ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】せん妄の重症度とその評価ツール CAM-S

低活動型が予後悪い、くらいで、せん妄の重症度、という視点が自分になかったことをJAMAのレビューを読んで気づき少し深堀りしてみました
 
・せん妄の重症度と期間は色々な予後(死亡,自宅退院,身体機能低下,認知機能低下)に関連している
・CAM-Sは重症度の指標に有用
・CAM-SのShort versionはCAMの4項目で構成されている
 
ということで診断も大事なせん妄ですが、重症度評価、も大事という学びでした
 
 
The association of delirium severity with patient and health system outcomes in hospitalised patients: a systematic review Age Ageing. 2020 Jul 1;49(4):549-557.

このシステマティックレビューでは
 
・せん妄の重症度がICU在院日数と自宅退院割合と関連に強いエビデンス
・せん妄の重症度死亡率,入院期間,身体能力,認知能力,苦痛,QoLに関しては結論がでない
 
としています
 

Assessment of Instruments for Measurement of Delirium Severity: A Systematic Review
JAMA Intern Med. 2019 Feb 1;179(2):231-239.

そして,せん妄の重症度の評価に関するシステマティックレビュー
以下の6つの尺度が有用だろうという結論

Confusion Assessment Method-Severity Score
Confusional State Examination
Delirium-O-Meter
Delirium Observation Scale
Delirium Rating Scale
Memorial Delirium Assessment Scale.
 

Quantifying the Severity of a Delirium Episode Throughout Hospitalization: the Combined Importance of Intensity and Duration
J Gen Intern Med. 2016;31(10):1164–1171.
 
そして後述するCAM-Sというせん妄の重症度評価を用いて行われた前向きコホート研究
せん妄の重症度も期間も30dと90dのアウトカム(死亡,施設入所)と関連したという報告

なので、当たり前といえば当たり前かもですが
せん妄の「重症度」も大事だということになります
 
 
□Confusion Assessment Method-Severity(CAM-S) Score
 
Confusion Assessment Method-Severity Score
CAM-Sに関して調べてみようと思います
 
 
The CAM-S: development and validation of a new scoring system for delirium severity in 2 cohorts
Ann Intern Med. 2014;160(8):526–533

Confusion Assessment Method-Severity/CAM-Sの検証した研究

CAM-SはCAMの内容を点数化して評価します
Short formは4つの質問,Long formは10の質問で評価します
 
Short form 1点が軽症2点が中等症3-7点が重症
Long form 2点が軽症3-4点が中等症5-19点が重症

外科患者と内科患者の両方を対象に独立したコホートで行われた
CAM-S short formのDataのみ抜粋せん妄患者は19%
CAM-Sの平均スコアは1.24

結果として...
 
✓すべての院内転機(入院期間,入院中のコスト,療養施設への入所,身体機能低下,認知機能低下)と有意な相関があった
 
・コントロール(n=598)の入院期間は6.5d、療養施設への入所は11%。身体機能低下は36%、認知機能低下は16%
・軽症(n=91)の入院期間は8.8d,療養施設への入所は16%,身体機能低下は51%,認知機能低下は26%
・中等症(n=128)の入院期間は11.1d,療養施設への入所は26%,身体機能低下は63%,認知機能低下は27%
・重症(n=102)の入院期間は12.7d,療養施設への入所は39%,身体機能低下は68%,認知機能低下は65%

✓すべての病院後の転記(90d以内の死亡,最初の90d以内のコスト,死亡ないし90d時点での入所,30d時点での機能低下)に有意に関連があった

・コントロール(n=598)の90d以内の死亡は7%,死亡ないし90d時点での入所は15%,30d時点での機能低下は29%
・軽症(n=91)の90d以内の死亡は15%,死亡ないし90d時点での入所は33%,30d時点での機能低下は41%
・中等症(n=128)の90d以内の死亡は16%,死亡ないし90d時点での入所は40%,30d時点での機能低下は45%
・重症(n=102)の90d以内の死亡は27%,死亡ないし90d時点での入所は51%,30d時点での機能低下は52%

ということでCAM-S short formは様々な転機に関連していたという報告でした
Long formでも同様の結果がでています


◯CAM-Sに関して

CAM-Sに関してはこのサイトにShort form,Long formどちらもあります
 

1.急性発症と変動する経過
a)患者のベースラインから急性に精神状態が変化した証拠があるか? orb)異常行動は日中変動があったか,出たり消えたり,重症度が変化したか
No 0 Yes 1

2.気が散りやすい、話の内容を把握するのが難しいなど、注意の集中が困難であったのか?

No 0 Yes(mild) 1 Yes(Marked) 2

3.思考の障害/患者さんの思考は、とりとめのない会話、不明確なアイデア、非論理的な流れ、予測できない話題の切り替えなど、混乱したり支離滅裂になっていましたか?

No 0 Yes(mild) 1 Yes(Marked) 2

4) 意識障害
全体として、患者さんの意識レベルをどのように評価しますか?

正常:0 元気または無気力:1 混迷または昏睡:2

最大7点で1点が軽症,2点が中等症,3-7点が重症
 

◯まとめ
・せん妄の重症度と期間は色々な予後に関連している
・CAM-Sは重症度の指標に有用

ということで診断も大事なせん妄ですが、重症度評価、も大事という学びでした