すこし前ですが、良質な診断WG(旧:診断エラーWG)で行った下部消化管穿孔を対象とした多施設後ろ向き観察研究の研究がScientific Reportで公開されました😊
Diagnostic error rates and associated factors for lower gastrointestinal perforation
Sci Rep. 2022 Jan 19;12(1):1028.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35046455/
https://www.nature.com/articles/s41598-021-04762-y
高齢者に多い急性腹症の1つ下部消化管穿孔
その診断に苦労した人もいるのではないでしょうか?
どれくらいの頻度で見逃されてしまうのか?
見逃しやすい臨床像は?
というのを調べる目的で5年間9施設の多施設研究が行われました
439例が解析対象になり31.4%で診断遅延が生じていることがわかりました
多変量解析では
非Generalistによる診察(救急医と総合診療医以外) OR 3.46(1.13-10.60)
が診断エラーに有意に関連しており、それ以外には
発熱の存在 OR 2.09(0.90-4.83)
腹部の圧痛がない OR 3.27(0.90-11.90)
緊急読影が利用できない OR 3.15(0.97-10.20)
などの要素も関連因子として示唆されました
(認知症,寝たきり,精神疾患,慢性鎮痛薬使用,免疫抑制剤使用,高齢などの要素は診断エラーとは関連がありませんでした)
また判明している誤った初期診断のTOP3は胃腸炎,小腸閉塞,便秘でした
以上を踏まえますと
✓下部消化管穿孔は初診では3割見逃す診断困難な急性腹症
✓下痢がない症例を胃腸炎と診断しない
✓腹膜刺激症状や発熱や炎症反応陽性の症例を便秘や小腸閉塞と診断しない
✓総合診療医や救急医のほうが見逃しにくいかも
✓緊急読影が利用できると見逃しにくいかも
ということがポイントかもしれません
御協力してくださったWGのメンバーの皆様、お忙しい中御指導いただいた和足先生,綿貫先生,志水先生本当にありがとうございました
この報告が皆様のお役に立つことがあれば幸いです😊