ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】薬剤性頭痛(not 薬剤乱用性頭痛)

PPIによる頭痛に引き続き,薬剤性頭痛に関して


薬剤乱用性頭痛は有名ですが薬剤で急性の頭痛ってシロスタゾールとニトロしかイメージがなかったのでPPIを契機に調べてみました

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15062533
Neurol Clin. 2004 Feb;22(1):173-84.
Drug-induced headache.
より


□Acute medication-induced headache

・二重盲検比較試験でプラセボよりも頭痛が頻繁に起こる場合にのみ、頭痛を真の副作用とみなすことができる
・特に硝酸薬とPDE阻害薬が頭痛を引き起こす

□硝酸薬誘発の頭痛

・即時発症し,両側性,拍動性,前側頭部で身体活動で増悪する
・IVの場合は投与して5分以内に発症し,投与終了から10分以内に終了する
・遅発性の場合は片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛の特徴をもつが健常者ではあまり遅延性の頭痛は発症しない
・頭痛もちの場合,NOが血液から除去された後,群発の場合は1-2h,片頭痛や緊張型頭痛の場合は5-6h後に発症する
・硝酸薬誘発の頭痛に対する耐性は1wくらいででき始めるが間欠的な投与では耐性はできない

□PDE阻害薬による頭痛

・NTGとは異なり健常者でも片頭痛患者でも単相性の頭痛を引き起こす
・シルディナフィルの副作用で頭痛が注目されているが,最近の臨床試験で若い人,特に女性の大半で頭痛が発生している
片頭痛患者ではシルディナフィルが片頭痛を誘発することがしめされている
片頭痛持ちにシルディナフィルを処方する際はこの副作用に関しての警告が必要
・基本的に5時間以内に始まり単回暴露72h以内続く

ほかに頭痛の報告がある薬はBox2(後述)

□まとめ

・薬剤性の急性頭痛で押さえておくのは硝酸系とPDE阻害(テオフィリン,PDE3阻害のシロスタゾール等,PDE5阻害のシルディナフィルなど)とPPI
片頭痛持ちに投与すると片頭痛発作を発症しかねないので頭痛持ちかの確認は重要。その場合はNO製剤は二相性頭痛,PDE阻害は単相性

●文献のBox2:Partial list of medications reported to induce headacheより(一部改変)

アシクロビル
アダリムマブ
アルベンダゾール
アルファメチルドーパ
アムホテリシン
アトバコン
ブロモクリプチン
クロロキン
シクロスポリン
デスモプレシン
ジスルフィラム
エタネルセプト
グリセオフルビン
ヒドララジン
ヒドロキシクロロキン
インフリキシマブ
イソトレチノイン
リネゾリド
リチウム
ロピナビル
ムロモナブ/ CD3
ナルトレキソン
ニフェジピン
ニモジピン
ステロイド性抗炎症薬
フェニルプロパノロミン
プラジカンテル
プロゲスチン
リトナビル
スルファサラジン
テトラサイクリン
ビタミンA
ドブズダイン
ヒスタミン遮断薬:シメチジン,ラニチジン
インターフェロン製剤
硝酸系(硝酸アミル,硝酸イソソルビド,ニトログリセリン,ニトロプルシドナトリウム)
オキシトシン
インドメタシン
ホスホジエステラーゼ阻害剤(ジピリダモール,シルデナフィル)
キノロン系(シプロフロキサシン,ノルフロキサシン,オフロキサシン)
セロトニン拮抗薬(グラニセトロン,オダンセトロン)