ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

子宮内膜症の診断エラー研究(Diagnosis (Berl). 2020 May 26;7(2):97-106.)

Diagnosis5月号より

 

Patient perceptions of misdiagnosis of endometriosis: results from an online national survey
Diagnosis (Berl). 2020 May 26;7(2):97-106.

背景:子宮内膜症は女性の10%が罹患するエストロゲン依存性疾患で疼痛,不妊,心理社会的障害をもたらすこともある。診断エラーを調べた先行研究では診断まで平均6.7年と報告されている(Fertil Steril 2011;96:366–73)。本研究では患者中心のアプローチをとり,患者が経験した誤診の経験を調査することにより先行研究を補完することを目的とする。
方法:
大規模オンライン調査のデーターの一部で自己申告で外科的に子宮内膜症が確認された患者758人が対象。患者の誤診の報告,誤診の原因となった医師,平均の診断の遅延,誤診を予測しうる症状や場所を調査した。
結果:
診断の遅延は8.6年。75.2%の患者が他の疾患(95.1%),精神疾患(49.5%)と誤診されたと報告した。医師は婦人科医が53.2%,開業医が34.4%,子宮内膜症専門医3.7%。誤診に関連する症状は事実上全て。精神疾患の誤診になりやすいのは.若年発症,横隔膜/大腸/肺/尿管の子宮内膜症,子宮腺筋症の合併だった。
結論:子宮内膜症の診断の複雑で難しい。今回の結果は子宮内膜症の診断エラーを調べた過去の証拠を裏付け,患者報告での診断エラーの発生率をしらべ,診断エラーの研究に患者を含めることの価値をしめす。

 
■個人的な感想

 疾患の性質上,やむを得ないのですが生検や処置で子宮内膜症が「確定」した人が対象になっているのと,オンライン参加などのバイアスの影響の可能性は考えざるをえませんが,割合と期間には驚きました。
 またDiscussionでも触れられていましたが,精神的な問題であると判断され,最終的に子宮内膜症と診断された患者はその判断した医療者に怒りを経験したと報告されています。「According to the American Psychiatric Association, the provision of a mental health disorder based solely on the absence of medical evidence is not only an invalid diagnosis, but is likely to contribute to patients’ broader notions of self and well-being as they are perceived as “pejorative and demeaning”」という記載は色々と学びになりました。