ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

ケース流し読み 2020年5月CPS 59歳女性 再発性の腹痛+好酸球上昇

2020年5月CPS Hiding in the Water  

青○を飲みますか?


過去に東京GIMにでていた疾患なので全く想起できず無念。。。
Eosinophilia→寄生虫、ではなくさらに踏み込んだ鑑別を、というかまだまだ勉強が全く足りないと再実感。。。


Hiding in the Water(N Engl J Med 2020;382:1844-9.)

骨粗鬆症の既往がある59才女性が三ヶ月続く消化不良と食思不振を訴えた。それ以外に6日に1回の頻度で発生する右上腹部に放散し3-5時間持続する上腹部不快感を訴えた。睡眠中に発生し起きてしまったこともあり。嘔気,嘔吐,体重減少,排便の変化はない。そしてイタリア,スイス,デンマークへの渡航歴があり,三ヶ月前にイタリアでクレソンやケールを含んだ青汁を飲んだ3時間後に嘔吐と失神を伴う上部消化管症状があり、その後に症状が出始めたとのこと。ほかに受診2日前に39.9℃の発熱と悪寒があり,体幹部や腕に掻痒性の発疹がみられた。診察時はバイタルは正常,身体所見では上腹部の軽度の圧痛のみで皮疹は消失して掻破痕のみだった。
L/DでCBCWBC 10900 好酸球 37% AST 61 ALT 88 ALP 141であった。
胸部レントゲンは正常,腹部USで肝臓内に低エコー域があった。胆石はなし。
コルチゾールは12μg/dl,ANCAは陰性,トリプターゼは陰性,VitB12は軽度上昇。

初期評価の1週間後に39.4℃の発熱と悪感で入院した。食事を制限していたため2.2kgの体重減少があった。腹部診察では特に以上はなかった。WBC 11600 Eo 6830。便検査でノロ,サルモネラ,クリプトスポリジウム,ジアルジアは陰性だった。
肝臓の造影MRIが撮像された。肝臓の両葉に辺縁不整の被膜まで達する病変が認められた。

さて診断は?
という症例でした

再発性の腹部症状と肝臓の病変と好酸球上昇ということから寄生虫感染がピックアップされています

□Strongyloides stercoralis(糞線虫)
・腹痛、好酸球増多、および再発性じんま疹は合致する
・肝病変の存在が合わない(Hyperinfectionか幼虫の播種がないかぎり肝病変はおこさない。)

□トキソカラ Toxocara canis
・(この患者は犬の暴露があった)
・トキソカラであれば腹痛,Eo上昇,肝臓の病変は説明がつく
・が汚染した土壌を摂取した小児に多い病気で,主に肺の症状をきたす。

□肝蛭(Fasciola hepatica)

・肝蛭がついている水生植物を摂取すれば感染する。感染の急性期症状は2-3w続く,腹痛や嘔吐を伴うことがある(これは幼虫が移動することに関連している)
・急性感染の間は幼虫は卵を出さないので便検査ではわからない
・皮膚症状では蕁麻疹や皮膚結節がある
・肝臓の所見は
・そしてこの患者はイタリア旅行中にクレソンを摂取している

ということで肝蛭の抗体検査がCDCに送られた。F. hepaticaに対する抗体が陽性でトリクラベンダゾールによる治療が行われ,症状が改善したという症例でした。

以下はCommentaryからの抜粋です
なお,解説のFigure3が非常にわかりやすい図でした。

・肝蛭症はF. hepaticaまたはF. giganticaに曝露された結果生じる蠕虫感染症
・人間での肝蛭症は感染性のメタセルカリアが付着しているクレソンやウォーターチェスナッツなどの淡水植物の摂取が原因で起こることが多い
・感染性のメタセルカリアを人が摂取すると腸内で脱嚢(嚢胞から出てくる)して2-24時間以内に幼若虫として腹腔内を移動する。48時間後にグリソン鞘を貫通し,7週間かけて肝実質を移動し壊死や好酸球浸潤を引き起こす
・幼虫期は卵を産まず,臨床症状としては右上腹部痛,体重減少,発熱,移動する幼虫によって生じる好酸球増多症がある。急性感染時に20-25%で蕁麻疹,掻痒あるいは両方が認められる。
・慢性期には胆管や総胆管内に卵を放出する。潜伏期は何十年も続くことがあり,胆道閉塞,胆管縁,膵炎,胆管出血などをおこしうる。胆道閉塞をきたす段階では便の検査で卵(黄褐色,卵形,130〜150μm×60〜90μm)を確認することができる(ただし複数回の便検査が必要)
・被膜下の辺縁不規則な病変と門脈周囲リンパ節腫脹がCTやMRIで認められることもある。
・抗体検査の精度は感度94%特異度98%。摂取して2-4週間で抗体が産生される
・血清検査で診断可能であるため,組織学的検査は通常必要ない
・プラジカンテルは肝蛭には効かない。トリクラブベンダゾールが使用される。10mg/kgの単回投与、重症例は10mg/kgを12-24時間間隔で2回投与する。


などなど勉強になりました。

なお、「クレソン 肝蛭」「クレソン 寄生虫」でGoogle検索するとしっかりでてきますね
「クレソン 青汁」も13.5万件HITとそれなりに...