ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】虚弱/Frailtyの慢性心不全の人に対するSGLT-2(Ann Intern Med. 2022;175(6):820-830)

Frailty/虚弱の慢性心不全の人においてもSGLT-2の有用性をしめした研究

個人的には胸熱研究で、Frailty index、の観点も含め読み直して見ました😊

 

Efficacy and Safety of Dapagliflozin According to Frailty in Heart Failure With Reduced Ejection Fraction : A Post Hoc Analysis of the DAPA-HF Trial

Ann Intern Med. 2022;175(6):820-830
 
□概要
 
慢性心不全患者を対象に行われたダパグリフロジン10mg vs プラセボのRCTお解析
主要評価項目は心不全の増悪と心血管死亡
解析できた4742人のうち,FI class 1(脆弱だが虚弱ではない)が2392人(50.2%),FI class 2が1606人(33.9%), FI class 3が744人(15.7%)
フォローアップの中央値は18.2月
FIのクラスにかかわらず心不全の増悪や心血管死亡を減らした
主要評価項目は100人年あたりClass 1で-3.5,Class 2 で-3.6,Class 3で-7.9
どの群でも一貫して効果が観察された(Class 3 で一番主要評価項目の減少がみられた)
脱落は群で特に変化なし
 
という結果でした。
このPopulationをもうすこし分解したいと思います。
 
□Population
 
NYHAⅡ以上
EF40%以下
NT-proBNPが600以上(Afの場合は900,入院歴ある場合は400)
除外基準:症候性低血圧,SBP<95mmHg,急性非代償性心不全,登録4習慣前の急性非代償性心不全の入院,12w未満の心筋梗塞,狭心症,脳卒中,TIA,最近ないし冠動脈血行再建の予定がある人,弁膜症修復術,CRTD,心臓移植の既往や予定,補助装置植え込み後,eGFRが30ml/min未満や腎機能低下傾向,1型糖尿病,予後2年未満,活動性の悪性腫瘍,研究の遵守が難しい人
 
 
□Frailty indexの解釈に関して①
 
Frailty indexとは...という人も多いと思います
 
Frailty/虚弱の判定には2種類あります
(Frailty/虚弱、と、フレイル、は違う意味で使われることもあるのですがここでは同一で扱います)
 
表現型といってJ-CHSの5項目で採用されているようないくつかの項目をみたしたらフレイル、という方法
 
もう一つは欠損累積モデルといって30とか40とか70とか包括的な因子をカウントとして、20/40ならFrailty indexを0.5とする方法になります(1.0が一番重症です)
 
今回はRockwoodの欠損累積モデル、というのと使って32項目で算出しています。表現型と違って虚弱の程度を数値化できるのが強みです。
 
□Frailty indexの仕切りに関して
 
Frailty indexは0.21以下,0.211-0.31,0.311以上の3群に分けています
 
0.21で分けた根拠の文献は
Arch Gerontol Geriatr. May-Jun 2015;60(3):464-70. になります
 
FIが0.10から0.21をVulnerable(脆弱)
FIが0.21-0.45をFrail
FIが0.45以上がMost frailとしている
 
 
0.31で分けた根拠の文献は Eur J Heart Fail. 2020 Nov;22(11):2123-2133. になるようです。
 
Frailtyの分類方法の1つであるClinical frilty scaleではVulnerable(脆弱)はCFS 4相当になります。
 
 
なのでCFS 4 vs 5-6相当 というような感じなのかなと想像しました。
(除外基準も結構厳しいですのでFrailty/虚弱として軽度〜中等症くらいの人の研究なのかなと思いいました)
 
いずれにせよ、Frailtyを欠損累積モデルで評価して層別化して、それでも有用だった、というのを解析したという点においても非常に素晴らしい研究結果だと思いました😊
(脱落は群で特に差がなかったのも密かに嬉しい結果だと思っています)