ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【備忘録】難聴のスクリーニングや評価に関して(J Am Geriatr Soc. 2022 Feb;70(2):386-388)

Hearing assessment—The challenges and opportunities of self report
J Am Geriatr Soc. 2022 Feb;70(2):386-388

難聴のスクリーニングや評価に関してJAGSのEditorialから抜粋

これまでの流れがまとめられてわかりやすい内容でした😊

◯難聴のスクリーニングとして自己申告はあてにならない?

・自己申告による聴覚障害とオージオグラムとの一致率は低い(PLoS ONE. 2017;12(8):e0182718.J Speech Lang Hear Res. 2018;61(4):945-956.)
・近年発表されたKimらの文献では認知症があるとより感度が下がることが示された。認知症がないと感度71.2%特異度85.9%,MCIだと感度61.1%特異度84.9%,認知症だと感度52.6%特異度81.2%(J Am Geriatr Soc. 2021;70(2):490-500.)

・日常生活での聴力障害の評価方法としてHHIE(Hearing Handicap Inventory for the Elderly)とそのスクリーニング版(Hearing Handicap Inventory-Screen:HHI-S)が知られている。どちらも補聴器への適応や補聴器使用の成功など臨床的に重要な結果を予測する。

・HHIEは純音聴力検査よりも補聴器使用の予測因子として優れている(Trends Amplif. 2010;14(3):127-154.Int J Audiol. 2014;53(Suppl 1):S18-S27.Hear Rev. 2020;27(7):12-18.)

・スクリーニングの最終的な目標は聴覚補助の導入であり、医学的なゴールドスタンダードではないが主観的な測定は重要な基準である
・オージオメトリー上「正常」な聴力を持つ多くの高齢者であっても、補聴器やその他の補助器具の恩恵を受けることができるという報告もある(Hear Rev. 2020;27(7):12-18.)

□難聴の過少申告に関連する要素

✓難聴は徐々に進行するため,その変化に気づかない
✓難聴に対するスティグマ/烙印
✓臨床医に迷惑をかけたくないと思っている
認知障害により気づかない。

逆に難聴を認知障害と誤解されることもある
代理人による難聴の判定は特異度60%とあまり高くない

□我々はどうすればいいか?

・客観的な聴覚スクリーニングをルーチンに加える
スマートフォンタブレット端末を利用した難聴のスクリーニングアプリが数多くありオージオグラムと比較しても良い結果をだしている(JMIR MHealth Uhealth. 2021;9(9):e28378.)

・補聴器は高価であり,簡単で安価な個人用増幅器を提供することもできる。多くの場合,その効果はすぐに現れ,高齢者にとっても医療者にとっても有益なものになる
 
 
TABLE 1 クリニックでの戦略
・検証済みのスクリーニングツールまたは単項目の質問を使用する。
・スタッフが配布するタブレット型聴覚アプリの利用を検討する
・スクリーニングが所見またはコミュニケーション困難の場合
- 耳垢が溜まっていないか検査する
- 診察時に補聴器を提供する
- 耳鼻科に紹介する