ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】H.pylori血清検査の意義は?(J Hosp Med. 2021 Jul 21. doi: 10.12788/jhm.3638.)

JHMの「Things We Do for No Reason™」(TWDNR)シリーズより
H.pyloriの血清検査の意義は? の抜粋です

内視鏡検査の適応がある人は生検で診断を
内視鏡検査の適応がない人では便中抗原か尿素呼気試験を(血清検査は使用しない)
・便中抗原か尿素呼気試験をする場合は4wはPPI,抗菌薬,ビスマスを中止する。制酸薬の使用が必要な場合はH2を

・除菌は治療4w後に全ての症例で生検,尿素呼気,または便潜血抗原検査を確認すること。

わかっていない部分もあり勉強になりました😊

Things We Do For No Reason™: Serum Serologic Helicobacter pylori Testing
J Hosp Med. 2021 Jul 21. doi: 10.12788/jhm.3638.

BACKGROUND

H pylori感染は上部消化管症状を引き起こし消化性潰瘍疾患や胃癌,その他一部の疾患の原因になる。H pylori感染が診断された場合、現在の米国消化器病学会のガイドラインでは除菌が推奨されている

検査には様々な方法があり侵襲的な検査では内視鏡検査,非侵襲的な検査では血清検査(抗体),鞭虫抗原検査,尿素呼気試験がある。2010年-2012年の米国の調査では70%の人の初回検査が血清検査だった

WHY YOU MIGHT THINK SEROLOGIC H PYLORI TESTING IS HELPFUL

血清検査のメリット
・採取が簡単
PPI,抗菌薬,ビスマスの影響をうけない(これらは便中抗原や尿素呼気試験の感度を下げる)

WHY SEROLOGIC TESTING FOR H PYLORI IS NOT HELPFUL

ピロリ菌の問題

1.他の非侵襲的な検査に比べて感度が低いこと。
2.現在の感染や過去の感染か区別できない
3.(米国では)認可されていない検査が使われている(IgA および IgM 検査など)


血清検査の感度は76-84%
便中抗原検査の感度は93%
尿素呼気試験の感度は96%

よくある誤解に「除菌療法をうけたことがない人の血清検査が陽性であれば現在の感染を示唆する」というものがあるが,小児でも大人でも自然に除菌したり再感染したりすることがあるので血清検査による活動性の評価は困難


WHEN MIGHT SEROLOGIC H PYLORI TESTING BE HELPFUL?

消化管出血で入院した人など検査前確率が高く,PPIの使用を中止できない人であれば血清検査が陽性であれば治療を開始するべきである
(ただし検査前確率が高いため感度の高くない血清検査が陰性でもピロリ感染は除外できない)

検査前確率が低く内視鏡の適応にならない人(消化不良や不快感など)であれば血清検査の前に便中抗原や尿素呼気試験を行うべきである

WHAT YOU SHOULD DO INSTEAD

警告症状があり内視鏡検査の適応がある人は内視鏡検査で診断する
検査前確率が低く内視鏡の適応にならない人(消化不良や不快感など)であれば血清検査の前に便中抗原や尿素呼気試験を行うべきである(血清学的検査は避けるべき)

便中抗原または尿素呼気試験抗菌薬,ビスマス,PPIを4週間中止した後にのみ実施する。制酸薬が必要な人はPPIのかわりにH2blockerを使う。
除菌の効果判定は治療終了してから4w後に尿素呼気試験か便中抗原検査で確認する


※TWNDRは明確な結論や臨床実践の基準を示すものではありません。興味ある人は是非論文を読んでみてください!!