ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

鏡検陰性,培養陰性の肝膿瘍の症例

鏡検陰性,培養陰性の肝膿瘍の症例

 

Diagnosisで掲載されたケースレポートより
赤痢アメーバによる肝膿瘍の症例です

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31256063
Entamoeba histolytica liver abscess case: could stool PCR avoid it?
Diagnosis (Berl). 2020 Jan 28;7(1):69-73

クローン病に対して免疫抑制剤で治療中の55才女性が肝膿瘍で入院した
CTガイド下ドレナージした検体上,鏡検では細菌も寄生虫も陰性で培養も陰性だった

膿瘍検体の赤痢アメーバのPCRを提出したところPCRで陽性だった
血液,胸水,便検体でも赤痢アメーバのPCRが陽性だった
抗体は1280倍だった

入院2m前の寄生虫検査は陰性だった
感度の観点から特に免疫不全患者ではPCRをという報告でした

IntroやDiscussionからの抜粋ですが...
赤痢アメーバによる肝膿瘍は30-50代の男性で多い
・暴露の数年後や数十年後の報告もある
・主な症状は発熱と右上腹部痛だが胸膜痛,心窩部痛や右上腕部への放散痛もきたしうる
・嘔気や便秘や下痢などの消化器症状は5-30%
赤痢アメーバの抗体は感度が高く診断のゴールドスタンダードだが,陽性化までの時間や,もともと陽性の人がいることなどの問題点がある
・流行地域では35%以上の人が非感染状態でも抗体陽性の報告がある
PCR検査は報告によっては感度100%特異度100%
・肝膿瘍と大腸炎は通常一緒に起きず,肝膿瘍の場合,便の検査は陰性となるが便検体のPCRであれば感度が75-80%の報告がある

ということでした