ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】BP製剤の使用と難聴リスクは関連なし(J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3103-3113)

そもそも背景で骨粗鬆症と難聴の関連などなど知らなかったので勉強になりました

 

Osteoporosis, bisphosphonate use, and risk of moderate or worse hearing loss in women
J Am Geriatr Soc. 2021 Nov;69(11):3103-3113

 

難聴は米国で3番目に多い慢性疾患
ADLの障害,QoLの低下うつ,認知機能低下に関連
ほとんどが加齢による難聴で不可逆的なもの

 

動物実験では骨のホメオスタシスに関わる経路が、蝸牛の感音性の完全性と聴覚にも重要であることが示唆されている(Neurobiol Dis. 2013;56:25-33.)

ヒトを対象としたいくつかの横断的研究では、難聴者の骨密度が低く、骨粗鬆症の有病率が高いことがわかっていますが、知見には一貫性がなく、縦断的なデータも不足してる(Otol Neurotol. 2018;39:e752-e756. Am J Otolaryngol. 2018;39:271-276.)

ビスフォスフォネートは骨粗鬆症の治療薬であり聴覚に及ぼす潜在的なメリットが示唆されている(Ther Adv Chronic Dis. 2010;1:115-128)
ヒトの耳硬化症患者において、第3世代のビスフォスフォネートを投与すると感音性難聴が安定または改善した(Otolaryngol Head Neck Surg. 1993;109:461-467)

 

骨粗鬆症と難聴の関連性やビスフォスフォネートの使用が難聴のリスクに影響するかどうかはわかっていない...ということでの本研究

 

デザイン:縦断的コホート研究(30-60台の女性をフォロー),多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて関連性を調査
測定:骨密度,BP製剤の使用,椎体骨折,股関節骨折,聴力に関する情報(質問表,サブコホートでは聴力測定)
結果:骨粗鬆症ないし低骨密度の人は中等度以上の難聴のリスクだった(多変量調整相対リスク 1.14-1.30)。BP製剤の使用でリスクに変化はなかった。椎体骨折は難聴リスク上昇と関連(多変量調整相対リスク 1.31-1.39)があったが股関節骨折は関連はなかった。聴力検査を行った群ではBP製剤を使用した人のほうが聴覚は悪かった(2-4db程度/Hzによりけり)
結論:骨粗鬆症や低骨密度は加齢に伴う難聴の原因の可能性がある。骨粗鬆症に対するBPの使用は難聴のリスクと関連がない。