ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】せん妄スクリーニングツールとしての4-AT

チームで低活動型せん妄に関してディスカッションになったついでに調べてみました②

4-ATに関して+低活動型せん妄に関しての前置き(長文)になります😊
 

低活動型せん妄に関しての前置きです


□低活動性せん妄に関して(BMJ. 2017 May 25;357:j2047)
(完全に抜粋です,色々大事な部分を割愛しているのはお許しくださいっ!!)

低可動型せん妄は、興奮したり、そわそわする、などが主な症状の過活動型せん妄とはことなり、混迷や活動低下が主な症状になります(個人的には入院中の食欲低下/リハビリ意欲低下/活気低下に必ず鑑別にあげるようにしています)

低可動型せん妄は診断がされにくく、過活動との混合型も存在するのもその一因になります。

「せん妄」なので、ベースラインからの急性変化があり、注意力障害や認知能力障害を伴います
症状の変動は日内変動があり、数時間から数日で発症します

患者さん自身にとっても低可動型せん妄は理解できない体験,恐怖体験,強い情動をもたらし,43%の患者さんがその出来事を思い出すと言われています
さらに死亡率の増加,施設入所など有害転機と関連しており早期診断や予防は極めて重要といえます


低可動型せん妄の有頻度は高くほとんどの医療機関で10人に1人はいるといわれています。主な報告をまとめると以下のようになります。

精神科リエゾン症例:6-32%
ICU:36-100%
高齢者:13-46%
股関節骨折:12-41%
緩和ケア:20-53%


■低活動型せん妄が見逃されやすい理由

□疾患的な理由
・本人が内向的になり訴えられない(家族や介護者がおらず,患者さんが孤立しているとさらにわかりにくい)
・症状は変動しうるもので,正常に近い時期に評価をうけることもある
□医療制度的な観点
・ケアの継続性の欠如,医療記録へのアクセス(薬剤歴,入院歴,危険因子に関する情報,感覚障害)
・プライマリ・ケアや二次医療圏で緊急性があると判断されず評価が遅れる
□患者素因
・高齢者は孤立しやすい
□医療者素因
・高齢者は物忘れや見当識障害がおきても普通
・過活動型せん妄が診断に必須である or 過活動度が重症度に関連
・患者さんにとって認知機能検査は不快なもの
・低可動型せん妄は不可逆的
・低可動型せん妄は病気の進行という状態から患者を守るのに有用

ということで...前置きが長くなりましたっ!!

この文献ではシステマティックレビューの結果スクリーニングツールに推奨されているのは
(Gerontologist 2015;55:1079-99.)

4A's テスト(4AT)(Age Ageing 2014;43:496-502.)
NuDESC(J Pain Symptom Manage 2005;29:368-75.)

の2つでした。

 

4-ATは

Diagnostic accuracy of the 4AT for delirium detection in older adults: systematic review and meta-analysis
Age Ageing. 2021 May 5;50(3):733-743

高齢者にたいするせん妄 17件 3702人が解析対象
高齢者におけるせん妄の検出に関して感度88%特異度88%
脳卒中の研究を除くと感度86%特異度89%

Diagnostic Test Accuracy of the 4AT for Delirium Detection: A Systematic Review and Meta-Analysis
Int J Environ Res Public Health. 2020 Oct 15;17(20):7515.
13試験の計3729人の患者が解析対象
4ATはせん妄に対して感度81.5%特異度87.5%
せん妄のスクリーニングに有用

 

となかなかに有用という報告です。

(ただしスクリーニングや検出、という目的であって、診断、ではない?のが弱点かもしれません)


4ATは日本語版(4AT-J)が検証されており(Asian J Psychiatr. 2022 Jan; 67: 102918),中身も公開されています

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34798384/


https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/psy3/education/4at-j.html
https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/psy3/education/index/the4at-j.pdf

これらは特別な訓練を受けなくても多忙な臨床現場で使えることが検証されています

日本語Versionで検証済みというのはありがたい話ですね😊