能は正常,CK 162 アルドラーゼ 5.8と筋酵素は正常,CRP 1.4 ESR 5 ANA 正常。胸部レントゲンでは右下葉と中葉に班状影が認められた。

胸部CTでは右下葉に肺門部結節があり右気管傍LNの腫大があった。PET-CTでは右下葉の肺結節,肺門周囲や傍気管LNに取り込みがあった。頭部MRIでは左小脳に6mmの造影される病変があった。

経気管支で縦隔LN生検がされ転移性小細胞癌が認められた。T1F-1γを標的とする自己抗体も認められた。IVIG 2g/kgで治療され,その後に小細胞癌に対してシスプラチン,エトポシドと胸部RTXが開始された。皮膚症状は改善し画像上から病変が消失した。その後の全脳照射は拒否がありできず,二ヶ月後に頭部に多発の転移性病変,全脳照射するも肝臓や副腎転移が出現し最終的にホスピスケアをへて死亡された。



ということでT1F-1γ抗体陽性の肺小細胞癌に伴う皮膚筋炎でした

Vサインやらゴットロンやら爪周囲紅斑まで写真にでているので流石に入り口は間違えなかったのですが...どこまで深く診断を想起できるか!?みたいなCPSでした

東京GIMのケースで学んだメモを見ながら...ANAが陰性で強い皮膚症状の皮膚筋炎でCK上昇がない...ということでTIF1-γ抗体パターンで嚥下障害はないのかな?と思いつつ読んでいました
(結局嚥下障害はないようでした)

なお皮膚潰瘍,口腔の痛み,口腔潰瘍,逆ゴットロンなどがあると抗MDA5抗体のほうを考えなければいけないので色々急ぐ(というか即専門医コンサルト)必要があります。抗Mi-2のほうは皮膚所見がしっかりしているのは一緒なのですが筋症状やCK上昇がありがANAの力価は高いことが多いのでこの症例にはあわないと考えていました。

でTIF1-γだと悪性腫瘍合併が多いのですが,42 pack-yearの喫煙歴がありレントゲンで肺炎像がうつっている人なのにどの癌までとか考えずに読み進んでしまって反省


膠原病って早期診断が大事なのはいうまでもないですが診断をしてからが本番なのだと再認識するケースでした

解説やCommentary(抜粋)では

・顔面発赤の鑑別診断は広い。皮膚疾患,外部由来(アレルギー,刺激性,光刺激),感染症,全身性疾患(SLEやDM)。肺の症状からはSLEやDMを考えるが,発疹と関係がないかもしれない。
・ヒドロキシクロロキンやPSLによる介入でSLEが改善しないのは非典型的。
・顔面中央部の発赤は酒さや食事由来などもあるが酒さは基本的に掻痒症状を伴わない。頭部や頸部の掻痒症状がある紅斑からは皮膚筋炎も考慮する。
・皮膚筋炎の患者ではヒドロキシクロロキンで薬疹が30%誘発するリスクがあるのでこの症例の発赤は薬疹の可能性もある


・皮膚筋炎は女性では男性の2倍の頻度,小児期と40代から60代の人生で二峰性のピークがある
・皮膚筋炎の特徴的な皮膚所見には頭皮の発疹,鼻唇溝をこえる顔面中央の皮疹,Vサイン,ショール徴候,ホルスター徴候,ゴットロン,石灰沈着,近位爪郭の変化(毛細血管のループ拡張など)など
・Vネックやショールサインは時間の経過とともに多形皮膚萎縮症(poikiloderma)を発症することもある
・外側大腿の多形皮膚萎縮症(poikiloderma)はホルスター徴候と呼ばれる
・皮膚筋炎では、爪郭検査が重要。特徴的な所見は診断に役立ち、爪郭所見は疾患の活動性と相関する。


・皮膚筋炎は一般的に皮膚症状と筋症状をきたすが筋症状を来さないamyopathic dermatomyositisというサブタイプがある
・amyoは筋症状がない6ヶ月後に暫定診断され,2年後に確定する。誤診率が高くで疫学データーは限られているが,皮膚筋炎の2割に相当すると考えられている
・CKやアルドラーゼは全ての患者で測定する必要がある。筋酵素が正常でも症状や所見があればMRIや筋電図が推奨される。

・皮膚筋炎の25%は特異的な抗体を持っている。抗MDA5,抗T1F-1γ,抗SAE (SUMO 1 activating enzyme),抗ARSなど。
・抗T1F-1γ抗体は筋障害,若年生皮膚筋炎,癌発症リスク,広範囲の皮膚症状ふくむ特徴的な皮膚表現,乾癬様皮膚所見,手掌過角化性丘疹,色素沈着低下,毛細血管拡張と関連している
・自己抗体は陰性でも皮膚筋炎を除外できず,癌や肺疾患のスクリーニングの必要性も除外できない

・皮膚筋炎の成人患者は予後に関与する間質性肺疾患と悪性腫瘍に関してスクリーニングを行う必要がある
・間質性肺疾患はDMの最大40%にある。tRNA抗体やMDA-5抗体陽性がリスクで80%が間質性肺炎をおこす。症状は無症候性から急速進行まで色々。HRCTでもわかるが患者によってはCT所見陰性で拡散能低下をきたすため全ての患者で呼吸機能検査を行う必要がある
・皮膚筋炎自体が悪性腫瘍のリスクだが、TIF­1γや抗NXP-2を標的とする特定の筋炎特異的自己抗体は悪性腫瘍のリスクが高い
・悪性腫瘍は15-27%で報告されている。診断に先行することもあれば診断後のこともある
・癌のリスクが最も高いのは発症後最初の1年だが3-5年にわたってリスクが高い。関連する癌は統計によってことなる。肺,乳房,卵巣,膵臓,大腸癌など。古典的皮膚筋炎とamyoで癌の内訳は一緒。スクリーニングの推奨項目は様々。少なくとも毎年病歴と診察と年齢に応じたがんのスクリーニングを行う必要がある。



・皮膚筋炎の治療アルゴリズムは筋障害があるか臓器障害があるかでことなる。筋障害ないし臓器障害がある場合は高用量のステロイドと漸減がメインにある。癌関連皮膚筋炎は一部の患者は癌の治療で改善する可能性があるがほとんどの場合は低用量の免疫抑制が必要。この症例ではIVIGは免疫抑制効果をもたらすことなく皮膚筋炎の効果的な治療となる。

などの話がありました

CPSとは別ですが皮膚筋炎の皮膚症状と自己抗体に関しての文献で


Cutaneous Manifestations in Dermatomyositis: Key Clinical and Serological Features-a Comprehensive Review. Clin Rev Allergy Immunol. 2016 Dec;51(3):293-302.

Mi-2抗体:ヘリオトロープ発疹、ゴットロン丘疹、Vネックサイン、ショールサイン、角質の異常増殖、および光過敏性
TIF1γ抗体:びまん性紅斑
MDA-5抗体:皮膚潰瘍,逆ゴットロン,びまん性脱毛,脂肪織炎,口腔内の痛みや口腔内潰瘍
 
というのもあり臨床所見で自己抗体もある程度推察ができる...ということでした