ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】フレイル×ポリファーマシー「STOPP Frail 」

STOPPFrail (Screening Tool of Older Persons Prescriptions in Frail Adults With Limited Life Expectancy)

Age Ageing. 2017 Jul 1;46(4):600-607

 

予後が限られフレイルがある人ようのSTOOPFrail

高齢者医療は個別化だとおもっているので対象がさらに明確な基準というのはいいですね

(より情報量がふえるというデメリットはありますが)

 

アイルランドで17名の専門家によるデルファイ法で判断


■Table 1. Final STOPPFrail criteria
□適応患者の基準(65才以上)
1.不可逆的な病態の終末期
2.1年生存率が悪い
3.重度の機能障害 and/or 重度の認知障害
4.疾患の進行予防より症状コントロールを優先する

□薬を処方する/しないの判断は下記項目も考慮する
1.薬物療法のリスクと利益
2.投与が困難か
3.効果のモニタリングが難しい
4.アドヒアランス/コンプライアンスが難しい

SectionA:一般ルール
A1.適切な教育と全ての薬の処方を検討したが患者が飲めないか認容できない全ての薬
A2.明確な適応のない薬剤

SectionB:循環器系
B1:脂質降下薬(スタチン,エゼチミブ,胆汁酸吸着剤,フィブラート,ニコチン酸,アシピモックス):これらの薬剤はメリットのためには長期の処方の必要がある。短期的な使用は有害事象のリスクは潜在的なメリットを上回る。
B2:高血圧に対するαblocker:フレイルが強い高齢者に厳格な血圧管理は必要ない。特にアルファブロッカーは血管拡張をおこし,起立性低血圧,転倒,外傷を起こす可能性がある

SectionC:凝固系
C1:抗血小板薬(一次予防):一次予防の抗血小板薬を避ける

SectionD:中枢神経
D1:抗精神病薬:BPSDの症状がなければ12w以上服用している患者には減薬を行い徐々に中止するのを目指す
D2:メマンチン:メマンチンが明らかにBPSDを改善しない限り,中等度以上の認知症の患者ではモニタリングを行いながら中止する

SectionE:消化器系
E1:PPI
E2:H2blocker
E3:消化器系鎮痙薬:抗コリン の副作用リスクが高いため頻回に疝痛が再発しない限り定期的な服用は避ける

SectionF:呼吸器系
F1:テオフィリン:治療域が狭く,モニタリングが必要で他の薬と相互作用を起こしやすく有害事象のリスクが高い
F2:LTRA:COPDでの役割は証明されていない。喘息のみ適応

SectionG:筋骨格系
G1:Ca補充
G2:骨粗鬆症治療薬(BP製剤,ストロンチウム,テリパラチド,デノスマブ)
ともに短期的には利益にならない
G3:骨粗鬆症のためのSORM(SERM):1年以内にメリットが得られる可能性が低く,静脈血栓症脳卒中などのリスクが上昇する
G4:長期の経口NSAIDs
G5:長期経口ステロイド

SectionH:泌尿器系
H1:5-α還元酵素阻害剤:膀胱カテーテルの長期留置中は意味がない
H2:α-blocker:膀胱カテーテルの長期留置中は意味がない
H3:ムスカリン拮抗薬:明確なOABの既往がなければ膀胱カテーテルの長期留置中は意味がない

SectionI:内分泌系
I1:経口血糖降下薬:なるべく単剤での治療を目指す。厳格なコントロールは不要で8%未満を目標とする
I2:ACE阻害薬(糖尿病性腎症の予防と治療目的で処方された場合)
I3:ARB(糖尿病性腎症の予防と治療目的で処方された場合)
I4:更年期症状に対する全身性のエストロゲンの使用
SectionJ:その他
J1:マルチビタミン(予防目的)
J2:栄養補助食品(予防目的)
J3:予防的抗菌薬投与