ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【備忘録】フレイルの臨床への応用とClinical frailty scaleに関して

□フレイルの臨床への応用とClinical frailty scaleに関して

The future of frailty: Opportunity is knocking
J Am Geriatr Soc. 2022 Jan;70(1):78-80.

JAGSのEditorialを読んで、フレイルの臨床応用やClinical frailty scaleに関して考えたことをまとめてみました😊

JAGSのEditorialでフレイルに関しての現状やCooperらの研究(J Am Geriatr Soc. 2022;70(1):90-98)に対するコメントがあり勉強になりました

ここで記載されていたのが

フレイルに対する関心は非常に高まっている
フレイルの臨床現場への普及はまだ達成されていない

と書かれており、そして普及しない要因としては

✓フレイルの評価方法が様々
✓評価方法によっては煩雑でわかりにくい
✓フレイルと診断する意義や診断後の介入が不明確

などの言及がありました。加えて米国では高齢者を評価・管理するのに十分な老年病専門医がおらず,今後増えることはなさそう。現在の支払いシステムだと対面の評価にかかる労力と時間はサポートされない。という問題点の提起もあります。

そして、Cooperらの研究で行われたCGA-FIなどはCGAとフレイルの評価が両立したすぐれたものだがこの方法は老年医学のものでしかなし得ないという欠点がある。しかし、わかりやすくすると普及しやすいが専門性が失わる。これを解決するには両輪のように簡易的な指標と専門医による評価の両方を発展させるべきである。

今後この領域が発展するには

1.フレイルの介入に関する新しいエビデンスの蓄積と今後の臨床意思決定を行うための情報提供
2.フレイルと診断された患者の管理
3.フレイルの診断と管理に関しての教育

これらが必要でしょう、という内容でとても勉強になりました。

私見

日本ではJ-CHSという簡易的なものがあり妥当性も評価されています
これにより専門家でない人が正確かつ容易にフレイルを判断するのは可能になったと思っています

フレイル患者に対する栄養と運動介入のエビデンスもでているので概念に広まりは大事だと思っています
(運動処方が実地臨床だとなかなか難しいというのはまたありますが)

フレイルの重症度に関しては欠陥モデルとか累積スコアなどが考えられていたのですが、臨床運用で使うにはかなり厳しいものになっていました。。
しかし、これに関しても近年でてきたCliniral frailty scaleなどのスケールが解決の鍵になるのではと思っています。

※老年学会のフレイルと、学術的なfrailtyはまた定義がちょっと違うのですがここではそこは省略します



□J-CHSによるフレイルの診断基準
□フレイルのガイドラインのマネージメント抜粋
https://twitter.com/GHhrdtk/status/1527591314036244481


□Clinical frailty scaleに関して
 
急性期医療におけるフレイルのスクリーニングとして、CFSは最も有望かつ実用的な方法の1つと考えられている (BMC Geriatr. 2018;18(1):139)
そして蓄積スコアなどの煩雑な手段ではなくフレイルの重症度評価ができるというすぐれものです!!

老年学会のページで日本語版が公開されています
https://jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_14.pdf
 
過去に扱かった記事も参照ください
https://generalistcwtg.hatenablog.com/entry/2021/07/23/204649

昔は7段階でしたが今は9段階になっています
これによる重症度評価はかなりやりやすいのではないでしょうか
 
そして、このCFSはなんと後ろ向きのカルテ評価でも妥当性の評価が認められています
(Eur Geriatr Med. 2020 Dec;11(6):1009-1015.)

さらに進行中のこの研究の結果を待ちたいところです(BMJ Open. 2021 Jan 20;11(1):e040765.)


CFSの臨床応用に関して

・心肺蘇生が成功した人でCFSが5以上の人はいなかった (Age Ageing. 2021 Jan 8;50(1):147-152)
・AKI患者の予後と関連 (Crit Care. 2021 Feb 25;25(1):84)
・救急受診患者の短期予後予測に有用 (Ann Emerg Med. 2020 Sep;76(3):291-300)
・80歳以上でICU入室した人の死亡予測に有用 (Crit Care. 2021 Jul 1;25(1):231)

などなど、色々研究が出始めています。

ということで...

・フレイルの診断と重症度評価はJ-CHSとCFSでかなりやりやすくなった
・フレイルの人にはCGAで評価しよう
・フレイルの人には運動と栄養を
・フレイルの人の臨床評価/意思決定にはCFSが今後有用かも

という備忘録でした😊