ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】低活動型せん妄に対するアリピプラゾール

チームで低活動型せん妄に関してディスカッションになったついでに調べてみました(今回はアリピプラゾールに関して)

 

①An open trial of aripiprazole for the treatment of delirium in hospitalized cancer patients
Palliat Support Care. 2011 Dec;9(4):351-7.

担癌患者21例のせん妄に対するアリピプラゾール
約半分が進行期

せん妄の原因はオピオイド90%,ステロイド52%,低酸素血症38%,感染症9%,代謝性疾患100%,中枢神経疾患33%
21人中9人が低可動型せん妄

アリピプラゾールの投与量は5-20mg/d,最大30mg/dで投与
→平均 15mg/dで開始 1日1回午前中
→Day 2-3で66.7% (平均16mg/d)
→Day 4-7で100% 効果があった (平均18.3mg/d)

②Aripiprazole and haloperidol in the treatment of delirium
Aust N Z J Psychiatry. 2011 Jun;45(6):477-82.

アリピプラゾールの平均初回投与量は15.2mg、平均投与量は18.3mgであった

低可動型せん妄の解消率は
アリピプラゾールは100%
ハロペリドールは77.8%

錐体外路症状ハロペリドール>アリピプラゾール

Delirium and its treatment
CNS Drugs. 2008;22(8):631-44

低活動型せん妄の治療で独自の役割がある
投与量は5-30mg/d で報告がある(Psychosomatics 2006; 47 (5): 385-91, Int J Psychiatry Med 2005; 35 (4): 429- 33)

④Pharmacologic Treatment for Hypoactive Delirium in Adult Patients: A Brief Report of the Literature
J Am Med Dir Assoc. 2021 Jun;22(6):1313-1316.e2

成人(18歳以上)および老年期の患者における低活動性せん妄に対するさまざまな薬物療法を評価した報告を対象としたレビュー

52件の関連論文のうち、選択基準を満たしたのは4件のみであった。

ハロペリドール、ジプラシドン、アリピプラゾール、メチルフェニデートの4種類の薬理学的治療が使用されていた。アリピプラゾールは低活動性せん妄の完全な解消を示し(P < 0.001)、メチルフェニデートは認知機能の有意な改善を示した(P < 0.001)。ジプラシドンとハロペリドールプラセボと比較して有意差を認めなかった。


アリピプラゾールとメチルフェニデートは、低活動性せん妄の治療において有望な結果を示した。

アリピプラゾールの引用文献で使われたのは前述の2つの研究でした
Palliat Support Care. 2011 Dec;9(4):351-7.
Aust N Z J Psychiatry. 2011 Jun;45(6):477-82.

 
ということで低活動型せん妄に対するアリピプラゾールの報告はあるが、まだその有用性に関してはまだまだ不明?、というところでしょうか