ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

30代男性 多関節痛,膵炎,皮膚病変

30代男性 多関節痛,膵炎,皮膚病変

 

A Man With Widespread Arthritis and Ill-Defined Cutaneous Lesions
JAMA Oncol. 2020 Jul 23. doi: 10.1001/jamaoncol.2020.0826

30代男性,三ヶ月前に右環指の関節炎,その後,左の足指や足首にも同じ症状が生じ,発熱もでてきた。複数回の診察とNSAIDsの投与にもかかわらず二ヶ月前には膝,肩,股関節に関節炎が広がってきた。1ヶ月後に境界不明瞭な皮膚結節が下肢に出現した。その後,急性の左季肋部痛が生じ,膵炎の診断となり入院,その後手術となった。ほかに右肩と膝のCTでは皮質骨の赤いと髄質内壊死が認められた。

診断は?
A.腫瘍関連のSLE
B.腫瘍関連の膵炎,脂肪織炎,多関節炎症候群(pancreatitis, panniculitis, and polyarthritis syndrome (PPP) syndrome)
C.皮膚筋炎
D.白血球破砕性血管炎

Answer:B


Discussion(抜粋):

膵炎,脂肪織炎,多関節炎の並存はPPP症候群と一致している。

 

PPP症候群のほとんどは高リパーゼ血症がある膵臓疾患に伴って診断される。急性ないし慢性膵炎が50%,腫瘍が40%(膵腺房細胞癌や神経内分泌腫瘍含む)が原因。膵瘻や外傷など他の原因もPPP症候群になりえる。

膵疾患に伴う脂肪織炎は2-3%で認められ1883年に最初に記述された。PPPのメカニズムは大量の膵酵素放出によると考えられている。特にリパーゼによる組織脂肪分解はPPP症候群の最も可能性の高い病因とされ,組織の脂肪分解による炎症が脂肪織炎,関節炎,膵炎,骨髄内壊死を起こすと推測されている。

膵腫瘍,その中で膵腺房細胞癌は膵臓の非内分泌腫瘍のうちの1%程度だが,PPP症候群との関連が多く腫瘍関連のPPP症候群の70%が膵腺房細胞癌とされている。


PPP症候群の患者のほとんどは男性,年齢の中央値は60才,ただしどの年齢でもありえる。膵疾患に関連した症状が出る前に脂肪織炎や関節炎を発症することがあり,PPP症候群の診断は困難なことが多い。