ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【備忘録/Memo】抑肝散の効果に関して

獨協総診でさせていただいている老年内科Lectureついでに、以前から気になっていた抑肝散に関して軽くまとめてみました😊
(補足やコメントなどあれば是非よろしくお願いいたします)
 
□ 抑肝散のBPSD/精神行動症状に対する効果のMeta-Analysis

・抑肝散はNPIを7.2点さげた(0-120点のBPSDの評価尺度)。特に妄想,幻覚,攻撃/焦燥などを改善した。ADLのスコアも軽度改善した。MMSEは有意差なかった。特に中止はなく忍容性は高かった(Hum Psychopharmacol. 2013 Jan;28(1):80-6.)

・BPSDのtotal scoreを0.32改善した。特に妄想,幻覚,攻撃,焦燥などに効いた。ただしAD患者に関しては効果がなかった(J Alzheimers Dis. 2016 Sep 6;54(2):635-43)
・抑肝散の研究は8個。NPIは0.5改善した。安全で忍容性が高い(J Psychopharmacol. 2017 Feb;31(2):169-183.)

アルツハイマー認知症/AD患者には効果がない!?

・J Alzheimers Dis. 2016 Sep 6;54(2):635-43のMetaではAD患者では効果なし
・日本で行われたAD患者のRCT,抑肝散で有意差示せず(Geriatr Gerontol Int. 2017 Feb;17(2):211-218.)
・非RCTだが効果があったという研究も(Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2010 Apr 16;34(3):532-6.Int J Neuropsychopharmacol. 2009 Mar;12(2):191-9)

□ 抑肝散の効果発現までの時間

・成分によるが0.5-1時間くらいでピークになり,その後急速に排泄される(PLoS One. 2015; 10(7): e0131165.)
・作用発現時間は平均28.3 ±4.0分,持続時間は2〜8時間(日集中医誌 2012;19:83~84.)

□ 抑肝散に関して(私見)

・研究によって差はあるがBPSD(特に攻撃性や焦燥)に効果はありそう。ただしAD患者には効きにくい可能性はある。
抗精神病薬と副作用のリスクが全然違うのが大きなメリット
・抑肝散の効果発現までの時間が短いのは効果判定がしやすい観点でも好ましい
・使用時には低Kを起こさないように注意(次のネタに)
・実際に投与してみて効果があるかどうか、を測定するのは常に大事(効果がなければoffを)
・効果があったとしても投与しっぱなしにしないように注意