ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

小脳梗塞の診断エラーに関して(私見こみ)

脳梗塞はシンプルな小脳梗塞,椎骨動脈解離→延髄外側+小脳梗塞,(散発含む)小脳+他の病変にも梗塞があるなど複数パターンが混在するのと,椎骨動脈解離はこれはこれで難しいので...考えれば考えるほどごちゃごちゃになるのですが...


シンプルに
・椎骨動脈解離は痛みなし/ありにこだわらない(ただし65才以上の椎骨動脈解離は稀)
・その人の心血管リスクは評価したのか
・末梢性めまいともし判断するのであればどれくらい所見は合致しているのか
あたりが大事なのかなと思っています
(椎骨動脈解離はまたどこかで時間があれば...ですかね)


■小脳梗塞の見逃される頻度

28%で誤診(J Stroke Cerebrovasc Dis. 2013 Oct;22(7):1125-30.)

■小脳梗塞で見逃されやすい要素は?

60才未満の椎骨動脈解離からの小脳梗塞は見逃されやすい(J Stroke Cerebrovasc Dis. 2013 Oct;22(7):1125-30.
構音障害があると見逃されにくい(J Stroke Cerebrovasc Dis. 2013 Oct;22(7):1125-30.)
神経学的な異常がない(OR 3.5),嘔吐症状(OR 2.3)は見逃しに関連(Cerebrovasc Dis 2016;42:476–484)

最も多い暫定診断は前庭神経炎(Cerebrovasc Dis 2016;42:476–484)

■めまいの神経診察は難しい!!

・見逃しのあった小脳梗塞15例のreview。10/15で神経診察が特異的に記載されていなかった,4/15で神経所見の記載がなかった,1/15で「正常」とかいてあるが何が正常なのか書いていなかった(Acad Emerg Med. 2007 Jan;14(1):63-8.)
・ER医と神経内科医で有意差がつきやすい所見は四肢の失調,眼振,構音障害,体幹失調(Acad Emerg Med. 2007 Jan;14(1):63-8.)
・神経所見の拾い上げはER医より神経内科医のほうが優れていた(Cerebrovasc Dis 2016;42:476–484)
・急性前庭症候群に対して行われる診察HINTSの診察の精度を比較した文献。神経内科医が行うと感度96.7%特異度94.8%,神経内科と救急医を含んだ研究は感度83.3%特異度43.8%(Acad Emerg Med. 2020 Sep;27(9):887-896)


■めまい→CTは...
・CTそのものが有用性が低い
・CTが撮像されて所見が写っていても正確に解釈されていないことはよくある


24/32がCTのみ撮像されていた。3/32(13%)で目眩に対して行われたCT上で病変があったが,2/3は陳旧性脳梗塞と診断され,1/3は特にコメントなかった。そしてめまい症状が増悪してもフォローアップのCTやMRIは行われていなかった(J Stroke Cerebrovasc Dis. 2013 Oct;22(7):1125-30)

15例の診断エラーのレビュー。9/15で頭部CTが撮像されていたが正常と読まれた(1/9で所見があった)。(Acad Emerg Med. 2007 Jan;14(1):63-8.)

ERでの頭部CTの診断率は2.2%と極めて低く有用性は低い(Emerg Radiol. 2013 Jan;20(1):45-9.)


■小脳梗塞の診断のピットフォール(Acad Emerg Med. 2007 Jan;14(1):63-8.)

■Clinical examination
1.血管リスクがない若年患者が脳卒中を起こしうることを認識していない
2.小脳梗塞の症状提示のスペクトラムを理解していない
a.嘔吐が主訴の場合に想起できない
3.神経学的所見を正しく実行し正しく解釈できない,特に歩行と眼振
4.以前の状態や基礎疾患に対する過固定
■Related diagnostic testing
1.画像検査を行なっていない
2.画像検査の限界を認識していない(特にCT,稀にMRI)
3.血管病変のための検査をしなかった
■診断やDispositionに関して
1.臨床データーを説明できる特定の疾患にたどり着かない
2.曖昧な場合に院内での経過観察を考慮しない
3.難しい症例で神経内科コンサルトができない
 


※あくまで私見です

自分がやることは非常に少ないですが「めまいに対してCTを撮像して異常なければ帰宅」というプラクティスはよくみます。めまいに対して「CTを撮像する」ということは「中枢性のめまいを疑っている」という意味だと思うので,CTが陰性であれば帰宅ではなく次のとるべきアクションになるのでは?、とかそもそもCTを撮像するまえにもっと色々詰めたほうがマネージメントは明確でやりやすいので?とか思ってます。
(起立性低血圧の人に頭部画像がとられていることも!?)

脳梗塞の見逃しはきっとみんな経験があって悔しい思いをしているはずです。HINTSが難しい/自信がないというのもわかります(自分もよく迷います)。
ですが過剰検査に走れば見逃さないというわけでもないですし(MRIは後頭蓋病変には精度が下がります),過剰なMRI乱打は技師さんふくめ医療従事者の負担にもなります。
日々のプラクティスをしっかりつめる/振り返る,(Commonな疾患の勉強をしっかりする)のが一番大事なのかなというのが自分の私見です。