ある病院総合診療医の備忘録+α

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。

【JC 流し読み】救急外来帰宅後はフォローアップの設定で死亡率が低下(JAMA Netw Open. 2020 Oct 1;3(10):e2019878)

Ambulatory Follow-up and Outcomes Among Medicare Beneficiaries After Emergency Department Discharge
JAMA Netw Open. 2020 Oct 1;3(10):e2019878
 
個人的には救急外来帰宅後のフォローアップは,症状の推移の確認だけでなくあとで出る読影レポートの確認,処方された薬の効果の確認,ヘルスメンテナンス(喫煙,ワクチン,骨粗鬆症への介入)など色々なメリットがあるのではと思っています。
 
重要性:救急外来受診後のフォローアップ外来でのケアはよく推奨されている。しかし実際にフォローアップが行われる頻度やフォローアップが帰宅後の転機とどの程度関連しているかは不明である
目的:メディケア受給者における外来フォローアップの頻度と変化,転機との関連を調べる
デザイン,設定,参加者:2011-2016年まで65才以上のメディケア受給者が4728の救急外来に対する9470626の受診で生存して帰宅となった人を対象とした。
暴露:救急外来帰宅後のフォローアップ外来
メインの転記と測定:帰宅後の死亡率,その後の救急外来受診,30日以内の入院
結果:4684の救急外来が対象になり61.0%が女性,年齢の中央値は77.3(標準偏差8.4)であった。外来フォローアップの発生率は7d時点で40.5%,30d時点で70.8%だった。外来フォローアップ率の低下と関連する特徴は多変量回帰においてメディケイド,黒人,地方の救急外来などがあった。外来フォローアップは帰宅後の死亡リスク低下と関連(HR 0.49),その後入院の上昇(HR 1.22),救急外来受診は不変(HR 1.01)であった。
結論と関連性:救急外来から帰宅したメディケア受給者を対象とした研究では30%近くが30dたっても外来フォローアップをうけておらず患者や病院の特徴で差があった。外来フォローアップを受けることは入院リスクは上昇するが死亡率の低下と関連していた。外来へのアクセスは救急外来受診後の臨床転機の重要な要因の可能性がある。
 
 

診断関連でLectureさせていただく機会をもらいました

東京北医療センター 総合診療科の岡田先生に声をかけていただき「まったく疾患が思いつかないときの診断推論」をテーマにお話しさせていただく機会をもらいました

途方もない頂を登っている最中の自分でよいのか!?と思いながらもこういった立場だからこそ言えることもあるとおもい,TGIMや獨協で学んだ先人からの教えや自分の中で思っていることなどを中心に共有させていただきました

このような機会をいただき本当にありがとうございました
(そしてアドバイスいただいた綿貫先生,原田侑典先生ありがとうございました!!)

東京北医療センター 総合診療科の学びに関しては是非こちらを参照ください!!
http://bit.do/fN558

【JC 流し読み】鑑別診断ツールはプライマリケアで使われる可能性が低い Diagnosis (Berl). 2020 Feb 14;8(1):91-99.

Assessing the utility of a differential diagnostic generator in UK general practice: a feasibility study
Diagnosis (Berl). 2020 Feb 14;8(1):91-99.


□背景①

・診断の意思決定を支援する鑑別診断ツールの有用性を支持するエビデンスが増えているが,主に米国の二次医療機関に限られて使われている
プライマリケア領域ではその多忙さから医師の時間に制約があるといわれ,その代替手段の一つとして鑑別診断ツールが注目されている
・しかし,一方でプライマリケア領域では25-50%は疾患特異的な診断ができないことが言われており,二次医療機関とは様相が異なる

□背景②/Isabelに関して

・Isabelは他のツールと比較しても有用性が示されている
・役に立つというユーザーの報告もある
・逆に9割のユーザーが不便と感じているという報告もある
・イギリスの利用に関する研究は1つしかなく,使用頻度も低く成果も限られていた

□Table1よりIsabelの特徴

・独立ないし電子カルテと統合して使えるWebベースの診断チェックリストツール
・患者の年齢,性別,臨床像,渡航歴を入力する
・診断結果は2秒以内に見逃していけない疾患ふくめ10件提示され,ワンクリックで詳細が表示される
・地域に合わせてカスタマイズできる
自然言語処理ソフトを搭載している


※Isabel vs 志水太郎先生の記事も是非

日経メディカルの記事
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/dxbias/201909/562114.html

IJERPHにLetterで掲載になりました
https://generalistcwtg.hatenablog.com/entry/2020/08/22/183714
https://www.mdpi.com/1660-4601/17/17/6110
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32842581/


●結果と結論

・利用がそもそもかなり限られていた
・ほとんどの人は使用しておらず,使用した人の中でも使用は限られており,患者管理を変えることはなかった
・事前インタビューでは両価的な見方が示された
・使用後のインタビューでは内因性,外因性,様々な要因による使用率の低さを示唆した。
→内因的要素:DDxツールの存在を知らない,患者と臨床医の関係への影響に関する懸念,DDxツールをいつ使うかの不確実性や変動性
→外因性要素:電子カルテへの統合の欠如,時間


・現状では鑑別診断ツールとしてのIsabelは英国のプライマリケア診察で使われる可能性が低い。これには内因性,外因性,両方の要因が絡んでいる

・教育/訓練や稀な疾患や複雑な症例の診断支援には有用な可能性がある
 

【JC 流し読み】中断やマルチタスクが「処方」という行為に与える影響 BMJ Qual Saf. 2018 Aug;27(8):655-663.

「処方」というタスクで影響がでているのであれば、極めて複雑な診断というプロセスや複数疾患の同時並行のマネージメントに対する影響は...いわずもがなですよね(このへんは測定や評価が難しいのですが...)

 

そうはいっても何かで確認のコールがなることには理由もメリットも当然あるわけで...なかなか難しい問題だとは思います

Task errors by emergency physicians are associated with interruptions, multitasking, fatigue and working memory capacity: a prospective, direct observation study
BMJ Qual Saf. 2018 Aug;27(8):655-663.

背景:中断やマルチタスクは個人のパフォーマンスを低下させることが実験研究では証明されている。負荷が強く動的な臨床現場における効果はほとんど研究されていない。
目的:
救急医による中断やマルチタスクが処方ミスに及ぼす影響を評価する
方法:36人の救急医を120時間追跡し,全てのタスク,中断,マルチタスクが記録された。医師のワーキングメモリの容量やマルチタスクの嗜好性も評価され,過去24時間の睡眠に関しても聴取した。処方ミスをタスクパフォーマンスの指標として使った。処方エラー率に関して,医師の年齢,心理測定尺度,業務量,睡眠,中断,マルチタスクで多変量解析を行った。
結果:医師は1時間あたり7.9回の中断があった。28人の医師が239回の処方を行い,208回の処方エラーがあった。
処方の作業中,1時間あたり9.4回の中断があった。中断(RR 2.82)とマルチタスク(RR 1.86)は有意に処方エラーと関連していた。睡眠時間が平均以下だと処方エラーは15倍以上に増加した(RR 16.44)。ワーキングメモリ容量は処方エラーに保護的に作用した(OSPANが10point上昇で処方ミスが19%減少した)。年齢,心理測定尺度,業務量はエラーに影響しなかった。
結論:中断,マルチタスク,睡眠不足は救急医の中で有意に処方ミスの増加と関連していた。ワーキングメモリ容量は処方エラーに保護的に作用した。これらの結果は、他の分野での実験的知見を裏付けるものであり、臨床現場におけるマルチタスクや中断の高頻度に疑問を投げかけるものである。


【JC 流し読み】診断エラーBIG3×TOP5のエラー率と害の発生率 Diagnosis (Berl). 2020 May 14;8(1):67-84.

診断エラーのBIG3:血管,腫瘍,感染
これらの疫学に関して新しい文献が出ました

先行文献の訴訟データーベースのBIG3はこちらになります
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31535832/
Serious misdiagnosis-related harms in malpractice claims: The "Big Three" - vascular events, infections, and cancers
Diagnosis (Berl). 2019 Aug 27;6(3):227-240



Rate of diagnostic errors and serious misdiagnosis-related harms for major vascular events, infections, and cancers: toward a national incidence estimate using the "Big Three"
Diagnosis (Berl). 2020 May 14;8(1):67-84.

BIG3:血管,腫瘍,感染のTOP5の診断エラーの割合とそれにより患者さんに害が生じている割合を調べた研究になります
15疾患に対して91755人,28件の研究を調べた結果
エラー率/エラーにより害が生じている率

□血管疾患
血管大動脈瘤と大動脈解離:27.9%/17.0%
動脈血栓症:23.9%/12.5%
静脈血栓症:19.9%/10.4%
脳卒中:8.7%/4.8%
心筋梗塞:2.2%/1.2%

感染症
化膿性脊椎炎:62.1%/36.0%
髄膜炎脳炎:25.6%/14.4%
感染性心内膜炎:25.5%/13.5%
敗血症:9.5%/5.5%
肺炎:47.8%/4.5%

□悪性腫瘍
肺癌:22.5%/13.9%
悪性黒色腫:13.6%/5.6%
大腸癌:9.6%/5.5%
乳癌:8.9%/4.4%
前立腺癌:2.4%/1.2%

Big threeのTOP5のみ 9.7%/5.2%
Big three(TOP5+その他) 9.6%/3.8%


Introductionを読むだけで,これまでの疫学の情報が記載されておりすごく勉強になりました

結論としては
BIG3(悪性腫瘍,血管,感染症)のTOP5,15疾患で約1割で診断エラーが生じ,その半数で死亡や障害が生じている
・診断の誤りと害の割合は疾患によって大きく異なる

という報告でした

JC 流し読み:日本でのPEG留置の数は2007年がピーク

Decreasing Use of Percutaneous Endoscopic Gastrostomy Tube Feeding in Japan
 J Am Geriatr Soc. 2018;66:1388–91.

Brief report
 
欧米では高度認知症患者の0.5-38%で経管栄養をうけているが,日本では約50%と頻度が高い。
2014年に厚生労働省がPEG留置の診療報酬を4割下げた影響を調べた。
 
結果としてPEG留置の数は2007年がピークで2011年以降大幅に減少している
2014年→2015年の診療報酬改定でさらに減少した。
PEGを使用している半数の人が80才以上の高齢者
PEG交換の件数も2013年以降徐々に減少している
 
逆に在宅でIVHを受けている人の数は2007年が最も低く,その後増加傾向にある
在宅のIVHを受けている人の4割が80才以上
 
日本の意識調査に関しての研究では
・老年医の90%が経管栄養の適応は神経疾患,脳卒中と考えており,認知症に適応があるの考えているのは46.8%
・感情的な要因や法律的な要因が医師の経管栄養の決定に関わっている
・日本の医師は生命維持のデバイスの保持より離脱に否定的な態度を取る傾向がある
・医師は経管栄養の決定に関して保留より推奨をする頻度のほうが高かった
という結果であった
 

JC 流し読み:日本における経鼻胃管,胃瘻,静脈栄養が行われた高齢者の予後

Long‐term prognosis of enteral feeding and parenteral nutrition in a population aged 75 years and older: a population‐based cohort study
BMC Geriatr. 2021 Jan 28;21(1):80.

大浦先生の記事でしった日本での研究

結果がわかりやすく,Back groundもふくめ読んで大変勉強になりました
 
あと色々な背景からだとはおもうのですがずっと胃管が留置されている人をみることがあります。しかし,6週間を超える経鼻胃管留置は一般的にすすめられていません。。。

背景:高齢者においては予後を考慮して胃瘻増設術や経鼻の胃管栄養をつかった経腸栄養や経静脈栄養を行うべきである。本研究では胃瘻造設(GS),経鼻胃管栄養(NGT),経静脈栄養(PN)を実施した75歳以上の患者の長期予後を検討した。
方法:奈良県国民皆保険を用いた集団ベースのコホート研究。本研究では、2014年4月から2016年3月までの入院期間中にGS(N=770),NGT(N=2370),PN(N=408) を受けた75歳以上の患者3548人を登録した。GS群はさらに、365日以内にNGTまたはPNが先行している二次GS(N=400)群と,NGTまたはPNが先行していない一次GS(N=370)群に分類された。二次GS群では356例(96%)の患者がNGTを受けていた。Outcomeは730日以内の死亡とした。悪性疾患の有無,年齢,性別,並存疾患,病院のタイプで調整したCox回帰分析を行った。
結果:3548人の参加者のうち2384人(67%)がGS,NGT,PNの開始後730日以内に死亡した。悪性腫瘍のない人で2年間の死亡率は二次GS 58%,一次GS 66%,NGT 68%,PN 83%、悪性腫瘍がある人では二次GS 67%,一次GS 71%,NGT 74%,PN 87%。非悪性腫瘍群ではCox回帰分析でPNと比較して二次GS HR 0.43,一次GS HR 0.51,NGT HR 0.71と死亡率の低下と有意に関連していた。
結論:75 歳以上の患者の約58~87%がGS,NGT,PN による栄養摂取を開始してから 730 日以内に死亡した。二次的にGSを受けた非悪性疾患の患者は、NGTまたはPNを受けた患者よりも2年後の予後が良好であった。ENとPNの開始を検討する際には,有効性と限界を認識すべきである。

追加:この研究の特徴はデーターベースを用いて98%の患者がフォローできている,一次性GS,二次性GS,NGT,PNと4つにわけて評価している点。LimitationとしてはMNAなどの栄養評価がない,並存疾患はCCIで調整しているが未測定の因子がある,NGTやPNの継続性は不明などが挙げられています。
 
※大浦先生のBlogはこちら

(Blog Link   https://moura.hateblo.jp/about )