チームで話題になったついでにACE阻害 vs 誤嚥予防
ちょっと確認してみました
(そもそもACE阻害>ARBという話もありますがここでは割愛させていただきます)
①BMJ 2012年のシステマティックレビュー&メタアナ(BMJ. 2012 Jul 11;345:e4260.)
②NEJM 2019年の誤嚥性肺炎のレビュー(N Engl J Med. 2019 Feb 14;380(7):651-663.)
③アジア人での脳卒中後のACE阻害の解析(Adv Ther. 2012 Oct;29(10):900-12)
④JGFM 2022年のシステマティックレビュー&メタアナ(https://doi.org/10.1002/jgf2.532)
をざっとみてきました
①BMJ レビュー
Risk of pneumonia associated with use of angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers: systematic review and meta-analysis
BMJ. 2012 Jul 11;345:e4260.
ACE阻害は有意に肺炎のリスクを下げる
vs コントロール OR 0.66
vs ARB OR 0.69
脳卒中患者では
vs コントロール OR 0.46
vs ARB OR 0.42
アジア人で特に効果が出やすい(OR 0.43 vs 非アジア OR 0.82 95%CI 0.67-1.00)
なので脳卒中の既往のあるアジア人では特に効果が出やすいのでは、という結果
②Aspiration Pneumonia
N Engl J Med. 2019 Feb 14;380(7):651-663.
□PreventionのところでACE阻害のところ抜粋
脳卒中患者、特にアジア人患者では、ACE阻害剤を使用すると、おそらく咳を促進し嚥下反射を改善するサブスタンスPレベルを上昇させることによって、誤嚥性肺炎のリスクを低減することができる。脳卒中患者8,693例のメタ解析では、ACE阻害剤投与群は非投与群に比べ誤嚥のリスクを減少させた(OR 0.6)
③アジア人での脳卒中後のACE阻害の解析(Adv Ther. 2012 Oct;29(10):900-12)
脳卒中後8,693例を対象に,ACEI阻害他の降圧剤またはプラセボと比較
すべての試験において、ACE阻害、特にimidaprilは対照群と比較して0.32から0.81の相対リスク減少をもたらした
アジア人では相対リスクは 0.42
日本人では相対リスクは0.38
ACE阻害は他の降圧薬やプラセボと比較して、特にアジア人において脳卒中後の患者の肺炎リスクを減少させる
④Effectiveness of angiotensin converting enzyme inhibitors in preventing pneumonia: A systematic review and meta-analysis
https://doi.org/10.1002/jgf2.532
2022年 JGFMのシステマティックレビュー&メタアナリシス
2012年のBMJの後、Negative studyがでてきたので再度やってみたという内容
結果としては
ACE-Iの肺炎リスク軽減効果
RCT OR 0.75(0.62-0.90) Low evidence
観察研究 OR 0.85(0.78-92) Very low evidence
ということで肺炎予防の効果は小さくエビデンスの質も低いのでルーチンの使用は推奨できない、という記載です。しかしこれは誤嚥を起こした人とかではなく心不全やCKDなどいろいろな人を対象にした研究をひっくるめた内容でもあるのかなと思いました。
Discussionでは
✓今回の研究では効果が高いとされている高齢者やアジア人患者の割合が少なかった
✓患者がすでに他の降圧剤を服用している場合、あるいは初めて降圧剤を処方された場合、ACE-Iに切り替える、あるいは小さな肺炎予防効果を期待しながらACE-Iによる治療を補助的に開始することは可能
という記載もあります。
◯私見
誤嚥のリスクがない人に対して肺炎予防でルーチンでいれるのは推奨されない、というのは納得
逆に誤嚥ハイリスク患者だったりすでに誤嚥性肺炎をおこした人ですでにACE阻害ではない降圧剤が投与されている人であればACE阻害に変更するのは臨床的にはある程度妥当ではと思いました。
誤嚥ハイリスク患者だったりすでに誤嚥性肺炎をおこした人で降圧剤の投与歴がない人は...まぁ少量で入れても良い気もします。。(特にアジア人や脳卒中の既往のある人ではなおさら...ですかね)