ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】救急外来における甲状腺機能疾患とエラー(Am J Emerg Med. 2010 Oct;28(8):866-70)

救急外来で甲状腺機能低下症が診断されるのは21%という報告

入院症例が対象の研究なので、全体で考えると...もっと違うのかもしれません。呼吸苦や胸部締め付け感で救急外来受診となると,どうしてもKiller diseaseの除外の優先度が高くなりますし...そもそも甲状腺機能低下でこのへんの症状がおきるのはしりませんでした。

 

甲状腺機能低下症の人が冬に救急外来を受診することが多い、というのは知りませんでした。


Diagnosis of unrecognized primary overt hypothyroidism in the ED
Am J Emerg Med. 2010 Oct;28(8):866-70

・あからさまな甲状腺機能低下症の有病率は 一般内科入院患者では約1%だが,救急外来で入院した人の中では0.1%と頻度がさらに下がる
甲状腺機能低下症は救急外来で遭遇するGreat mimicker
甲状腺機能障害の半数近くの人が適切に診断されていない
・救急外来で甲状腺疾患のスクリーニングを行うことは推奨されない

などなどの背景があるならで救急外来において甲状腺機能低下症がどれくらい診断されているかを調べた台湾の研究

・54576のEDからの入院で甲状腺異能低下症が新規に診断されたのは0.1%
・年齢の中央値は75.8±12.8(27-98才),男性59%
・30%は冬に受診していた
・症状は倦怠感(50%),呼吸苦(45%),胸部しめつけ感(20%)が多い。心血管系や神経精神系の訴えで救急外来にきやすい。
・所見は浮腫(32%),徐脈(32%),胸水や心囊液(29%)が多い
・TSHの中央値は71.2(四分位 32.7-108.4)
・34%の患者でCK上昇があった
甲状腺機能低下症の原因は原因不明が36%,その他は薬剤性(アミオダロン,リチウム,IFNα),橋本病,手術や放射線照射歴が多い
・EDで診断できたのは21%,79%は入院後に診断された
・粘液水腫昏睡は半数がEDで見逃された
・診断までの時間は中央値で3d(0-7d)
・初期診断で多いのは心不全,不明,電解質異常,感染症など