ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】介護施設職員を対象とした多因子介入で不要な抗菌薬処方は減るか?(JAMA Intern Med. 2020 Jul 1;180(7):944-951.)

Medication use quality and safety in older adults: 2020 update
J Am Geriatr Soc. 2022 Feb;70(2):389-397.

より紹介論文③
 
介護施設職員を対象とした多因子介入で不要な抗菌薬処方は減るか?(JAMA Intern Med. 2020 Jul 1;180(7):944-951.)
 
安全性を示しつつ抗菌薬だけでなくCDIもへった 、という素晴らしい研究です😊
 

Medication use quality and safety in older adults: 2020 update
J Am Geriatr Soc. 2022 Feb;70(2):389-397.

より紹介論文③

Multifaceted antimicrobial stewardship program for the treatment of uncomplicated cystitis in nursing home residents (domain: optimizing medication use)
JAMA Intern Med. 2020 Jul 1;180(7):944-951.

介護施設を対象とした抗菌薬の適正使用を目標としたRCT
主要アウトカムは膀胱炎っぽくない症例に対する抗菌薬投与


膀胱炎っぽくない症例の定義は
→無症候性細菌尿
→尿検体のContamination
→膀胱炎と間違われる非感染性疾患(泌尿器的な症状がない非特異的な症状)

副次転機としてあらゆる尿路感染症に対する抗菌薬使用,CDI,全原因の入院と死亡

25箇所の介護施設を対象に多因子介入のRCTが行われた
介入は1時間の導入のWebnir,ポケットサイズの教育カード,システム変更のためのツール,合併症のない膀胱炎が疑われる場合の診断と治療を取り上げた教育用の資料,希望者に対して毎月Webベースの指導が行われた。



結果として...
 
✓膀胱炎っぽくない症例に対する抗菌薬投与が少なかった(adjusted incidence rate ratio [AIRR] 0.7)
CDIの発生率も介入群で少なかった(adjusted incidence rate ratio [AIRR], 0.35)
✓あらゆる種類のUTIに対する抗菌薬使用は介入群で17%低かった(adjusted incidence rate ratio [AIRR], 0.83)
✓全原因の入院や死亡に有意差は生じなかった


この研究の強さはRCT,参加者の多さとフォローアップ期間,施設全体の全サンプルを検証していること,実用的な介入,高い完了率にある
 
主な限界は施設の盲検化がされていないこと,データー収集は現場のスタッフの自己報告,Webベースの指導に参加した医療従事者が少ない(ほぼ全員が看護師)であった

という研究でした