ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】骨粗鬆症の治療は予後12.4ヶ月あれば考慮(JAMA Intern Med. 2021 Nov 22;e216745.)

骨粗鬆症に対するBP製剤の効果はすぐにはでないので...どれくらいの予後があれば骨粗鬆症の治療を開始するか...という問題があります

Individualizing Prevention for Older Adults(J Am Geriatr Soc. 2018 Feb;66(2):229-234.)
の文献では

70歳以上の女性 8ヶ月
70歳未満の女性 19ヶ月

というようにいわれていました。
RCTのメタアナリシスでさらにそれを詳しく検証した研究が発表されました。


Time to Benefit of Bisphosphonate Therapy for the Prevention of Fractures Among Postmenopausal Women With Osteoporosis: A Meta-analysis of Randomized Clinical Trials
JAMA Intern Med. 2021 Nov 22;e216745.

骨粗鬆症の治療は予後12mあれば考慮というRCTのメタアナリシス
骨粗鬆症がある閉経後女性23384人を対象とした10の無作為化臨床試験のメタ分析ではビスフォスフォネート(BP)製剤による治療を受けた女性100人あたり1件の非椎体骨折を避けるために12.4ヶ月が必要であった。BP製剤の治療は予後12.4ヶ月以上の閉経後女性骨粗鬆症の患者に有効であるという結果。

BP製剤の短期的な有害事象や負担(GERDや筋骨格系の疼痛)と骨折の可能性を下げる長期的なメリットのバランスをとる必要がある。
骨粗鬆症の閉経後女性において非椎体骨折やその他の骨折予防におけるBP製剤のメリット,絶対的リスク減少(ARR:absolute risk reduction),骨折予防効果がでるまでの時間(TTB:time to benefit)を評価を目的としたメタアナリシス。

椎体骨折または骨密度Tスコア-2.5以下で骨粗鬆症と診断された閉経後女性を対象としたRCTが選択されました。第一選択薬で推奨されているアレンドロネート,リセドロネート,ゾレドロン酸を使用された研究を中心に選択。骨折までの時間に関するデータが不足しているものは除外した。
主要アウトカムは最初の非椎体骨折が3種類のARR閾値(0.002,0.005,0.010)までの時間であった。

10のRCT,23384人が解析対象。年齢は63(7)-74(3),フォローアップ期間は12-48ヶ月。
BP製剤による治療をうけた閉経後女性100人(ARR 0.01)あたり1件の非椎体骨折を回避するために12.4ヶ月必要であることが示された。200人のうち股関節骨折1つ防ぐ(ARR 0.005)には20.3ヶ月必要。200人のうち臨床的な椎体骨折を1つ防ぐ(ARR 0.005)には12.1ヶ月必要。
 
異質性は低く有意差はなし。
研究のLimitationは
1.研究によって投与Regimenが違う
2.元のRCTに含まれない集団には一般化できない(男性,初回股関節骨折の閉経後女性,多併存疾患)
3.骨折の軽減と予防のためのビスフォスフォネート療法の潜在的な利益を評価するもので,短期的または長期的な害を直接推定するものではない。(非定型大腿骨骨折のリスクなど)
4.バイアスのリスクが低い研究のみの感度分析では非椎体骨折のTTBにおけるAPR0.010 は17.7ヶ月だった。

ということでした