ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】VitDが高いと転倒に伴う入院が減る可能性がある(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3114-3123.)

VitDの濃度が高いことのPositiveな効果(転倒による入院が減る)を検証した14-15年の研究。ベースラインの血中濃度測定もされていて待望の長期研究、ということで個人的には胸熱な研究です😊
 
ビタミンDに関しては何回か取り上げさせてもらっているのですが...今回はJAGSより(待望の!!)長期予後を調べた研究!!ということで色々背景要素を長く語ります。


・VitD補充は筋力,バランス,機能など転倒に関連する因子に良い影響を与える(J Am Geriatr Soc. 2010;58(11):2063-2068.J Am Geriatr Soc. 2011;59(12):2291-2300.)
・VitD不足は転倒のリスクの懸念があり,補充により転倒が減ることが示されている(J Am Geriatr Soc. 2010;58(11):2063-2068.)
アメリカ老年学会のガイドラインではVitD不足リスクがある人には補充を推奨している(J Am Geriatr Soc. 2014;62(1):147-152.)
・米国医学研究所では25(OH)VitDが20ng/mlであれば人口の97.5%が転倒や骨折などの骨格に関わる有害な結果から保護されるとしている
・国際的なガイドラインでも30ng/ml以上にすることを推奨している(J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(7):1911-1930.Osteoporos Int. 2010;21(7):1151-1154.)

とこれだけVitD補充に関しては推奨されているのですが...

しかしっ!!
主なメタ解析ではよい結果が出せないという結果に・・
(JAMA. 2017;318(17):1687-1699.J Am Geriatr Soc. 2010;58(7):1299-1310.J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(10):2997-3006.Lancet Diabetes Endocrinol. 2018;6:847-858)

これらは
・介入の用量,頻度,対象の人などがバラバラ
・Outcomeが自己申告の転倒だったり,フォローアップ期間が短い
などが原因ではないかと言われていた(VitD補充は不足の程度が高いほど効果があるとも言われています。 J Clin Endocrinol Metab 2007; 92:2058)
 
ということで
 
・ベースラインのVitDは全例測定
・客観的な指標(転倒による入院)で判断
・長期フォロー
 
行われた前向きコホート研究

Association between vitamin D status and long-term falls-related hospitalization risk in older women
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3114-3123.

Key Point

・25(OH)VitDの値が高いほど身体機能の向上と関連していた
・25(OH)VitDの低下に伴い転倒リスクの上昇が認められた
・25(OH)VitDが75nmol/L(日本でよく使われる単位だと30ng/mL)以上を維持すると長期的な転倒にともなう障害リスク低減に役立つ可能性がある

Abstract

背景:ビタミンDの状態と高齢女性の入院を要する重大な転倒のリスクとの用量反応関係は不明である。14.5年間にわたる高齢女性の大規模コホートにおいて転倒関連入院との関連を検討した。
方法:70歳以上のオーストラリア女性 1348人 を対象にベースライン(1998年)の25(OH)VitDの濃度,握力,TUGを評価,転倒に関する入院のデーターをフォロー
結果:25(OH)VitDの中央値は66.9±28.2nmo/l(約 27±11 ng/ml)。低値/Low(50nmol/L=20ng/ml未満) 384人(28.5%),中値/Middle(50-75nmol/L=20-30ng/ml未満) 491(36.4%),高値/High(75nmol/L=30ng/ml以上) 473(35.1%),に分類された。多変量解析ではHigh群はLow群と比較して転倒関連入院が低かった(HR 0.76 95%CI 0.61-95)。25(OH)VitDの濃度低下に伴い転倒関連入院のリスクが上昇し,濃度が高いほどTUGの値がよかった。TUGを多変量調整に含めても転倒外傷との結果は変わらなかった(HR 0.76 95%CI 0.60-0.95)

結論:オーストラリアの高齢女性では25(OH)VitDを75nmol/L(30ng/ml)以上に維持することは筋機能維持に有用であり,入院を必要とする転倒を予防できる可能性がある。この関連は25(OH)VitDが高い女性にみられる身体機能の向上とは無関係である。

※nmol/L ng/ml 換算/2.5nmo/l = 1ng/ml)
 
という結果でした
個人的には「転倒による入院」以外のOutcomeもあれば...とは思いますし、VitDが高い=良い、にかんしては鳥と卵etcで色々難しいと思っています。
ですが、待望の長期フォローのPositive研究ということで胸熱でした😊