ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】在宅設定においてアルツハイマー型認知症患者の鎮痛管理は不十分?(J Am Geriatr Soc. 2021 Dec;69(12):3545-3556)

高齢者や認知症患者での疼痛管理の不十分さはGeriatricでの問題の1つです

在宅設定での検証と鎮痛による機能改善を証明した研究になります

 

Pain treatment and functional improvement in home health care: Relationship with dementia
J Am Geriatr Soc. 2021 Dec;69(12):3545-3556

Key Points
・疼痛を有する在宅医療患者において、認知症は鎮痛薬使用の可能性が低いことと関連していた。
・鎮痛剤の使用は、より多くの機能的改善と関連していた。


Background

アルツハイマー認知症(AD)の36-70%の人が急性期ないし急性期後の治療で疼痛を経験していると言われている
・疼痛を適切に治療しないとADに関連した精神神経症状(興奮,焦燥,抑うつなど)を悪化させ,認知機能や身体機能低下,QoL低下,再入院や死亡につながる
・ADの患者は認知機能正常な人に比べて痛みを自己申告する可能性が低いため,痛みが十分に認識されず,臨床医も疼痛の評価が難しいと感じている
・在宅ケア設定でも急性期後の状況で疼痛の評価の治療の適切性を研究する必要性が示されている
・AD患者の在宅ケア設定における疼痛治療の程度や、疼痛治療がこれらの患者の機能的転帰に与える影響を調査した研究はない

ということで行われた研究

背景:疼痛管理は急性期後の機能回復に重要であるが,AD関連認知症の高齢者は疼痛に対する治療が不十分であることが多い。①日常的に疼痛があるアルツハイマー関連疾患と鎮痛薬の使用の関係②アルツハイマー認知症の有無にかかわらず鎮痛薬が機能に与える影響,の調査を目的とした
方法:6048人を対象とした縦断的データの分析。
結果:アルツハイマー認知症は全ての鎮痛薬(OR 0.66),オピオイド(OR 0.54)の使用の低下と関連していた。非オピオイドの使用は関連がなかった(OR 0.94)。鎮痛薬の使用,非オピオイドの使用はADLの改善と関連していたが,オピオイドの使用はADLの改善と関連がなかった。
結論:アルツハイマー認知症は在宅ケア設定において鎮痛に対する治療が不十分な可能性があるが,疼痛管理は機能改善に不可欠である。臨床医と政策立案者は機能を改善するためにアルツハイマー認知症をもつ高齢者における適切な疼痛管理を確実に行うべきである。