ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

Controversies in diagnosisのmini review

Controversies in diagnosisのmini reviewの抜粋です

 

Controversies in diagnosis: contemporary debates in the diagnostic safety literature
Diagnosisに掲載されたMini reviewです

1.診断エラーの定義(NAMレポートに関して)
2.臨床的推論と診断を教えるためのアプローチ
3.人工知能は診断を向上させるか

の3点に関してのProConを記載しています
管理推論の話ふくめいろいろと勉強になりました


①診断エラーの定義(NAMレポートに関して)

2015年にNational Academy of Medicineは診断エラーの定義を「患者の健康問題について正確で適時な解釈が為されな いこと もしくは その説明が患者に為されないこと」と定めた

□Pro

・この定義は「To Error is human」から臨床医向けに診断エラーの概念を大幅に前進させた
・不確実性や患者中心性も考慮している
・“delayed diagnosis” や “misdiagnosis” など白黒できまる狭義の概念から離れ,不確実性のニュアンスと困難さを評価している
・診断の確実性より説明を優先することは診断の意思決定の改善だけでなく,医師の燃え尽き症候群を減らし,患者との信頼性をより生み出す可能性もある
・NAMの定義とモデルは診断プロセスにおけるチームワークの重要性を強化する
・NAMモデルのおかげで診断のチームワークと患者中心性がこれまで以上に注目を集めている
・NAMの定義は学術的な診断のメリットをこえて臨床医間のコミュニケーションの改善や患者をチームベースのケアに組み込むなどヘルスケアの流れと連携している

□Con

・NAMの定義はヘルスケアの「診断を改善する」という目標に達していない
・過剰診断のリスクの認識より過小診断の排除が優先されている
・NAMのアプローチは過剰な検査や不適切な手順による合併症などにをえて最終的に正診についたプロセスを否認していない。
・ウィルス性気管支炎 vs 細菌性副鼻腔炎など良性の自然に寛解する疾患は診断エラーをおこしても転機に影響を与えない。
・“undesirable diagnostic events”というフレームワークもある( J Gen Intern Med 2018;33:1187–91.)。敗血症のような過剰診断と過小診断のバランスが重要な疾患もある。敗血症が認識されなければ多くの患者や臓器不全が死にいたり,低血圧の人全員が敗血症の疑いで評価され治療したら資源の利用は急増し,抗菌薬関連の副作用や輸液過剰などの結果につながる。望ましくない診断イベントと過剰診断を強調表示することは、診断プロセスの改善に合致する
(NAMの定義では診断不足を減らすことに重点が置かれている)

②臨床的推論と診断を教えるためのアプローチ

□Pro
・診断プロセスの重要な部分だが,臨床推論は定義が難しい
・最近の提案の1つとして診断推論と管理推論を区別する方法がある(J Am Med Assoc 2018;319:2267–8)
→管理推論(Management reasoning)は治療,フォローアップ受診,追加検査,およびリソースの割り当てに関する選択を含む患者管理に関する決定を下すプロセス
・管理推論は複数の正解があり,臨床医と患者の好みに影響され,意思決定を共有する必要がる動的なものでコンテキストに依存するという点で診断推論とは異なる
・診断に到達する認知プロセスは解体して測定するのが難しいのに対し,管理推論は分析的であり意教育と評価のための機会がうまれる
・診断が不明確な場合でも,教育者は学習者の管理推論を評価できる
・管理推論には,診断を追求する必要があるかどうや検査からどのような管理上の変更が生じるかなどの質問を伴うため医学教育において価値の高いケアの教育を促進する
(検査や治療の閾値などを教える良い機会)

□Con

・診断と管理は流動的で相互に影響するプロセスですなので分離することは難しい
・敗血症疑いの低血圧を例にすると,初期の診断は不確実でも疾患の進行,治療薬への反応など管理を通じて診断仮説が改善する...etc

人工知能は万能ではなく,診断の未来は人間の手にかかっている

□Pro

・近年,人工知能アルゴリズムによる機械学習で頭蓋内出血に対する頭部CT(Nat Med 2018;24:1337–41)や心エコー結果から臨床的心不全のリスク算出(J Am Soc Echocardiogr. 2018 Dec;31(12):1272-1284.e9)などの報告はでており,ケアの促進をもたらす可能性がある。
機械学習は一般的に監督下での学習するパターンと監督なしで学習するパターンの2つが主流(J Am Coll Radiol 2018;15(3 Pt B):569–76.)
・監督下の場合は臨床医のゴールドスタンダードにともなって機会は学習し,監督なしの場合は機会が算出した関連/結果の文脈を人間が解釈する必要がある。どちらにせよAIをつかって診断を向上させるには専門家の判断が必要である。くわえて,画像データーなどは処理できるがニュアンスやイレギュラーなものは処理できない。
・診断をAIに依存すると,診断の安全性に望ましくない影響が生じる可能性がある。最も顕著なのは,依存による「スキル低下」または人間のスキルの減少を永続させる可能性があること(J Am Med Assoc 2017;318:517–8.)。AIが最適化のために人間の入力が必要なことを考えると,スキルの低下は診断の正確性に対する大きな脅威となる。おそらく現時点ですでに技術への集合的な愛情は病歴や診察などのプロセスを無視する環境を作り出しており,病歴や診察など基本的なことによる失敗が多くの診断エラーを起こしている(Am J Med 2015;128:1322–4.e3.  Med Clin North Am 2018;102:453–64)。
・さらにAIはバイアスに偏りがちになる。異常を認識したり,欠落データの非ランダム性の重要性を把握したりするための洞察が欠けている( J Am Med Assoc Intern Med 2018;178:1544–7)。欠落データへの軽視は伝統的にケアへのアクセスが不十分なグループを除外する可能性がある健康格差を拡大しかねない。

□Con

ホモサピエンスは、変化に革新し適応することで種として進歩してきた。現在は莫大なテクノロジーの時代に生きています。大規模な臨床データセットにアクセスでき,AIと機械学習を使用して診断プロセスを最適化することができる。これらをしないことは停滞のリスクであり,患者にとっては不利益になる
・AIと人間の認知には異なる長所があり、AIが診断の安全性の万能薬であると信じている人はほとんどいない。適切なモニタリングを行うことで,AIは人間の認知の限界を克服できる。
・人間では大規模なデータを効率的に照合,内部化,分析することはできないが,機械学習はこれらのデータ間のパターンを識別し,一見ばらばらのデータポイントを統合できる。機械学習はデーター認識の促進だけでなく新しい疾患を定義する可能性もある。
・AIの別のメリットにコンピューターネットワークの接続と更新可能性により、最新の知識を維持し、新しい知識を吸収するのが困難な人間の意思決定者に新たな優位性を与えることがある。
ビッグデータを活用し,患者の訪問パターンや症状と疾患の関連など相互接続されたデータポイントを活用することもできる。
・AI自体は人間の知識の産物であり、機械学習は「従来の統計的アプローチの自然な拡張」である。なので臨床研究や研究におけるAIを科学の期待される進化と見なさなければならない。プログラムを作成し,アルゴリズムを改良し,AIからの改善に必要なフィードバック提案を受け入れたり拒否したりして相乗効果を受け入れなければならない