ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】低用量アスピリンの一次予防のエビデンス

DraftですがUSPSTFの低用量アスピリンに関しての勧告が発表されました

引き続き一次予防に使うことはあまりない、という方向でよさそうです。

(日本の研究でもその方向性かなと思っています)

 

https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/draft-recommendation/aspirin-use-to-prevent-cardiovascular-disease-preventive-medication

USPSTFの低用量アスピリンに関しての勧告(Draft)

40-59歳で10年後の心血管リスクが10%以上の人に一次予防目的の低用量アスピリンを開始するべきかは個人の判断となる。アスピリンのメリットは少ない。出血リスクが高くなく,毎日内服できる人であれば恩恵を受ける可能性が高い。(Grade C)

60歳以上の高齢者では心血管イベントの一次予防に低用量アスピリンを開始するのは推奨されない(Grade D)

 

□日本人での低用量アスピリンエビデンスは?

 

Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus: 10-Year Follow-Up of a Randomized Controlled Trial
Circulation. 2017 Feb 14;135(7):659-670.

JPAD試験
P:心血管疾患の既往のない2型糖尿病患者2539名を対象
E:アスピリン 81-100mg/d
C:アスピリンなし
O:突然死,冠動脈疾患,脳卒中,PAD(複合アウトカム)

10年間のフォローアップの研究結果。ITT解析も含め低用量アスピリンは心血管イベントの減少に寄与しなかった。消化管出血はアスピリン群で有意に多く(2% vs 0.9%,P=0.03)で脳出血の発生は有意差がなかった


Low-dose aspirin for primary prevention of cardiovascular events in Japanese patients 60 years or older with atherosclerotic risk factors: a randomized clinical trial
JAMA. 2014 Dec 17;312(23):2510-20.

P:高血圧,脂質異常症,糖尿病のどれかを有する60~85歳の患者
E:アスピリン 100mg/d
C:アスピリンなし
O:心血管死亡,非致死性脳卒中,非致死性心筋梗塞(複合アウトカム)

フォローアップ期間の中央値は5年。低用量アスピリンの1日1回投与は複合転帰を有意に減少させなかった(非致死性心筋梗塞TIAの減少あり)。輸血や入院が必要な頭蓋外出血が有意に増加した。

 

ということで日本人において低用量アスピリンによる一次予防はあまり推奨できないと思っています。