ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】高齢者の進行癌の人に対するCGA(高齢者総合機能評価)で副作用や転倒が改善(Lancet. 2021 Nov 20;398(10314):1894-1904.)

UpToDateの「What's new in geriatrics」より抜粋②

高齢者の進行癌でCGA(高齢者総合機能評価)で1つ以上該当しそうな人に、CGAを行うと化学療法の副作用低減だけでなく転倒やポリファも改善する、という多施設クラスターRCT

CGA!!CGA!!CGA!!

 

Evaluation of geriatric assessment and management on the toxic effects of cancer treatment (GAP70+): a cluster-randomised study
Lancet. 2021 Nov 20;398(10314):1894-1904.


老年医学的な評価(CGA)では加齢に関連する領域(機能,認知,合併症など)を評価するために様々な尺度を用いて評価する

老年医学的評価により化学療法の副作用のリスクが高い高齢者を特定できることが示された過去の研究に基づき,様々な学会において腫瘍内科のケアに老年医学的な評価/CGAを臨床のケアに組み込むことを推奨している(J Clin Oncol 2018; 36: 2326–47.)

コミュニケーションの向上,患者および介護者の満足度の改善を示した研究があるにもかかわらず,老年医学評価および老年医学評価に基づいたマネージメントはまだ一般化されておらず,また悪性腫瘍に関連した転機に関する有益性を示すデーターも少ない...という背景からの研究


患者:70歳以上の難治性固形癌ないしリンパ腫で新規に治療Regimenを開始し,CGAで1つ以上は障害のある患者
デザイン:米国の40の施設でのクラスター無作為化試験
主要アウトカム:3ヶ月間のGrade3以上の有害事象
副次的アウトカム:3ヶ月間の治療強度と生存率に及ぼす影響
探索的アウトカム:3ヶ月間の老年医学的評価に対する介入の効果


結果:718人(43%が女性),年齢77.2±5.4歳の患者が登録された。老年医学評価領域の障害の数は平均4-5で有意差はなかった。評価項目と有病率は(身体機能低下 93%,ポリファーマシー 81%,併存疾患 67%, 機能 57%,栄養 61%,認知 36%,社会支援 27%,精神状態 29%)。
主要アウトカムの3ヶ月間のGrade3以上の有害事象は介入群のほうが有意に頻度が低かった(通常ケア群 71% vs 介入群 51%, RR 0.74 95%CI 0.64-0.86)。
副次的アウトカムの治療強度に関しては初回投与量が減った頻度は介入群のほうが多かった(aRR 1.38)だが,3ヶ月時点では有意差なし。生存率は有意差なし。
探索的アウトカムの3ヶ月間の老年医学的評価に対する介入の効果では,転倒は有意に低下(aRR 0.58),薬剤中止は有意にあり(RR 0.14)mGDS(うつの指標),SPPB(機能),ADL/IADLは有意差なし。

結論:高齢者の進行癌患者に対する老年医学的評価介入/CGAは化学療法に伴う重篤な副作用の頻度を減らした。GAP70+試験は老年医学的評価介入と管理の推奨が腫瘍科治療に統合されら場合,化学療法に伴う副作用,転倒,ポリファーマシーを減らすことを示した大規模クラスター無作為化臨床試験

ということで高齢者の進行癌でCGA評価で1つ以上は引っかかりそうな人にはCGAを行うことがよいでしょう、という論文でした😊

 

Limitationでは

1.介入は1回のみで,老年病専門医ではなく腫瘍医が実施した。そのため転倒やポリファーマシー以外の老年医学的評価のアウトカムを改善する能力に限界があったのかもしれない。Co-managementで推奨項目の遵守が向上すれば良い酔いメリットをもたらすかもしれない。しかし老年病専門医へのアクセスは多くの場合制限されている。

2.短期フォローの研究で,生存期間の評価をする研究ではない。
3.腫瘍内科のレジメン選択にバイアスがかかった可能性がある。クラスター無作為試験に伴うバイアスがある可能性がある...etc

などの記載がありました。とはいえ、このGAP70+試験は、老年医学的評価とその推奨項目、というだけで副作用軽減にくわえて転倒やポリファにも良い方向に働くというのを多施設クラスターRCTで示した大事な研究だと思います😊

 

もっとCGAをやる流れが広がるといいなと思っています