ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】施設の食事介入で高齢者の骨折,転倒のリスク減少(BMJ. 2021 Oct 20;375:n2364.)

前提の「VitDが充足している」の詳細がみつけられなかったのですが...栄養介入(乳製品を中心としたCaと1g/kg/d目標の蛋白補充強化)のみで骨折や転倒が減る,しかも女性も男性も!!ということで個人的にはすごい研究かなと

・高齢者の骨折リスクをへらすための栄養学的なアプローチの有効性と安全性を示した研究はない
・Ca摂取がすくなくVitD欠乏している施設入居者の高齢女性にたいして両者の補充が有用(N Engl J Med1992;327:1637-42)
・筋力改善のエビデンスはあるが骨折リスク減少に関するタンパク補充の効果の研究はあまりない(J Am Geriatr Soc2012;60:691-9)

ということで施設対象で行われたクラスターRCT

Effect of dietary sources of calcium and protein on hip fractures and falls in older adults in residential care: cluster randomised controlled trial
BMJ. 2021 Oct 20;375:n2364.

VitDは充足しているがCaの摂取が600mg/d未満,蛋白摂取が1g/kg/d未満ので歩行可能な高齢者

デザイン:2年間のクラスターRCT
設定:60の高齢者の施設
参加者:7195人(68%が女性,平均年齢86歳)
介入:30の施設はCa 1142mg/d,蛋白 69g/d摂取するように決定された
コントロール:30の施設はそのまま。Ca 700mg/d,蛋白 58g/d摂取
主要評価項目:骨折,転倒,全死亡のグループ差
結果:27の介入群と29のコントロール群が分析された。介入により全骨折が33%(121 vs 203),股関節骨折が46%(42 vs 93),転倒が11%(1879 vs 2423)減少した。転倒のリスク減少は3ヶ月後,股関節骨折のリスク減少は5ヶ月後から有意になった。死亡率はかわらず。
結論:乳製品を利用してCaと蛋白の摂取を改善すると高齢者の施設入居者における転倒や骨折のリスクを減らせる