ある病院総合診療医の備忘録

関東在住の総合診療医・老年病専門医です。日々の学びの書き留め用に。 Twitterもはじめました。 @GHhrdtk

【JC】脳卒中後のうつは過小治療かも(Neurology. 2022; 98(22): e2258–e2267.)

既往脳卒中...というとどうしても身体機能面のほうに目がいきがちになってしまうのでこういう視点は大事だと再認識した論文でした😊
 
脳卒中後のリハビリがうまくのらない人で低活動型せん妄とうつの鑑別は病棟管理では結構大事かなというのと、別の視点にはなりますがこういうのをカバーする上でも高齢者総合機能評価/CGAは大事かなとか密かに思ってます😊
 
今回の文献の前の背景論文の1つ

Comparison of Treatment Rates of Depression After Stroke Versus Myocardial Infarction: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Data
Psychosom Med. 2018 Oct;80(8):754-763.
 
ステマティックレビュー&メタアナ
脳梗塞後のうつの発症率は34%
脳梗塞後のうつに対して抗うつ薬が使用されているのは24%
心筋梗塞後のうつの発症は24%
心筋梗塞後のうつに対して抗うつ薬が使用されているのは14%
心理社会的介入に関しては10%以下だった
 
脳卒中心筋梗塞後のうつ病の頻度は高く、未治療のままであることが多い、という背景からの論文になります
 
 

Trends in Outpatient Treatment for Depression in Survivors of Stroke in the United States, 2004–2017

Neurology. 2022 May 31; 98(22): e2258–e2267.
 
Introより
 
脳卒中後のうつ病の有病率は、最初の1年間は29%~33%、それ以降は約25%で安定している
・うつの併存は脳卒中の回復を妨げ、死亡リスクを増加させる
・しかし、脳卒中の患者さんでは、うつ病の治療がほとんど行われていない
・既存のエビデンスはヨーロッパや西太平洋地域で実施されていて米国では近年の変化も含めてわかっていない
・そのため、2004年から2017年までの米国の脳卒中生存者のデータを用いて調査した
 
■Result(抜粋)

脳卒中生存者においてうつの治療(薬物・非薬物)をうけた割合の報告は2005年の17.7%から2016年の16.0%と有意な変化はなかった
PHQ-2のスクリーニング施行率は95.5%で陽性と判定される割合も変わりなかった。
PHQ-2でうつ病スクリーニング陽性と判定された患者のうち64%が1年治療をされていなかった
 
治療は女性で若年ほど治療を受ける割合が高い(高齢で男性だと治療を受けにくい)傾向があり10年で変化はなかった
 
治療は18.6%が1回以上の心理療法,93.8%がなんらかの薬剤治療,15.6%で心理療法と薬剤の併用だった。
薬剤は抗うつ薬(85.1%),抗不安薬/鎮静薬(15.2%),抗けいれん薬(11.3%),抗精神病薬(8.8%)で特に変化はなかった。
心理療法をうけた割合は13.8%から24.4%と10年の変化で増加した。(aOR 2.26)
 
脳卒中生存者の外来は89%が医師によってフォローされている。
うつの治療を行っているのは主に精神科医とプライマリ・ケア医であった。
精神科医による治療を受けた割合は増加傾向にあった。



ということで米国での研究ではありますが、脳卒中の患者でうつの治療がされていない傾向はこの10年であまりかわっていない、ということでした。
PHQ-2のスクリーニング率すげぇ...とおもいつつ、自分のこれまでの症例でも漏らしていた症例がきっとあったのではないかと振り返り中です。。
 
 
脳卒中後のリハビリがうまくのらない人で低活動型せん妄とうつの鑑別は病棟管理では結構大事かなというのと、別の視点にはなりますがこういうのをカバーする上でも高齢者総合機能評価/CGAは大事かなとか密かに思ってます😊