ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】ALS関連で,診断遅延を短くするには?(Neurol Res Int. 2020 May 11;2020:1473981.)

前回にひきつづきALS関連で,診断遅延を短くするには?(Neurol Res Int. 2020 May 11;2020:1473981.)の内容です。

ALSの症状4パターンの把握とRed flag「進行性の構音/嚥下障害」「(特に左右非対称性の)進行性の局所の筋萎縮」 の早期認知がやはり鍵なのと、経過の確認+全体俯瞰してみる、が大事なのかなと思いました。あとはSplit hand,線維束性筋収縮,こむら返り,体重減少あたりもclueかなと。

 

Minimizing the Diagnostic Delay in Amyotrophic Lateral Sclerosis: The Role of Nonneurologist Practitioners
Neurol Res Int. 2020 May 11;2020:1473981.

症状:進行性の構音/嚥下障害+局所の筋萎縮(+反射亢進)
所見:筋線維束性攣縮+体重減少+筋痙攣/こむら返り

□その他のメモ
・ALSで最も多いのは非対称性の筋力低下(80%),次に構音障害や嚥下障害などの球症状(20%)。1-3%は呼吸症状,1-9%は球麻痺+四肢の麻痺,首下がりや体幹の筋力低下などの軸性症状,筋萎縮+体重減少,筋痙攣,筋線維束性攣縮

・ALSの症状は4パターン
→球症状(構音障害,嚥下障害...)
→軸性の症状(障害部位による)
→肢の症状(障害部位による)
→呼吸症状

上肢:Split handはALSでよくみられる萎縮パターン
下肢:足の背屈低下(drop foot/下垂足)から始まることが多い
上位運動ニューロン.下部運動ニューロンの症状は個人差が大きい

上位運動ニューロンの症状の例
・筋力低下色々(器用さ低下...etc)
・不適切な笑い,泣き,あくび(早期症状でありえる)
喉頭痙攣/咽頭圧迫感
・開口障害,くいしばり
体幹硬直,平衡障害

下位運動ニューロンの症状の例
・筋萎縮や筋線維束性攣縮,筋痙攣が特徴
・筋力低下症状は色々(器用さ低下...etc)
・顔面部の筋力低下によるよだれや咀嚼困難
体幹部の筋力低下による首下がり,腹部膨隆


進行パターン
・片側性上肢発症のあと60-70%は対側の上肢→同側の下肢→対側の下肢→球
・片側性下肢発症のあと60-70%は対側の下肢→同側の上肢→対側の上肢→球
・球症状→片方の上肢→もう片方の上肢


※ここではALSplusやPD系は省略
※ALSにおいて疼痛は15-85%に生じる

 

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※追記

線維束性筋収縮(Fasciculation)の鑑別が気になる人は是非こちらを!!

線維束性筋収縮(Fasciculation)の鑑別は? - ある病院総合診療医の備忘録+α