ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】80歳以上の高齢者で複数降圧剤内服者は安全に減薬できるか? (JAMA. 2020 May 26;323(20):2039-2051.)

Medication use quality and safety in older adults: 2020 update
J Am Geriatr Soc. 2022 Feb;70(2):389-397.

より紹介論文①

80歳以上の高齢者で複数降圧剤内服者は安全に減薬できるか?
(JAMA. 2020 May 26;323(20):2039-2051.)


というテーマの論文紹介

①Effect of antihypertensive medication reduction vs usual care on short-term blood pressure control in patients with hypertension aged 80 years and older: The OPTIMISE randomized clinical trial (domain: deprescribing)
JAMA. 2020 May 26;323(20):2039-2051.

80歳以上の高齢者でSBPが150mmHg未満
2種類以上の降圧剤を内服
プライマリ・ケア医が1つ以上の理由(ポリファーマシー,併存疾患,アドヒアランス)で減薬が適切と判断した患者が対象

無作為に減薬の有無にわけられた
主要アウトカムは12週間後のフォローアップ時にSBP 150mmHg未満の達成

参加者の平均年齢は84.8歳
48.5%が女性

主要アウトカムである12週間後のフォローアップ時にSBP 150mmHg未満の達成率は有意差なし(介入 86.4% vs 比較 87.7%,aRR 0.98)
66.3%の患者で12w後で減薬が維持された
フレイル,QoL,有害事象いずれにおいても有意差がなかった
SBPの変化の平均は3.4mmHg
DBPの差は有意ではなかった

研究の強みは94%という高い完了率とオーダーメイドのケアを可能にした実践的な内容ということ
研究の限界として患者群は高度に選択され,登録されたのは10人に1人でしかないこと(ただし解析結果上はプライマリ・ケアの一般集団と同様)。安全性や患者中心のアウトカムはパワー不足の可能性がある。わずかなSBP上昇が心血管系の転機に関連するかはより長期のフォローアップが必要。

Interpretation and implications
・複数の降圧剤を内服している高齢者でポリファーマシー,併存疾患,アドヒアランスなどの理由で減薬が適切と判断した患者では血圧コントロールにあまり変化がなく減薬を達成することができる
・ただし介入群のうち減薬が維持できたのは2/3なのでフォローアップは注意深く行う必要がある
・高齢者,特に多併存やフレイル患者の目標降圧や降圧薬の長期安全性に関してはわからないことが多い
・降圧のリスクがベネフィットを上回ると考えられる高齢者では,患者さんが自分のケアについて十分な情報を得た上で決定できるようにSDMを活用することが推奨される