ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】β-blockerの終末期の中止の現状(J Am Geriatr Soc. 2022 ;70(1):200-207)

◯β-blockerの終末期の中止の現状
Discontinuation of beta-blockers among nursing home residents at end of life
J Am Geriatr Soc. 2022 ;70(1):200-207

 
◯Introductionより抜粋

β-blockerは有用性とともに起立性低血圧,転倒,運動耐容能の低下など低血圧や徐脈を媒介とする重篤な有害事象を引き起こす可能性の指摘もある
心筋梗塞後でβ-blockerが投与された場合でも.低血圧による入院,機能低下との関連が示されている

そのため終末期におけるβ-blockerのメリットデメリットは不明
施設入所者の全国的なコホートを使いどのような患者で中止されているかどうかを調査した研究
 
◯Result & Conclusion
・死亡1年前の後ろ向き観察研究
・88,204人,平均年齢は84.1歳で 69.2%が女性であった。
・68.6%が人生の最後の45日間もβ-blockerを使用していた。虚血性心疾患,急性心筋梗塞,慢性心不全,心房細動のどれか4疾患があった患者は65.6%だった
・心臓疾患の診断の有無にかかわらず,β遮断薬の中止パターンに差はなかった.
予後不良と判断された患者は早くβ-blockerが中止される傾向があった(29.1% vs 14.4%)
 
・終末期でもβ-blockerの中止率は3割,全体の中で半数近くが終末期でもβ-blockerを飲んでいた(どちらの群でも心疾患の既往があるのは2/3)
・予後が短いと臨床医が判断した症例では中止されやすい傾向だった
 
ということで、β-blockerの内服率高いなぁと思いつつ...なかなかおもしろい研究結果だと思いました
 
非癌慢性疾患の終末期の原則は基礎疾患の治療なので...なかなか悩ましいところではありますが,転倒や起立性低血圧が顕著に関連しているのであれば症例に合わせて減量や中止はありなのかなとか思います
 
あとはカルベジロールで起立性低血圧が目立つならβ選択性が高いものに変える...とかですかね