ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC 流し読み】病歴聴取の中断に関して②(Time to Listen More and Talk Less J Gen Intern Med. 2019 Jan;34(1):1-2.)

Eliciting the Patient’s Agenda- Secondary Analysis of Recorded Clinical Encounters
(J Gen Intern Med. 2019 Jan; 34(1): 36–40.)が掲載されたJGIMの号のEditorialです

 

病歴聴取に関してすごく勉強になりました

(中断の意味に関してはTriple Eや効果的な中断...などいろいろ議論はあるのですが...)

電子カルテの存在による影響はどうしても忘れがちなので改めて再認識しました

 

J Gen Intern Med. 2019 Jan;34(1):1-2.
Time to Listen More and Talk Less

1984年にエリオット・ミシュラーは『Discourse of Medicine』という本で患者と医療提供者は臨床の場に異なるストーリーを持ってくると述べ,医療関係者が患者の話を中断して、目の前の患者のより生物医学的な話を優先することがあまりにも多いことを示した。

患者中心の医療者と患者のコミュニケーションの必要性が認識されるようになり,そ多くの効果的なコミュニケーショントレーニングが開発された。臨床場面で患者にとって一番重要なことに取り組むことは患者中心のコミュニケーションで重要であり,議題の共通設定が必要である。

しかしSingh Opsinaらの研究(J Gen Intern Med. 2019 Jan;34(1):36-40.)ではコミュニケーションの改善にはまだ遠く及んでいない。懸念事項を聴取する確率は低く,中断までの時間は平均11sだった(そして以前の報告より7s早かった)

しかし医療従事者の悪意によるものとは考えにくい...何が原因として考えられるか
・臨床現場での仕事の中心は必要に応じて鑑別診断を行い,標準化されたエビデンスに基づいたケアを行うことである
・標準化されたエビデンスに基づいたケアを提供することと個々の患者に合わせた患者中心のケアを提供することの間には軋轢があることがある。この軋轢が,医療提供者は生物学的な課題を調査し,そのために患者の懸念事項の聴取を重視せず,早く段階での中断につながっているのではないだろうか
・Singh Ospinaらの研究ではプライマリケア医より専門医のほうが,懸念事項の引き出しが少なく,中断が早い結果であった。専門医は紹介の理由を詳細にかいた依頼文をうけ,より疾患の焦点をあてるのかもしれない(しかしこれは患者にとっては重要ではないかもしれない)

□システム的な要素も考えられる
→時間のプレッシャー
→高齢化がすすむことによる患者の複雑か
電子カルテの導入(視覚的にも認知的にも患者から離れる*1
インセンティブシステム

・1日の受診数をふやすことに重点を置いているため,医療従事者は短時間で主要なことに対応しなければいけないといプレッシャーを感じている。プライマリケアの平均診察時間は10分程度といわれている(BMJ. 2002;325(7362):472.)
・ある患者に対して必要な予防サービスをすべて提供するには7.4時間いるという研究もある(Am J Public Health. 2003;93(4):635–641.)
・多並存疾患や複雑な患者や高齢者の場合はBPSに対応する必要がありさらに多くの時間を必要とする

・EHRの導入により視覚的にも認知的にも患者から離れる(J Gen Intern Med. 2005;20(8):677–682)
・医療従事者がコンピュータに集中すると、患者の積極的な参加度は低下する。(J Gen Intern Med. 2018;33(4):423–428.)
・EHRの導入より生じた情報過多への対処が必要(過去のDataの確認など),文書化,画面操作や画面表示への対応などもする必要がある

・組織的なインセンティブと金銭的なインセンティブが、患者中心のケアとずれている。
・チェックリスト診療に対する疲労や陰性感情もある
エビデンスに基づいた診療ガイドラインに従おうとすると、医療提供者は常に情報過多と闘わなければならない。
・臨床的に何が最も重要なのか,ましてや患者にとって何が重要なのかを見極めるのに苦労することもある
・Pay for Perfomanceにインセンティブを導入しているところもあるが,他のインセンティブの方がより強力である可能性がある。
チェックボックスにチェックを入れたり,医療システムのルールに従うようにインセンティブを与えると,患者の話を邪魔してしまうのは当然のことである。



・患者中心のコミュニケーションとは,まず患者にとって何が最も重要なのかを理解し,その好みをその後のケアの意思決定に反映させることを目指すものである。このコミュニケーション戦略がうまく行われると,医師患者関係が強化され,最終的には推奨事項へのアドヒアランス向上やケアのアウトカムの改善につながることになる。
・我々は患者さんの話を臨床の場に取り入れられるようにする必要があり、多くの人がそうしたいと考えている。
・医療システムを再構築する必要がある
 


*1:J Gen Intern Med. 2005;20(8):677–682