ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

ICU搬送ないし死亡症例における診断エラーの頻度は!?

ICU搬送ないし死亡症例における診断エラーの頻度は!?
 
Diagnostic Errors in Hospitalized Adults Who Died or Were Transferred to Intensive Care
JAMA Intern Med. 2024 Jan 8:e237347
 
ICUに搬送ないし死亡となった患者の診断エラーは23%
介入ポイントは検査関連と評価のところがメイン
 
という内容でした
 
DEERとSafer DXをMethodで使用していました
 
 
■これまでの歴史編
 
Changes in rates of autopsy-detected diagnostic errors over time: a systematic review.
JAMA. 2003;289(21):2849-2856. 
 
剖検において10年で重大なミスは19.4%、クラス1(患者の転帰に影響を及ぼした可能性が高い)エラーは33.4%、減少した
2003年頃の重大エラーは8.4-24.4%、クラス1エラーは4.1-6.7%くらいと推定される
 
Diagnostic errors in the new millennium:a follow-up autopsy study. 
Mod Pathol. 2012;25(6):777-783.
 
1972〜1992年のDataと2002年の剖検を比較
重大な診断エラーは過去30年で30%から7%に減少した
 
Diagnostic error in the critically ill: a hidden epidemic? 
Crit Care Clin. 2022; 38(1):11-25. 
ICUにおける診断ミスは5-10%程度

Diagnostic errors in the intensive care unit: a systematic review of autopsy studies
BMJ Qual Saf. 2012 Nov;21(11):894-902
 
ICUにおける診断ミスのレビュー
剖検での1つ以上の誤診は28%
クラス1(患者の転帰に影響を及ぼした可能性が高い)は6.3%で血管と感染症が多い
特に肺塞栓、心筋梗塞、肺炎、アスペルギルス症
 
 
Prevalence of harmful diagnostic errors in hospitalised adults: a systematic review and meta-analysis
BMJ Qual Saf. 2020 Dec;29(12):1008-1018
入院患者において有害な診断エラーは0.7%程度
 
■今回の論文
 
入院患者のうちでも死亡とICU転送なので入院患者の中でも重症/複雑な患者集団を代表した研究になります
 

Diagnostic Errors in Hospitalized Adults Who Died or Were Transferred to Intensive Care
JAMA Intern Med. 2024 Jan 8:e237347

 
ICUに搬送ないし死亡となった患者の診断エラーを検証した研究
29の病院、後ろ向き観察コホート
診断に関しては2人の臨床医によって判断,不一致時は3人目で判定(Safer Dxを使用)
診断プロセスの誤りはDiagnostic Error Evaluation and Research(DEER)分類
 
2428人のうち550人(23.0%)で診断ミスがあり、436人(17.8%)でミスが一時的ないし永久長い、あるいは死亡に関連していた。
1863人の死亡患者のうち、診断ミスが死亡に寄与したと判断になったのは6.6%
 
■診断エラーのaRR
 
病歴 1.71(1.23-2.36)
身体診察 1.86(1.39-2.49)
検査 2.85(2.16-3.76)
患者フロー/モニタ 1.94(1.45-2.60)
紹介/コンサルト 1.54(1.13-2.09)
チームワーク 2.89(1.62-5.16)
評価 2.89(2.23-3.73)
 
診断エラーを減らす機会はadjusted proportion attributable fraction (aPAF)で判断
→検査関連 19.9%
→評価 21.4%
が特に広い割合を占めた。
 
という報告でした。
"評価"...はざっくりしているなぁと思いながらDEERだとまぁそうなるのはしょうがない、、、ということで診断に合わない点や経過があればやはり再評価/調べる、ということなんだと思います。日々のアセスメントの重要さを体感した研究でした。
予測せぬ悪化で痛い目をみることもしばしばですが、診断がラベリングになっていないかどうか大事ですね。