ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】入院中の血圧高値に関して②(Curr Cardiol Rep. 2015 Nov;17(11):94)

入院中に生じた血圧高値に対して,(アムロジピンなど)半減期が長い薬の効果判定はゆっくりやらないと過剰投薬/降圧のリスクがあること,入院中に無理に薬剤介入しないまでも生活や食事のお話をして退院時にプライマリ・ケア医につなげること,を意識しておくは大事だなと思っています
(文献は抜粋/一部改変しての紹介になりますが御容赦ください)

An Update on Inpatient Hypertension Management
Curr Cardiol Rep. 2015 Nov;17(11):94


入院中に観察される血圧上昇のほとんどは緊急性がない
入院患者の高血圧は文献ではあまり取り上げられておらず, ケアのアプローチはしばしば一貫していない
そもそも高血圧のガイドラインを入院患者に適応してよいかは不明
緊急性のない高血圧は入院患者において過剰診断,過剰治療されているといわれている


外来設定と違うし,病院で使うモニターが最適かというとそうではない
入院中だと騒音,疼痛,嘔気,不安...血圧を変化させる要因が多く有る
入院前に存在していた高血圧が入院を契機に発見されることもある
入院中の血圧高値が高血圧症かどうかの判断は困難


静注による過剰治療や有害事象に関しては省略...
このレビューではDr.call基準のカットオフを200/120の高目に設定することを推奨している

□血圧上昇の対応フロー(Fig1より)

臓器障害があるか
症状による血圧上昇か?(不安,疼痛,嘔気...)
離脱症状ではないか?(アルコール,BZO,違法薬物)
体液量は適切か?(過剰体液ではなく血管内脱水であがる人もいる)
薬剤性は?(NSAIDs,血管収縮薬,リタリンなどの刺激薬,経口避妊薬,カルシニューリン拮抗薬,VEGF拮抗薬,チロシンキナーゼ阻害,漢方...)
もともとの薬剤を中止していないか?


緊急性がなければ血圧上昇の要因を考慮するべきである
不安,疼痛,嘔気などの急性期症状,離脱,新規薬剤,体液量の評価を行う
もともと高血圧があり入院に際して内服が止まっている人であれば安全に再開できることが多い

誘引がなかったり原因に対応しても血圧上昇が持続するのであれば治療を開始することも有るが,長時間作用型の薬剤は定常濃度に達するまでに数日から数週間かかることを考慮し過剰治療にならないように注意しなくてはいけない
 

院内の血圧上昇のほとんどは無症状で緊急の対応を必要としないことが多い
しかし,診断されていない高血圧症が隠れていることもあり,退院後のフォローアップケア改善の機会とするという意見もある(J Hosp Med. 2011;6(7):417–22.)。その際にはかかりつけ医とのコミュニケーションはしっかりとること。


◯まとめ

入院中の高血圧は頻度が多いが疾患像は無症状から緊急性のあるものまでさまざま
血圧が上昇している要因を特定して対応するの望ましい
過小診断にも過剰診断にも注意が必要
血圧高値が持続するのであれば個々の患者に応じて対応し,退院後のフォローアップにつなげるのが望ましい