ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

院内FUO/治療抵抗性SSIの原因としてMycoplasma hominis感染を鑑別の片隅に!?

最近NEJMで出たFUOのレビュー(N Engl J Med. 2022 Feb 3;386(5):463-477)で院内FUOのところに「Mycoplasma hominis」の記載があったのですが...経験もなくそもそもさっぱりわからなかったので少し調べてみました😊


Mycoplasma hominisは泌尿生殖器の常在菌で一般に骨盤内炎症性疾患や産後・新生児感染症の原因菌の1つといわれています
特徴として

グラム染色では同定不可
・血液培養では陽性にならない
・増殖が遅く通常の培地だと小さいコロニー形成に2日以上かかったりする

・診断にはPCR/細菌の16S rDNAの塩基配列


ということで...頻度は稀+通常のWorkUPでは陽性になりにくい+β-lactam無効、なので厄介そうな相手です

そして稀に

脳神経外科領域の術後感染(World J Clin Cases. 2022 Jan 21;10(3):1131-1139)
股関節術後の感染(BMC Infect Dis. 2019 Jan 14;19(1):50)
臓器移植後や免疫不全の人での播種性感染の報告(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2005 May;24(5):334-7.)

で報告があるようです

機序として...M. hominisの尿道保菌率は15%あり,尿道カテーテル挿入にあたっての一過性の菌血症で既存の炎症部位に播種すると考えられている(BMJ Case Rep. 2017; 2017: bcr2016218022.)ということでした

基本的にマクロライド耐性でキノロン(モキシフロキサシンなど)やテトラサイクリンが有効
CRPは上昇する(4/5で10mg/dl以上だった)(BMC Infect Dis. 2019 Jan 14;19(1):50)

なので日和見の人か院内発症のSSIなどで病変は明確だけど,β-lactam治療抵抗性+グラム染色陰性+培養陰性で起因菌が同定困難の場合は頭の片隅にM.hominisを考える...ということになりそうです

(NEJMのレビューは脳神経外科,心臓血管外科,整形外科術後の記載でした)

わからん殺しの匂いがする起因菌ですね😅