■食後低血圧 Postprandial hypotension に関して
■病態や疫学など
・食後低血圧の病態は十分にはわかっていない。脾臓の血液貯留に対する交感神経の補正の不十分,圧反射低下,食後の心拍出増加不十分,末梢血管収縮,インスリンによる血管拡張,消化管ペプチドによる血管拡張...いろいろ考えられている(J Frailty Aging. 2018;7(1):28-33.)
・食後低血圧は失神,転倒,心血管疾患,脳卒中などとの関連が示唆されている(Am J Med. 2010 Mar;123(3):281.e1-6.J Frailty Aging. 2018;7(1):28-33.)
・死亡の独立した危険因子の指摘もある(J Frailty Aging. 2018;7(1):28-33.)
・施設に入所している高齢者では24〜36%(J Am Geriatr Soc 1994;42:930–2,Ann Intern Med 1991;115:865–70)
・入院中の高齢者では67%(J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2005;60:1271-7)
■食後低血圧のリスク(Am J Med. 2010 Mar;123(3):281.e1-6.Clin Auton Res. 2017;27(4):263. Epub 2017 Jun 24.)
薬:利尿剤,ポリファーマシー
食事:炭水化物豊富,朝食,温かい食事
併存疾患:糖尿病,自律神経障害,パーキンソン病,高血圧,慢性腎不全,アルツハイマー型認知症
薬の中では特に利尿剤がリスクという報告もある
システマティックレビュー&メタアナでは神経疾患患者は健常対照者に比べて食後高血圧の頻度が有意に高いことが明い(OR 5.23)。パーキンソン病(OR 3.49) MSA(OR 89.55) アルツハイマー型認知症(OR 6.61) 糖尿病性神経障害(OR 4.83)(Clin Auton Res. 2017;27(4):263. Epub 2017 Jun 24.)
■食後低血圧の診断
・食後の血圧の最大の低下は食後30分から1時間以内におこる
・食後2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下ないし90-100mmHgに低下した場合に定義されている。標準的なPPH診断法は、食前に1回、食後120分間は15分ごとに1回、計9回の測定を行います(Ann Intern Med. 1995;122:286-95)
※シンプルな方法として食前のBP測定値と食後75分後のBP測定値との間でSBPが少なくとも10mmHg減少する、で感度82%特異度91%という研究もある(J Frailty Aging. 2018;7(1):28-33.)
■食後低血圧の治療
・試されているのは下記(Am J Med. 2010 Mar;123(3):281.e1-6)
カフェインは60-200mg
α-GI/アカルボース 100mg
グアーガム 4mg
オクトレオチド 50μg
・いくつかの薬剤が食後低血圧の患者の血圧を改善することが示されているが、症状に対する効果は十分に評価されていない。症状がある人対象でアカルボースで改善あり,カフェインで改善なしの報告もある(J Am Geriatr Soc. 2014 Apr;62(4):649-61. Epub 2014 Mar 17)
●失神や転倒の原因で食後低血圧を診た場合
・可能な範囲で診断を詰める(食前と食後75分の血圧測定が効率がよいかも)
・食事に関してのアドバイスをする(大食い避ける,飲酒避ける,炭水化物割合減らす,食事と一緒に水を飲む)
・介入可能なリスクがあれば介入を(利尿剤やポリファーマシー)