ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC 流し読み】スタチンのガイドラインは高齢者での中止を考慮しているか

Recommendations for (Discontinuation of) Statin Treatment in Older Adults: Review of Guidelines
J Am Geriatr Soc. 2020 Feb;68(2):417-425

具体的な指針の提示はないという結論

 

高齢者医療は個別化とSDMがKeyだと思っているので,まぁ...という感じですが,このへんも個別化された群(例えばですが...Clinical frail scale7以上とか)でのDataがでてくるとよいなとは思っています


目的:高齢者に適用されるスタチン治療の中止に関する様々なガイドラインの提供
計画:PubMed,EMBASE,EMCARE,ガイドライン開発機関のウェブサイト,オンラインガイドラインリポジトリから一般集団を対象とした心血管疾患予防ガイドラインを系統的に検索した。2009年1月から2019年4月までに発行された高齢者に適用可能なスタチン治療の中止に関する推奨が記載されたすべてのガイドラインを選択した。スタチン治療に関する高齢者向けの他のすべての推奨事項の情報を統合した。
結果:11の国/地域の33のガイドラインを検討したが15(45%)は、高齢者に適用可能なスタチンの中止に関する推奨事項が全く含まれていないため対象から外れた。一般成人を対象とした心血管疾患予防のための18の国際ガイドラインでは,高齢者にも適用可能なスタチン中止の推奨事項が記載されていたが,高齢者を特に対象としたものではなかった。18のガイドラインのうち,16のガイドラインでは高齢者のスタチン治療に関する推奨の記載はあるが,実際にどのように実施するかについての詳細は示されていなかった。18のうち3つのガイドラインには,治療中に機能低下がみられる患者や平均余命が限られている患者など,健康状態が悪い患者に対するスタチン中止の示唆が含まれていた。その条件は平均寿命が短い患者,多臓器疾患を持つ患者,または 併存疾患の増加,虚弱性,機能低下,または 害が利益を上回る場合というフレーズが使用されていた。
結論:現在の国際的な心血管疾患予防ガイドラインでは,健康状態の低下と短命の状況下で高齢者のスタチン中止に関して具体的な指針はほとんど提供されていない。


Table 2. 18の国際的なガイドラインでの高齢者におけるスタチン中に関する推奨


■不耐症

□中止するべき
筋症状(横紋筋融解症含む)
肝毒性
禁忌


□中止を考慮/継続するべきではない
筋症状(横紋筋融解症含む)
スタチン製剤開始後の認知機能障害(可逆性を評価する)

■患者さんの状態
□中止を考慮
・余命が短い
・多並存疾患
・フレイル
・機能低下(身体か認知か)
・害がデメリットを上回る(ポリファや副作用)


Table 3.収録されている18のガイドラインにおける高齢者に対するスタチン治療の一般的な推奨事項

□安全性に関して
・副作用に注意する
・低用量で
・薬物-薬物相互作用を考慮に入れる
・ポリファーマシーを考慮に入れる
・PK_PDを考慮に入れる
・リスクとメリットを考慮に入れる

□健康状態に関して
余命,並存疾患/多並存疾患,QoL,触れる,健康状態,生活習慣の改善によるメリット,コスト,機能の変化.認知機能低下...を考慮する

□Preference and judgmentに関して
患者の好みを考慮に入れる
意思決定の共有
ケアの優先順位を考慮する

□開始/継続に関して

75歳以上の高齢者では許容があれば治療を継続する。
定期的に治療に関して再考する
75歳以上の高齢者、または余命が限られている患者の脂質異常症のスクリーニングは適切ではないかもしれない/中止することが推奨される
二次予防のためには、若年者と同様に高齢者にもスタチン系薬剤による治療が推奨される。