ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】フレイルの表現型基準すべて該当するとPoint of no returnかも?(J Am Geriatr Soc. 2021 Apr;69(4):908-915)

フレイルの表現型基準すべて該当するとPoint of no returnかも?(J Am Geriatr Soc. 2021 Apr;69(4):908-915)

個人的には激熱論文でした。フレイルは表現型モデルのほうが臨床的には使いやすいです。3-4個であればリターンできる可能性があり,5個すべて該当にならないように早期発見早期介入を心がける。

 

なお、フレイルの基準は主に2パターンあり,今回の基準は表現型モデルをつかった論文になります。

フレイル(表現型モデル):J-CHSの5個のうち3個該当でフレイル

フレイル(蓄積型モデル):数十個の項目をどれくらい満たすかで判断する(個数が多い分妥当性があがるけど手間が...)

 

※フレイルには興味あるけどJ-CHSって何?って人はこちらを

日本版CHS基準(J-CHS)(Geriatr Gerontol Int. 2020 Oct;20(10):992-993.)

1.6ヶ月で2kg以上の意図しない体重減少

2.握力 男性<28kg 女性<18kg

3.2wほど特に理由なく倦怠感を感じる

4.歩行速度が1m/s未満

5.身体活動(両方とも×)

→健康を目的とした中程度の運動やスポーツをしているか?

→健康を目的とした軽い運動をしているか?

※3個以上該当でフレイルの基準

 

 

 

Progression of Physical Frailty and the Risk of All‐Cause Mortality: Is There a Point of No Return?
J Am Geriatr Soc. 2021 Apr;69(4):908-915.

目的:フレイルの進行の中でPoint of no returnがあるかどうかを調査する
デザイン:縦断的な観察研究
設定:地域社会や非介護の施設
参加者:2011年で健康だった高齢者を2018年にかけて全死亡を追跡調査した
測定方法:フレイルは表現型( physical frailty phenotype)で測定した。Coxモデルを用いて、各時点でのフレイル基準(0~5)の数およびその蓄積パターンと全死亡率との関係を調べた。マルコフ状態遷移モデルを用いて、フレイル発症(n=373)のフレイルになってからの健康状態(フレイル,回復,死亡)の年間遷移を調べた。
結果:フレイル基準の数の増加と死亡リスクの増加との間には非線形の関連があり、5つの基準をすべて満たすと顕著なリスクの増加が見られた(HR 32.6)。さらに、5つの基準を持つ人は、3つまたは4つの基準を持つ人に比べて、1年後の死亡リスクが3倍になり、回復(健常またはプレフレイルに戻る)の可能性が半分になりました。フレイルの発症自体が死亡リスク50%と関連していた(HR 1.51)。
結論:フレイル基準の数と蓄積の両方が死亡リスクと関連していた。No returnを決めるには十分な証拠がなかったが5つの基準をすべて満たすことがPoint of no returnの始まりを意味する。虚弱度の進行を継続的に監視することは、介入のタイミングや治療から緩和ケアへの最終的な移行に関して、臨床的および個人的な意思決定に役立つと考えられる。