□高齢者の貧血に関してのTIPS/備忘録
まだ備忘録段階なのですがざっとわかっていることをまとめてみました。疫学,予後の関連,診断,UAAの定義...いろいろ勉強になりました。
貧血が機能や予後に関連している...というのはそりゃそうだと思う反面,いままで抜けがちな視点だったので今後は見逃さないように留意したいと思いました😊
①高齢者こそ貧血の治療は大事
Association of anemia with health-related quality of life and survival: a large population-based cohort study
Haematologica. 2019;104(3):468-476.
138,670人の大規模コホートにおける研究
60歳未満:生存期間に影響なし,QoLへの影響は限定的
60歳以上:生存期間やQoL低下と関連
Hemoglobin concentration; a pathway to frailty
BMC Geriatr. 2020 Jun 11;20(1):202.
Hbとフレイルは有意に関連している
Hbが1g/dl上昇するとフレイルリスクが14%減少
□高齢者における貧血のNegative impact
(J Am Geriatr Soc. 2022 Mar;70(3):891-899)
・機能低下
・歩行速度の低下
・転倒
・サルコペニア
・QoLの低下
・うつ
・再入院のリスクが高い(貧血の重症度にも関連)
・入院中死亡率と関連
・入院期間延長と関連
・医療負担増大と関連
②高齢者の貧血の原因
高齢者の貧血の原因 (Blood. 2004;104(8):2263-2268.)
✓1/3は欠乏系(Fe,VitB12,葉酸…etc)
✓1/3はCKDか慢性炎症
✓1/3は不明(Unexplained anemia of aging:UAAという分類に)
介入可能なものが多い
特に1/3は補充するだけ!!
貧血は単なる老化現象ではない(Clin Geriatr Med. 2019 Aug;35(3):307-317)ので治療をするべき
③鉄欠乏?二次性貧血?のジレンマ
高齢者の貧血は複数のカテゴリー重複がよくみられる
慢性疾患に伴う貧血/炎症性貧血の20-85%が鉄欠乏を合併しているという報告がある(Blood. 2019 Jan 3;133(1):40-50)
そしてフェリチンは炎症で上昇するというジレンマがある
✓高齢者ではフェリチンのカットオフを100ng/mlくらいにしている研究もある(Am Fam Physician. 2018 Oct 1;98(7):437-442)
✓慢性心不全,CKD,炎症性腸疾患の場合 ,フェリチン 100未満であれば鉄欠乏,フェリチンが100-300であればTSAT 20%のラインを使用するという提言がある (Am J Hematol. 2017 Oct;92(10):1068-1078.)
✓フェリチンとTSATに関して,炎症があったり高齢者であればフェリチン 100を鉄欠乏のカットオフにして,フェリチンで判断が難しい場合はTSAT20%のラインを使う。炎症のカットオフはCRP 0.5mg/dl (J Intern Med. 2020 Feb;287(2):153-170)
※フェリチンは急性期反応性蛋白であり、炎症性疾患または感染性から回復した後、正常値に戻るまでに6週間ほどかかることがある(Mayo Clin Proc. 2021;96(7):1921-1937)ことに留意すること
④鉄欠乏性貧血の場合どこまで画像検査を行うべきか(Geriatr Gerontol Int. 2018 Mar;18(3):373-379.)
・消化管以外で明確な出血症状がないのであれば上部と下部内視鏡はやることが推奨されている(実際には非出血性病変(胃炎など)が見られることが多い
・上部と下部内視鏡検査でも原因不明の大部分は予後良好
・下部内視鏡に耐えられない人は高齢者だと多い。追加による診断が予後を改善しないのであれば、検索をしないことが適切であることもある。
⑤原因不明の加齢性貧血 (UAA:Unexplained anemia of aging)に関して
UAAの基準(J Am Geriatr Soc. 2022 Mar;70(3):891-899.)
貧血の定義:13g/dl未満
鉄欠乏:フェリチン <40ng/ml TSAT<15%
VitB12欠乏:<200pg/ml
CKD:Ccr<30ml/min
慢性炎症:Fe<60μg/dl+炎症性疾患の診断
甲状腺疾患:TSHが0.1未満ないし10以上
他:血液悪性腫瘍ないしMDSの病歴なし
これらが除外されているのが前提
全体の1/3くらいいる。治療に関しては今後に期待